42. 次世代OPACへ向けて — Discovery and Metadata Coordinating Committee

 2007年秋、ハーバード図書館を統括するUniversity Library Councilのもとに、「Discovery and Metadata Coordinating Committee」が新しく発足しました。これは、蔵書検索用OPACなど、ハーバードにおけるdiscovery system(=利用者が本や資料を検索し、発見するためのデータベース・システム)やcatalogingのあり方を、時代に合わせた新しいものに進化させ、再構築させることを目的としています。

 情報技術、学術情報環境の目まぐるしい発展や、webサービスのあり方そのものの変化に伴い、図書館が提供する蔵書検索用データベース・OPACもまた進化させていかなければなりません。技術革新と利用者ニーズに見合った機能、GoogleやAmazonやはてななど、他のwebサービスがすでに実現している機能を備えたものとして、各国の図書館で現在急ピッチで構築されつつあるのが、いわゆる”次世代OPAC”です。例えば「ファセット」「FRBR化」「ソーシャルタグ」といった機能やサービスが考えられています。

ファセットの例:OCLC WorldCat (http://worldcat.org/)
検索結果を分析して、しぼりこみ用のキーワードを提示する
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FRBR化の例:OCLC WorldCat (http://worldcat.org/)
同じ作品・著作の異なる版をひとまとめにする
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ソーシャルタグの例:国立国会図書館PORTA (http://porta.ndl.go.jp/portal/)
ユーザが自分でキーワードを登録し、お互いに参照できる
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 ハーバードの図書館でもこの”次世代OPAC”の実現が喫緊の課題とされています。その取り組みの一環として発足したのがDiscovery and Metadata Coordinating Committeeです。この委員会の下には、Aleph(図書館用業務システム・目録システム)の委員会、書誌標準のためのワーキンググループ、カタロガーのディスカッショングループ、VIA(ビジュアル資料用目録データベース)のワーキンググループなど、目録・検索用データベースに関わるたくさんのグループが含まれています。Discovery and Metadata Coordinating Committeeは、これら各グループ同士の調整やコミュニケーション整備を行ないながら、次世代OPACをはじめとする将来的な情報サービス・検索システムと、それを支える目録システムの構築を舵取りしていくことになります。

 Discovery and Metadata Coordinating Committeeの前身は、2006年秋から1年間活動していたTask Group on Discovery and Metadataというタスクグループでした。

 Task Group on Discovery and Metadata
 http://isites.harvard.edu/icb/icb.do?keyword=k13676&pageid=icb.page74966

このタスクグループでは、discovery systemやcatalogingのあるべき機能とあり方について、キーとなる情報技術や内外の動向をレビューし、ハーバードにおける現実的かつ具体的なアクションについて提案する、ということが求められていました。多数のテーマを設定し、その概要や背景・具体例を調査し、それらをどう評価するか、優先して採用すべきはどれかなどをグループ内で検討した結果、提示されたのが、2007年9月に発表された最終報告書です。

 最終報告書(Task Group Final Report)
 http://isites.harvard.edu/fs/docs/icb.topic117213.files/TGDM_final_report_Sept_07.pdf
 添付資料
 http://isites.harvard.edu/fs/docs/icb.topic117213.files/TGDM_final_report_Appendices.pdf

 この報告書は3部構成となっていて、今後数年注視しておくべき技術や考え方のレビュー、それにもとづく見解、今後とるべき行動などが示されています。レビューでは、先に述べたファセットやタグのほか、各目録標準に対する評価、データをいかに多様化させるか、ユーザ自身のメタデータ構築への参加など、様々なテーマが概説されています。そしてそれらレビューにもとづいた見解では、OPACのリプレイスは真っ先に行なわなければならない、外部リソースに頼ってでも書誌レコードを成長させなければならない、といった勧告がなされる一方で、目録や書誌レコードそのものの構造を変えるといったことに着手すべきではないというような現実的な姿勢も提示されています。また、今後の行動についても、あまりにも変化の激しい環境下で長期的手段の検討は得策ではない、との考えから、次年度において当面とるべき行動を示すにとどまっています。
 これらの取り組みと報告は、実際に次世代OPAC等の構築にとりかかるためだけではなく、学内全図書館やライブラリアンに対して問題意識を換気する、という意味合いもあったようです。実際、この最終報告書についての学内説明会が、12月と2月の2度行なわれました。
 そしてこの報告書での提案にもとづき、学内の関連する各部署・委員会・グループの活動を調整しながら、その実現へ向けて取り組んでいるのが、現在のDiscovery and Metadata Coordinating Committeeである、ということになります。

 図書館のユーザを含め、我々は、日々進化する情報環境・情報サービスに囲まれて暮らしています。その反面、旧来の姿のままである図書館目録へのユーザの不満は募る一方ということになってしまいます。次世代OPACや新しいwebサービスのあり方へ向けての、柔軟かつ敏捷な取り組みが、いま、求められています。