6. 日本からの情報発信・資料提供についての要望・意見

 6月のALA年次大会参加とともに、ワシントンDC周辺及びその旅程途中にある図書館・大学(Princeton University, University of Maryland, Library of Congress, National Library of Medicine, Freer Gallery of Art)をいくつか訪問・見学してきました。図書館の概要、利用実態、特色あるサービスなど、さまざまなことについてお話をうかがってきました。
 今回はその中から特に、日本から発信されている学術情報・資料のあり方や入手について、いただいたご要望・ご意見をとりまとめてご紹介します。

・科研費報告書を、その大学の図書館で責任持って収集・所蔵・目録登録するようにしてほしい。役に立つし、依頼も多いのに、所蔵館がなかなか見つからないことが多い。その研究者・研究グループが所属している大学の図書館なのに、所蔵していない、情報が入手できないというのはおかしいのではないか。結局、その研究者の連絡先を探し、直接問い合わせて入手するというパターンが多い。
・データベースの使い勝手がよくなり、文献情報を知ることが容易になった分、逆に現物資料へ到達できない、入手できないことへの不便さが目立つ。問い合わせをしても返事がいつまでも返ってこず、待たされた挙句に謝絶されることが多い。
・NDLのサービスがここ数年で飛躍的によくなって、とても感謝している。近代デジタルライブラリーは多くの人に利用されている。またWebを介してのILLサービスも非常に助かっている。レファレンスを依頼したときも、とても丁寧かつスムーズに対応してもらった。
・雑誌資料の電子化について。日本の資料電子化は、他国(特に中国・韓国が国の威信をかけて行なっているのに比べて)かなり遅れている。必要な、需要の多い雑誌が電子化されず、そうでない雑誌ばかりが電子化されているように見える。できるものからとりあえず電子化するというのではなく、よく使われる基本的な雑誌を選別した上で計画的にやってほしい。
・医学部の図書館のように、本来古典籍資料をメインで取り扱う分野でない図書館が、所蔵している古典籍資料についてまったく整理されていない、情報を公開してくれないことが多い。
・日本の書誌データベースは、基本的にそのままコピーして使えるというわけではないが、参考にはなっている。著者名典拠情報が特に有用。逆に、同じ資料でも図書と雑誌でレコードが分かれていること、及び、件名が整備されていないのが難点。もちろん、OCLCなどに収録されて利用できるようになれば非常に助かる。特に灰色文献・研究成果物などの、一般に流通していない資料について。
・データベースの契約について。日本の業者が作成・提供しているデータベースは、海外から契約するにあたって条件や規制が多い(または海外からの契約が考慮されていない)ほか、高額であるため、契約が極端に難しいことが多い。国内の情報資源を海外に広めるという姿勢が、他国(これも特に中国・韓国)が旺盛で積極的であるのに対し、日本は何故か消極的に思える。特に大学図書館で提供すれば、そのデータベースを使い慣れた学生は卒業後も企業・研究機関でも利用するようになるわけだから、需要を増やすチャンスであるということを理解してほしい。