21. 日本分野の学習を支える図書館 — East Asian Studies Collection (UMass Amherst) その1

 University of Massachusetts Amherstでは、East Asian Studies LibrarianであるSharon Domierさんにご案内いただき、様々なお話をうかがってきました。今回はEast Asian Studies Collection、Reference Reading Roomの様子や日本語資料の利用の実態について、ご報告します。

 University of Massachusetts Amherst, East Asian Studies Collection
 http://www.library.umass.edu/subject/easian/

●概要
・East Asian Studies CollectionとReference Roomが独立したものとして成立したのは、約40年前。East Asian Studies分野以外に独立したReference Roomを持つところはない。
・現在、W.E.B Du Bois Library内の21-22階に位置する。
・東アジア全体で約5万冊。うち日本語資料約2万冊。英語・西洋言語の東アジア関連資料は、一般のコレクションとして取り扱われている。
・請求記号・分類はLC分類を採用。日本語資料・中国語資料・韓国語資料を別々に配架することはなく、混配している。
・教員の研究分野が現在はほとんど文学分野であるため、蔵書も文学分野が中心になっている。

●資料の選択
・学生教材に適した資料として、絵・写真の多いビジュアルな資料、読みやすく振り仮名の多い大活字本、短くて楽しみながら読めるショートショート作品などを集めている。
・視聴覚資料として、日本映画のDVDを収集している。できるだけ英語字幕のあるものをそろえたいが、そのようなDVDはそれほど多くない。
・マンガも購入したいが、どれをそろえればよいかの選択が難しい。

●資料の購入・入手の問題点
・日本語資料の購入には、紀伊國屋書店などの代理店を通す。代理店を通すとドル立てで支払いができるが、直接日本の業者(古書店等)と取引しようとすると郵便振替などを求められることが多く、支払いができないため、入手もできない。特に美術館・博物館などの図録の入手が難しい。流通ルートにのっていないので、代理店経由では購入できず、直接購入しようとしても支払方法が限られていて購入できないことが多い。古書店にしろ美術館などにしろ、あらゆる場面でクレジットカードでの支払いが普及してくれるようになると、入手できる資料の幅が格段に広がって助かる。
・米国内の他大学の重複本や、日本の大学の重複本などを寄贈してもらうことが多い。

●ILL
・ILL依頼は、学生・教員が直接ILL部署に依頼する。Bibliographyの授業(別途あらためて紹介します)を受講していれば、学生でも日本語資料の書誌を正確に特定して依頼することができるようになる。
・ILL部署に届いた依頼のうち、ISBN・ISSNのないもの、資料の特定が難しいもの、特殊な機関への依頼を要するものなど、日本情報に関する専門知識が必要なものについて、相談を受ける。
・GIFはよく利用しているが、NDLへの依頼は割高でFAXや電子送信がされないので、ほかで見つからないときのみ利用している。

●目録
・東アジアコレクションのOPACへのデータ収録率は約80%。カード目録も現役で提供している。
・OCLCに参加。目録登録にあたってはOCLCの書誌を利用している。OCLCでは現在早稲田大学やTRCからの書誌データを利用できるため、かなり助かっている。
・ただ、できるだけ北米内ILLではまかなえないような資料を選んで購入していることもあって、OCLCに書誌がなくオリジナル作成をしなければならない例も少なくない。

●The Benjamin Smith Lyman Collection
・Benjamin Smith Lyman (1835-1920、Amherst近くの街・Northampton出身)のコレクション。明治時代に、北海道開拓のための技術顧問(地質学・鉱業学)として、来日(1872年)。鉱脈調査や公共事業関連の仕事を務める。几帳面な観察者で、大量の資料・詳細な記録を残している。
・全体で約4100冊の図書のうち、約1800冊が和装本。ほかに地図約120点、地質調査ノート、家計簿、名刺コレクション、書簡などが残る。
・和装本の書皮が数多く残されており、保存状態も非常に良い。(和装本の書皮は、日本の図書館では残されていないことが多い。)