今日の「CA読み」メモ: 査読は無償?、自治体発行オンライン資料 他

●CA2045 – マインドフルネスと図書館:米国における動向 / 池田貴儀
 https://current.ndl.go.jp/ca2045

 実践例は豊富に言及されているんだけど、こういうことに疎い自分にとってみると、「なぜそれで解決に至ったのか」がやはりちょっとよくわからない。わかる人にはわかるんだろうかしら。

(1)「図書館による利用者の健康やウェルネスの支援の動き」
(2)「図書館員のストレスの問題…永続的なセルフケアにはマインドフルネスが効果的」
「「今この瞬間の一瞬一瞬の体験に、評価や判断を加えることなく、意図的に注意を向けることで生じる気づき」である。実践することでリラックス、ストレスの軽減、集中力を高める効果がある」
「米国の図書館界では、2010年代中頃からマインドフルネスに関する話題が増え始める」

●CA2046 – セーフティネットとしての公共図書館:米国・英国の取り組み事例から / 土屋深優
 https://current.ndl.go.jp/ca2046

 こういうのってどうしても直接的なサービス事例の方が印象に残りやすく話題にもされやすいとは思うんだけど、だからこそ、情報提供機関としての機能として「適切な公的サービスや支援団体をつなげる窓口としての役割」にこそ、手厚くスポットライトが当てられるのが良いのではないか、と思った。

「困窮する地域住民への暖かい場所と食料の提供が図書館の役割として広まりつつある」
「英国では2022年の冬、ウォーム・バンク(Warm Bank)と呼ばれる取り組みが広がった。これは寒波と燃料費の高騰を背景とし、人々が集まる公共図書館や教会などが暖を取る場所と温かい飲み物を提供」
「開かれた場である公共図書館は、普段から人々が多様な目的をもって出入りするため、食料品や衣料品の寄付を受け取る人々も差別的な目線を向けられにくい」
「多くの公共図書館にはコンピュータも設置されており、デジタル機器を持たない人々も図書館で利用することができる」

「公共図書館はすべての人に無料で、文化、教育、情報、娯楽へのアクセスを提供するという使命を果たしつつ、地域コミュニティの拠点として、困難を抱えた人々と適切な公的サービスや支援団体をつなげる窓口としての役割が期待されている」
「日本の公共図書館ではホームレスの人々のみを対象とするサービスではなく、生活において何かしらの困りごとを抱えている利用者を対象として、外部団体と連携したサービスが展開されている」

●CA2047 – グループ討議を中心としたオンライン研修の事例報告:国立情報学研究所「大学図書館員のためのIT総合研修」 / 服部綾乃, 松野 渉
 https://current.ndl.go.jp/ca2047

「図書館システムとそれを支える種々の技術について、グループで時間を取って討議する機会」
「本研修の主目的は、システムに関する技術的な能力の習得ではなく、システムに関する苦手意識や抵抗感を減らすこと」
「グループでの議論が盛り上がりにくい点、議論に乗り遅れた受講者をファシリテーターが察知しにくい点」

●CA2048 – 動向レビュー:査読は無償であるべきか? / 佐藤 翔
 https://current.ndl.go.jp/ca2048

 結論はまったく出ていないんだけど、結論が出ないというオチまでの議論がものすごく整備されているという、その見事さに心酔した記事。

「一つ確かなのは、多くの研究者が、査読の労が金銭以外の形で報われることを望んでいること」
「審査する役割である査読は、研究成果の発表と同じく科学への「貢献」であるにも関わらず、業績等として評価されるわけではない、少なくとも評価されていると研究者らは感じていない」

●CA2049 – 動向レビュー:自治体発行オンライン資料の収集:近年の公立図書館の取組を中心に / 竹田芳則
 https://current.ndl.go.jp/ca2049

 現状と課題と事例とがバランス良く丁寧に整理されている。これは情報資源系授業での取り上げ必須ですね。
 あと、WARPは役に立つが手放しで任せっきりではダメ、ということかしら。

「WARPをはじめとするNDLにおける神奈川県の行政刊行物の登録状況を調査した結果、殆どの資料は利活用に関して明示されておらず、閲覧はNDL館内限定である」「多くの自治体広報誌が、WARPにおいてNDL館内限定閲覧となっている」「リンク先のWARPがNDL館内限定公開とされている場合は、図書館から庁内のサイト管理者に対し、取扱いを見直すよう申し入れるなどの取組も必要」
「自治体のサイトとは別に運営されているサイトの中にはWARPの収集から漏れているものもかなりあると思われる」

●CA2050 – 研究文献レビュー:日本の公立図書館における経営形態:2016年以降の動向を中心に / 菅野裕樹, 山岸素子, 照井ひなた, 鐵見咲希, 星 愛美, 梅木雄飛, 百花 葵, 小泉公乃
 https://current.ndl.go.jp/ca2050

 これは1個1個の文献をもう一度丁寧に拝読しましょうね、そのための研究文献レビュー。

 特に「4. DXの組織形態への影響(コロナ禍・コロナ後)」
「経営戦略の一環としても図書館のDXは進められている」
「長野県では、全国初の試みとして全市町村と県が協働電子図書館を運営している…電子図書館については契約に関連した専門性や複数の図書館による共同構築のノウハウが問われ」
「DXに関連して、デジタルアーカイブの広まりも公立図書館に影響」

 以下、その文献。

(90)大阪市立図書館. “「大阪市ICT戦略」に沿った図書館の今後のあり方”.
https://www.oml.city.osaka.lg.jp/index.php?page_id=1639, (参照 2023-04-25).
(91)県立長野図書館. “「共知・共創の広場」としての県立長野図書館の使命(仮称)”. 2021, 5p.
https://www.knowledge.pref.nagano.lg.jp/documents/99/3_mission.pdf, (参照 2023-07-13).
(92)県立長野図書館. “資料2: 県立長野図書館ミッションビジョン「共知・共創の広場」”. 2022, 6-17p.
https://www.knowledge.pref.nagano.lg.jp/documents/99/shiryo2.pdf, (参照 2023-07-13).
(93)森いづみ, 小澤多美子. 「共知・共創の広場」を目指して: 地域とともに歩む県立長野図書館の取り組み. 図書館雑誌. 2023, 117(5), p. 244–247.
(94)森いづみ, 岩波峰子. 拡がりゆく人材育成ネットワーク: 信州大学附属図書館と県立長野図書館の連携から. 図書館雑誌. 2018, 112(11), p. 734–736.
(103)県立長野図書館. “「共知・共創の広場」としての県立長野図書館の使命(仮称)”. 2021, 5p.
https://www.knowledge.pref.nagano.lg.jp/documents/99/3_mission.pdf, (参照 2023-07-13).
(107)三浦なつみ. <テーマ3 コロナ禍の中の図書館を考える> No.1 「図書館動向調査」から見る公共図書館. 図書館界. 2022, 74(3), p. 193–197.
(108)中山愛理. 新型コロナウイルス感染症に対応する日本の公共図書館の取り組み : 図書館アウトリーチサービスの視点から. 大妻女子大学紀要. 文系. 2022, (54), p. 122-110.
https://otsuma.repo.nii.ac.jp/records/7214, (参照 2023-07-13).
(109)池田美千絵. 〔研究ノート〕公立図書館における地域資料とデジタルアーカイブを巡って. 学苑 昭和女子大学紀要. 2022, (969), p. 62–72.
https://swu.repo.nii.ac.jp/records/7232, (参照 2023-07-13).
(110)澤谷晃子. [A11] 大阪市立図書館デジタルアーカイブのオープンデータ利活用促進に向けた取り組み. デジタルアーカイブ学会誌. 2019, 3(2), p. 87–90.
https://doi.org/10.24506/jsda.3.2_87, (参照 2023-07-13).
(111)是住久美子. <テーマ1 地域資料とデジタルアーカイブ> No.2 図書館を拠点とした地域資料の編集とデジタルアーカイブの発信. 図書館界. 2020, 72(4), p. 184–188.
https://doi.org/10.20628/toshokankai.72.4_184, (参照 2023-07-13).