27. University of Washington

 1月半ば、シアトルにあるUniversity of Washingtonを訪問してきました。

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 1861年創立のUniversity of Washingtonは、学部生約3万人、院生約1万人、教員・研究者・スタッフ約25000人。海外からの留学生が全体の約1/4を占めているそうで、キャンパス内を歩いていると、たくさんの東アジア・東南アジア系の学生を見かけます。
 学内には計22の図書館があり、全体で図書500万冊、その他の資料を数百万点所蔵しています。
 メインライブラリーにあたるSuzzallo Libraryは、ワシントン州の保存図書館として子供用図書と行政資料を集中的に収集・保存しています。また、州立大学の図書館であるため、一般の人でも自由に入館利用が可能です。
 学部生用図書館であるOdegaard Libraryは、現在ラーニングコモンズとしての機能をメインに持たせており、学内IT部署による学生利用端末とそのサポート、Writing Center、グループ学習室、メディア編集室・撮影室などを提供しています。(ラーニングコモンズについては【20. 学習活動のすべてをまかなう – Learning Commons (UMass Amherst)】を参照。)また、情報リテラシー教育、利用講習会などのインストラクション活動が非常に盛んで、レファレンス・ライブラリアンが文献収集に関する講義を担当するのはもちろん、情報リテラシーに関するデジタルコンテンツの開発・作成などについては専門の部署が担当しています。

 University of Washington Libraries
 http://www.lib.washington.edu/
 UWill
 http://www.lib.washington.edu/uwill/
 Research 101
 http://www.lib.washington.edu/uwill/research101/

 East Asia LibraryのKeiko Yokota-Carterさんに、Suzzallo Library、Odegaard Library、East Asia Libraryを案内していただき、お話をうかがいました。今回は特に、DVDなどの視聴覚資料について、OPAC・目録データベースと、OCLC WorldCatのローカル利用について、ご報告します。

●視聴覚資料の提供と入手
・視聴覚資料の提供・サービスを主に行なっているのは学内のメディアセンター(学部生図書館内にあり)であるが、日本映画DVDの英語版はメディアセンター、日本語版はEast Asia Libraryといったように棲み分けができている。
・メディアセンターでは、所蔵していないDVDへのリクエストに対応するサービスとして、”NETFLIX”を利用している。”NETFLIX”は一般に人気のDVDレンタルサービスで、オンラインでオーダーして、郵送で受け取ることができる。”NETFLIX”との協議で、教員による講義教材用・研究用としてのみ、利用が可能となった。サービス・受付はメディアセンターが行ない、費用もメディアセンターが負担している。(注:通常のILL費用は利用者自身ではなく図書館が負担) 購入するよりも安く、かつ、ILLでは入手し難かったり対応してもらえなかったりというDVDが、都合よく入手できるので非常に便利である。
・East Asia Libraryにおける日本DVD入手については、これまで、著作権や海外販売不許可に関する問題、リージョンコードの問題、字幕・吹き替えに英語がないなどの理由で、なかなか購入できなかった。それでも、例えば語学クラスなどでの利用リクエストが多く、また既存のビデオテープ資料の内容が古くなっていく一方であることもあって、様々な方法で入手している。これまでにあった例としては、舞台演劇のDVDなど一般に流通していないものを購入しようとして、最初図書館相手に販売してもらえなかったものを、交渉の末、研究用資料としてのみの使用を条件に買うことができた。香港のDVD販売サイトで、香港正規版の日本映画DVDを購入。日本のマンガ・映画を英訳・出版・販売する米国内の会社から購入、など。

●East Asia LibraryにおけるOPAC・目録データベース
・目録データベースへの収録率は約80%。現在でもカード目録を現役で提供している。
・現在のOPACでCJK(Unicode)対応が実現したのは、4年ほど前。システムはINNOPACを使用。但し、INNOPACでは韓国語の検索・取り扱いには専用のソフトを用いる必要があったが、当初はそれが搭載されていなかったため、対応に時間がかかったり、その負担者について問題になったりした。
・「Pre-Cat」:OCLCに既存書誌がなかったり、あっても不正確・不備が多いなどの場合、OCLC書誌の登録・ダウンロードをいったん保留し、ローカルのデータベースのみに簡易書誌(書名・著者名・出版事項・形態事項と連番のみ、分類・件名なし、請求記号付与なし)を作る。フルレコードでカタロギングするまで時間がかかる場合でも、これによって利用者への新着図書の提供を可能にしている。
・最近の受入分については、書誌レコードに紀伊国屋書店Bookwebの書誌・内容紹介ページへのリンクを付与している。図書館の書誌レコード、特に「Pre-Cat」だけでは、例えばそれが同じ作品の小説版なのかコミックなのかDVDなのかが、利用者にはわかりにくいことがある。西海岸エリアの紀伊国屋書店Bookwebの注文可能なページにリンクすることで、紀伊国屋書店の理解を得た。
・所蔵・受入している日本語雑誌のうち、オンラインでアクセスできる紀要・CiNii収録雑誌・オープンアクセス誌について、OPACの書誌レコードからのリンクを付与している。所蔵・受入している全タイトルについて、学生バイトによる助けを得て、インターネット上の資源の有無を調査し、書誌レコードに手動で入力した。計400タイトル。全文ファイルがあることが理想だが、抄録・目次情報だけでもリンクを形成している。

●WorldCat Local
・WorldCat Local:OCLCのWorldCatをローカライズして、自館の蔵書検索システムとしての利用が可能になるというもの。現在は試行段階で、University of Washingtonが試行版第1号としての提供を開始している。(2007年4月から)
・ローカルのOPACシステムとして利用できる。検索結果の関連度順表示、利用頻度順表示、版違い資料の一括表示ができる。参加コンソーシアム蔵書やオープンアクセス資料、ERIC・MEDLINE・ArticleFastなどの論文データベースも検索対象にできる。e-resourceであれば全文へのリンクを提供。ファセットによる絞込み・ブラウジングができるなど、OCLC WorldCatが持つ機能をそのまま利用できる。
・現在は試行段階で、従来のOPACとWorldCat版OPACとをともに提供している。これを将来的にWorldCat版のみにしようという動きが学内にはある。が、ローカルデータベースの書誌レコード中に独自に入力しているデータ(自館で入力した件名・分類や、上記の日本語雑誌の全文へのURLなど)や、書誌レコード自体をローカルデータベースのみに作成しているもの(上記のPre-Catの例など)は利用できなくなってしまうため、導入には問題も多い。