4. ALA2007のWeb2.0事情

 6月下旬、ALA(アメリカ図書館協会)の2007年年次大会がワシントンDCにて開催されます。アメリカ各地からライブラリアンが集まり、たくさんの講演、分科会、その他イベントが行なわれるこの大会に、私も泊りがけで参加する予定です。
 その準備のため、ALAのホームページ(http://www.ala.org/annual/)などを使って情報収集をしているところなのですが、いわゆるWeb2.0として普及しつつある様々なツールが用意されていて、なかなか便利です。今回はそのいくつかをご紹介します。

・ALA2007用のwiki
 http://wikis.ala.org/annual2007/
 大勢の人々によって編集可能なWebページ・wikiを使った、情報共有サイト。登録&ログインすれば自分の持っている情報を書き加えることができます。レストランや観光などの周辺情報や、最新情報・現状報告などのアップデートに力を発揮しそうです。
 
・Conference Roomies Wiki
 http://confroomies.pbwiki.com/ALAWashingtonDC
 ワシントンDCの高いホテル代を少しでも節約するために、大会参加者同士でルームメイトを公募しあうための専用wiki。

・HitchHikr Page for ALA 2007 Annual Conference
 http://hitchhikr.com/index.php?conf_id=212
 ALA2007に関する(「ala2007」というタグをつけた)blog投稿記事やFrickrでの投稿写真を自動的に収集してくれているサイト。会期中はたくさんのbloggerたちの投稿記事がリアルタイムで並ぶと思われます。

・Event Planner
 http://12.153.51.194/
 ALA2007参加者なら誰でも使える、自分用のスケジュール管理サイト。自分のIDとパスワードでログインし、ALAが用意したイベント・スケジュールのデータベースから自分の興味のあるイベント・講演・分科会をチェック&保存すると、それらをカレンダー形式で見せてくれます。しかも、複数のセッションが重なってしまっている箇所は赤く表示されて一目でわかるので、とても便利です。

・Google MyMap
 http://maps.google.com/
 これはALAが用意したツールではありませんが、私が個人的に使っているものです。自分の行くべき会場、ホテル、日程中に訪問する予定の図書館等を、Google Map上にマーキングして保存しておくことができます。

 もちろん、すべてのツールがすべての人にとって便利かどうか、効果的に運営していけるかどうかはわかりませんが、それでも積極的に試してみる、取り入れてみるという姿勢は、我々も真摯に見習わなければならないところだと思います。

 ALA
 http://www.ala.org/
 ALA2007年次大会(ワシントンDC)
 http://www.ala.org/annual/

3. 司書採用候補者の公開プレゼンテーション

 5/7、Harvard College Libraryの新しいAssociate Librarianの候補者の方が、公開プレゼンテーションを行なうというので、拝聴してきました。
 Harvard College Library(=HCL)というのは、ハーバード大学内の主要ないくつかの図書館が集まってできている図書館グループです。このグループにはトップに1人のLibrarianがいて、その下に4人のAssociate Librarian(それぞれ担当がある)ポストが設けられています。そのうちのひとつ、research & instruction担当のポストに空きがあり、公募が行なわれていました。学内外からの応募の中から3人の候補者が選ばれ、その3人がそれぞれ別の日に時間を設けて、図書館運営に対する自分の見解や戦略を述べる、というのが今回のこの公開プレゼンテーションです。
 今回私が拝聴した候補者の方は、ウィスコンシン州にある大学の現・図書館長の女性でした。”Meeting Challenges of Academic Libraries : Innovation and Balance”という題目のそのプレゼンテーションは、PowerPointの使い方が効果的で、話し方も物腰柔らかく、感じのいいものでした。問題解決への姿勢も前向きで、マイナス要因をマイナスに感じさせない不思議さを覚えました。
 このプレゼンテーションには、HCL内のスタッフ誰でもが自由に参加できます。ただ参加して候補者の話を聴くだけ、というわけではなく、その候補者のプレゼンテーションの内容や質疑応答の様子などを参考に、参加者たちが自分なりの評価をコメントとしてしたため、提出用紙やe-mailなどで担当部署に送るのだそうです。もちろん”投票”というわけではありませんが、そうやって集積された現職スタッフの評価が、採用不採用決定の際に何らかの判断材料となるであろう、ということでした。また、公開プレゼンテーションだけではなく、学内の各種担当者との懇談会などもあり、ランチ・ディナーも含め2日間ぎっしりとスケジュールが組まれています。その時々での発言・意見交換も何らかの評価対象となるのでしょうか。そのようなプロセスでトップに近い人が選ばれるのであれば、多少自分と考えに違いがあったとしても、安心して仕事ができる気がします。
 このような公開プレゼンテーションが事前に課せられるのは、トップに近い役職の人だけではなく、サブジェクト・ライブラリアンなど、すべての専門職ポストで規模の大小はあれ行なわれるそうです。

 Harvard College Library
 http://hcl.harvard.edu/

2. イェンチン図書館

 私が現在おせわになっているHarvard-Yenching Library=イェンチン図書館について、ご紹介します。

 イェンチン図書館はハーバード大学内の東アジア研究専門の図書館です。中国、韓国のセクションとともに、日本のセクションもその中にあります。
 1879年に中国語教育が、1913年に日本学研究がハーバード大学内でスタートし、それを機に中国語・日本語図書の収集・整理が始まりました。1928年、ハーバード・イェンチン研究所が設立され、研究所内図書館として現在のイェンチン図書館が設けられました。「イェンチン」は漢字で「燕京」と書きます。これは北京の古名で、当時この研究所は燕京大学(現在の北京大学)にも設けられました。
 設立当時約6000冊ほどであった当図書館の蔵書は、現在約115万冊。日本語図書だけでも30万冊に及びます。これは米国内でも議会図書館、UCバークレーに次ぐ第3位の蔵書数です。ちなみに、イギリスのオックスフォード大学にある日本語図書は約10万冊、大英図書館約8万冊ですから、それらと比べてもかなりの規模であることがうかがえます。古典籍資料も豊富で、約14000冊の和古書が所蔵されています。
 さらにこのイェンチン図書館は「イェンチン分類」でも有名なところです。これは、設立当時の館長・裘開明が独自に開発した、中国語・日本語資料整理のための分類法です。以来、このイェンチン図書館においてだけでなく、アメリカ国内やヨーロッパの多くの東アジア研究図書館で、幅広く採用されてきました。現在は、アメリカ国内ではLC分類(米国議会図書館)を採用するところが多く、当のイェンチン図書館も約10年前にイェンチン分類からLC分類に変更しています。

 なおイェンチン研究所は、ハーバード大学キャンパスに隣接してはいますが、組織的にも経済的にもハーバード大学からは独立しているとのことです。それから有名なライシャワー日本研究所もすぐ近くにありますが、組織としては別であり、別途資料室が設けられています。このあたりについては、追って詳しく紹介していければと思います。

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 写真は、イェンチン研究所の外観。

 Harvard-Yenching Library
 http://hcl.harvard.edu/libraries/#hyl

 Harvard-Yenching Institute
 http://www.harvard-yenching.org/

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