5. ALA2007レポート

 6月21日から28日まで、ALA(アメリカ図書館協会)の2007年年次大会がワシントンDCにて開催されました。約3万人のライブラリアンが集まり、約400の講演、分科会、イベント等が行なわれました。同時に40を超える数の分科会が行なわれる時間帯もあり、どれに参加するかを決めるのはかなり難しいものでした。

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 私が参加した分科会のうち、いくつかについてご報告します。

●「It’s Showtime for Instruction Librarians: The Making of Short Films for Marketing and Instruction」

 情報リテラシー教育活動に自作の動画・映像を取り入れている図書館による報告です。紹介・発表されたのは、Valdosta State University, Odum Library Media Serviceの作品と、Indiana University South Bend, Franklin D. Schurz Libraryの作品・知見でした。

・Valdosta State University, Odum Libraryのショートフィルムのページ
 http://books.valdosta.edu/media/library_films.htm
・”Crime & Punishment”
 http://cinema.valdosta.edu:8080/ramgen/
 rdevane/library_videos/crime_punishment.rm
 (注:最初の1分ほど無音の状態ですが、その後スタートします。)

 ”情報に関する罪”で投獄された女子学生の、言い訳と苦悩、裁判の様子を描いた、フィクション仕立ての動画です。学生たちが軽はずみな気持ちで行ないがちな盗用、剽窃、安易なコピー&ペーストなどに警鐘を鳴らす目的で作られた作品です。脚本がしっかりと練られていて、エンターテイメント性が強く、学生に受け入れられやすい作りになっています。会場のライブラリアンたちからも繰り返し爆笑が起こっていました。
 ちなみに日本では、亜細亜大学がかなり以前から作成、Web公開している図書館ツアービデオがあり、こちらもかなり作りこまれています。もちろん、もっと手軽または簡潔な動画は、国内・海外を問わず多数公開されています。

・Indiana University South Bend, Franklin D. Schurz Libraryの今分科会用ページ
 http://www.iusb.edu/~libg/ala/2007/LI/

 Indiana University South Bendのライブラリアンによる「Making movies @ IU South Band」という発表については、Powerpointファイルやその他の資料が上記のページで公開されています。
 こちらで紹介された作品は、”Crime & Punishment”のようなエンターテイメント性の強いものではなく、スタンダードな内容のものです。

Boolean Operators

How to find and locate a book

 実際のプランニングに関する話や、技術面の知見も上記ページで公開されており、実際に動画作成にとりかかろうとするにあたっては非常に参考になるのではないかと思います。また、学生のアンケート結果を見ると、説明のわかりやすさについて、「書架の本をどうさがすか」ではマイナス評価がなかったのに、「キーワードサーチとフレーズサーチの違い」ではマイナス評価がいくつかあった、ということがわかります。

●「Wiking the Blog and Walking the Dog – Social Software, Virtual Reality, and Authority Everywhere」

 Webベース、特にWeb2.0と呼ばれる機能を有効利用したサービスについて、事例報告などが行なわれた分科会でした。ここではAnn Arbor District LibraryのJohn Blyberg氏によるSOPACの報告と、Norwich UniversityのMeredith Farkas氏のプレゼンテーションについて、ご紹介します。

・Ann Arbor District LibraryのOPAC
 http://www.aadl.org/catalog
・John Blyberg氏のblogと資料
 http://www.blyberg.net/
 http://www.blyberg.net/files

 ミシガンのAnn Arbor District Libraryで構築・提供されている「SOPAC(SocialOPAC)」について、管理者のJohn Blybergによるプレゼンテーションが行なわれました。(SOPACについては2007.1.25のCarrent Awarenessを参照)
 このSOPACでは、利用者が自分のIDでOPACにログインし、書誌データにタグ・評価・コメントをつけたり、書誌データをコレクションしたりといったことが可能になります。おもしろいのは「目録カードへの書き込みができる」という機能で、画面に現れた目録カード風の画像の上に、自分で好きなコメントを入力することができます。(例) この他にも、表紙画像の表示、他館所蔵の検索、この本を借りてる人は他にどんな本を借りているのかの表示、などがあります。

 Norwich UniversityのMeredith Farkas氏からは、「Tales from Outside of Public Libraries」というタイトルでのプレゼンテーションが行なわれました。

Tales from Outside of Public Libraries

・Meredith Farkas氏のWebサイト
 http://meredith.wolfwater.com/

 「図書館以外の業界はすでにWeb2.0によるサービスをたくさん提供している。図書館にそれができないはずがない。」という趣旨のもと、図書館以外の業界及び図書館業界の両方から事例が紹介されました。Wikiによる情報ベースの構築、blogによる情報公開、フィードバック・リクエストの受付、flickrによるライブラリーツアーなど。図書館での導入例がまだそれほど多くないものもありますが、どれも「情報を組織化しデータベースを構築する」「利用者からのフィードバックを受け付ける」「運営をガラス張りにする」といった、図書館にとって基本的な考え方に基づくものばかりであるということもわかります。
 最後に、図書館業界以外の人、特に教育・IT技術・ビジネス分野の人たちがどんなふうにSocial Softwareを使っているか、どのような報告をしてくれているかに、耳を傾けることが重要である、ということが語られていました。個々の技術や機能が問題なのではなく、広くアンテナを張り、学ぼうとする姿勢、時宜・目的に応じて柔軟にそれらを採用する心構えが必要である、ということを学びました。