32. 世界最大の図書館情報サービス — OCLC

 2月半ば、オハイオ州・ダブリンにあるOCLCを訪問してきました。
 OCLCは、コンピュータ・ネットワークを通して、書誌情報、オンライン共同目録システム、ILLシステムなど、各図書館での活動に必要な情報・サービスを提供している非営利機関です。1967年の設立当初はオハイオ州内だけを対象としたサービスを行なっていましたが、現在はアメリカ国内だけでなく、ヨーロッパ、アジア、太平洋地域など世界112カ国・6万館以上の図書館に対してサービスを行なっています。代表的なサービスである目録データベース・WorldCatは、2007年3月現在で、書誌レコード8000万件、所蔵レコードは13億件を収録しています。

 OCLC
 http://www.oclc.org/
 WorldCat
 http://worldcat.org/

 ダブリンにあるOCLC構内の3つの建物では約1000人のスタッフが働いていますが、ほかにも全米各地、及び世界数ヶ所に拠点となるオフィスがあります。
 参加館には、データベースの利用だけを契約しているところもあれば、すべての目録作成をOCLCで行なうなどのGoverning memberとして参加するところもあります。日本でOCLCにGoverning memberとして参加しているのは、早稲田大学、慶応大学、愛知淑徳大学などの7館です。

 今回の訪問では、契約によるCatalogingの部署、Language Setと呼ばれるサービスの部署を案内していただきました。

 OCLCの書誌目録データベースはオンライン共同目録システムであり、実際の目録業務は各参加館のカタロガーによって行なわれていますが、このCatalogingの部署では、各館でまかないきれない目録業務をアウトソーシングとして受注しています。OCLCのデータベースに登録する目録業務を、OCLC内で請け負っているのですから、ある意味もっともリーズナブルなあり方と言えるかもしれません。
 ここではあらゆるタイプの資料が書誌・目録作成の対象となっています。私が拝見した限りでは、古い時代の書籍や写本、音楽スコアや絵本、テクニカルレポートや簡易パンフレットのような灰色文献、DVD・VHSのような視聴覚資料などが扱われていました。また、約50人いるカタロガーの中には、アジア、ヨーロッパ、イスラムの各種言語を理解する人たちが含まれていて、あらゆる言語の資料に対応しているとのことでした。
 図書館からは、情報源(標題紙・標題紙裏)のコピーが郵送されてくることもあれば、それがスキャニングイメージデータとして送られることもあります。カードケースがそのまま送られてきて遡及入力が行なわれることもあります。もちろん、資料の現物も多数送られてきていました。
 しかし、この部署でも困難なのは、やはり件名標目の作成であるようです。特に英語以外の言語の資料の場合には、何人かいるネイティヴのカタロガーが中身を読んで、理解してから件名を作成する、ということでした。

 Language Setは、公共図書館が対象の代理選書サービスです。英語以外の言語の資料を蔵書に加えたいが、その言語の専門家がいない、という公共図書館に対して、適切と思われる図書をセレクトし、まとまった数のコレクションとして、その図書の現物及び目録情報を提供する、というものです。現在14ヶ国語(日本語含め)に対応しています。
難しいのは、図書館や言語によってニーズが異なる、ということだそうです。例えば日本語資料の場合、対象となる利用者層が”日本から出張などで来ている家族で、日本の情報をキープアップしておきたい”ということから、生活実用書や子供用・教育関係図書がニーズとなるが、言語によっては”アメリカに移住し、職を得て、市民権を得るにはどうしたらよいか”といったことが中心になるようです。
 当サービスでは「この図書館には日本語の本があります」というサインや、案内用Webページの作成も行なっています。

 また、アジア・パシフィック地域担当のAndrew H. Wang氏、Shu-En Tsai氏にお話をうかがうことができました。
 Wang氏によれば、Googleやその他のサーチエンジンの勢いは誰にも止められない。図書館の組織化された知識の蓄積は、それらに勝り得る。OCLCの使命は、各図書館が固有に持っている情報を、Webに載せてアクセス可能化することによって、ユーザを図書館に導くことである、とのことでした。