今日の文献読みメモ: 「オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方」

科学技術・学術審議会情報委員会オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方検討部会. 「オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方」(審議のまとめ), 2023.1.25.
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu29/004/mext_00001.html

・新・デジタルライブラリーを2030年度をめどに実現する
・大学図書館機能を物理的な「場」に制約しないよう、「ライブラリー・スキーマ」(基本的な論理構造としての)として再定義する
・人材、キャリアパス、システム共同運用などのコンソーシアム
・デジタルプラットフォームの共有・相互連携
・研究データ管理環境と支援体制を構築する(発見可能性、利活用、リテラシー教育)
・NDL・国文研の大規模基盤構築を踏まえて、自館蔵書のデジタル化を進め、全国規模で連携したデジタルアーカイブを構築する
・人文社会系の専門書等、電子書籍化が遅れているところは、大学図書館自身がデジタル化・オープン化を担う

 以上、DA・DH目線でのみ追ったのでざっくり&偏ったメモですが、ライブラリー・スキーマについてはもっとわいわい議論されるべきものとして、以下、コピペメモ。

※ライブラリー・スキーマ
・「教育・研究のDXが進展する中、今後の大学図書館には、物理的な「場」に制約されることなく大学図書館機能を再定義し、それに沿ってサービスを実現することが求められている。例えば、教育では「いつでも、どこでも、誰とでも」という教育や学習スタイルへの変容が想定されるが、その中で情報へのアクセスという観点から教員や学生がそれぞれどのような情報利用空間を必要とするかについての整理・再検討が必要となる。その前提として、様々な利用者に適した図書館のサービスをデザインするために必要な、自らの存在を規定する基本的な論理構造としての「ライブラリー・スキーマ」を明確にする必要がある。「ライブラリー・スキーマ」が実際にどのように見えるかは、研究あるいは教育の文脈、分野や立場(教員か学生かなど)によって異なっており、特に今後、仮想的な空間において大学図書館機能の実現を図る際には、その点に十分な留意が必要である。将来的には、利用者の立場ごとに異なる仮想空間(メタバース)を設けて、「ライブラリー・スキーマ」と接続することが想定される。」
・用語解説
「図書館のサービスをデザインする上で必要となる基本的な論理構造のこと。①物理的空間のデザインなどのハード面、②様々なコンテンツの提供や図書館員によるサービスなどのソフト面、③その両者の関係性、を定義するものであり、これを具体化したものが、実際に存在する図書館とそこで提供されるサービスとなる。図書館ごとに唯一のライブラリー・スキーマが定められるが、利用者の属性(分野や立場等)によって、見え方が異なる点に留意が必要である。」

 以下、国大図協シンポ後の感想ツイートから。

 オープンサイエンス云々はその通り、今回の焦点だったライブラリースキーマはまったくもってその通り、という感じで、この諸事かまびすしい時勢に”論理構造”を再確認しようぜという地に足のついた話ががっつりされたの、希望しかないなと思った。
 でも横国大のビジョンがすげえよかったので、もうあれでええやん的な。あと以前小野さんがツイートしてた図みたく、皆で得手勝手各々の視点で「うちとこのライブラリースキーマ」を百花繚乱させたうえで、ええタイミングで上澄みをまとめてくだすったらいいんじゃないかな。アイデア出しは多いほど良い。
 とは言え、既存の現場・組織ベースの焼き直しになっても困る(論理構造なんだから)し、そもそも大学の、研究学術の、社会のスキーマとどう接続するんだ、のほうが大事だと思うので、このスキーマの外枠が「図書館」という殻であっては困るよな、ていう。開かれて/接続可能でないと。
 しかもこれは”新しい話”ではないんだ、というのも耳タコで認識されたい、今に限らず太古からもともと大学や図書館は”オープン”な”サイエンス”の場であるはずだから。

 とりあえずみんなでわいわい「うちとこのライブラリースキーマ」やったらいいんじゃないすか。
(「うちとこのライブラリースキーマ」みたいな発想は、うちみたいに専門特化した機関だからお気楽に言えること、なのかもですが)

今日の本読みメモ:『共振するデジタル人文学とデジタルアーカイブ』

 鈴木親彦編. 『共振するデジタル人文学とデジタルアーカイブ』. 勉誠出版, 2023.
 https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=101402

 うちら業界の人、これ絶対読んで、頼む。
 時間無い・しんどいいう方は、西岡「大学図書館におけるDHとデジタルアーカイブ」章と大向「大学がつなぐDAとDH、大学をつなぐDAとDH」章の2つだけミニマムでも良いので。

○赤間「デジタルヒューマニティーズとデジタルアーカイブ」
・立命館大学文学部「デジタル人文学クロスメジャー」(選考横断型コース、学部生)。学部生が自身の専攻で展開したいテーマに対して、本属の専攻では提供していないデジタル技術や研究方法を学ぶ。
・データベースにおける蓄積・編集という機能が、DHの研究プロセスには重要。個人の研究活動から生み出される情報のアーカイブが可能なデータベースシステムが必要。ARCのDBは蓄積編集機能を提供している。
・従来の人文学をDHへ移行させるため、オンライン上のデジタルツイン的な研究空間・プラットフォーム(=リサーチスペース)が必要。ARCは知的生産のためのエコシステム型DH環境として「ARCリサーチスペース」を提供している。

○永﨑「デジタルアーカイブ社会実現に向けたレイヤー構造の必要性と人文学の役割」
・方法論の共有地(Methodological Commons)。人文学は分野ごとに独自の方法論を持つが、DHで適用されるデジタル技術はおおむね共通しており共有・相互対話が可能。
→<e>図書館とDHの接点はここにあるのでは。「情報リテラシー教育」とやらでさんざん「うちらの領域だ」って言ってやってきたし。

○山本「人文学の大規模な研究基盤構築:新日本古典籍総合データベース」
・人文学社会科学の新興を考えるうえでの3つの視点
-諸学の密接な連携と総合性
-学術への要請と社会的貢献
-グローバル化と国際学術空間
(「リスク社会の克服と知的社会の成熟に向けた人文学及び社会科学の振興について(報告)」(文部科学省科学技術・学術審議会学術分科会))
・人文学社会学の諸学が分野を越えて共有できる本質的根源的な問いに対する探究を進化させていくアプローチが求められる。(「人文学・社会科学が先導する未来社会の共創に向けて」(文部科学省科学技術・学術審議会学術分科会))

○西岡「大学図書館におけるDHとデジタルアーカイブ」
・デジタルアーカイブは大学図書館にとってのDHの基盤
・欧米の大学図書館は、支援者からパートナーへ、緊密な連携に取り組んでいる。
・図書館・人文学への批判→インパクトの提示、そのためのDADH(?)
・図書館は単なるリソースプロバイダではなく、資料知識・研究連携、という付加価値・差別化
・図書館とDHのwinwin。図書館がDH研究プロジェクトの初期段階から連携参加することで、持続可能性(<e>それ以外にも、何かある?)に貢献できる。

○山田「史料をデータとして考える」
・「科学技術・イノベーション基本法」(2021)で、「人文科学を含む科学技術とイノベーションの創出」
・「第6期科学技術・イノベーション基本計画」(2021)で、「自然科学のみならず人文・社会科学も含めた多様な「知」の創造」のため、人文・社会系の研究データのプラットフォームを整備するとされた。
・人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業(日本学術振興会、2018~)、人文社会系の研究データ共有・利活用のシステム構築
・「人文学・社会科学総合データカタログ」(JDCat)

○大沼「デジタルアーカイブはデジタル・ヒューマニティーズに対して何ができるか?:一つの解としてのラボ事業」
・主要なデジタルアーカイブが展開している「ラボ」を冠した事業
・(ヨーロピアナやジャパンサーチで)集約されたコンテンツは、次に、どのように使われるのか。いかにして研究利活用や新たなサービスにつなげられるか。
・DHは共同研究が多く、多様な専門家の共同によって開発がおこなわれるラボ事業は、それ自体がDH的な活動。

○小風尚樹「デジタルアーカイブの活用に向けたコミュニティ形成:Tokyo Digital Historyを事例に」
・DHの学際性等から、DHをやる学生と指導教員との知見や専門分野が合致しない問題。
・DH教育課程がない問題。
・デジタルヒストリーを学べる院生主体の勉強会、としてのTokyo Digital History。
・若手研究者のDA・DHツール活用がまだ表面的で踏み込みが足りない。そこにキャリアのある年輩の研究者も必要。

○小風綾乃「多量のデータ作成と計量分析を実践する歴史学研究者から見るDA・DHの希望と展望」
・画像や翻刻データ等が、ここの研究者のPC等に死蔵されることの無いような環境整備を。
・「方法論の共有地」として、ツールやその学びの場が共有されたい。

○大向「大学がつなぐDAとDH、大学をつなぐDAとDH」
・DAとDHの分業体制(大学内における)
・大学への社会からの要請(変化)は、DA・DHにとっては追い風である。
・学問のDXが必要→DAとDHの分業は解くべき。(<e>分業は”分断”ではない)
・そのために、DADHを軸とした大学教育カリキュラムが必要。
・東京大学では、大学院生を対象としたDHの修了証プログラムがある。
・部局(研究者)DAを共通施設(図書館)DAがフォローする。(→社会還元、共同研究につながる)

事務連絡 : egamiday3+ 開始のお知らせ

 「egamiday3+」の運用を開始しました。

 「egamiday3+」は、15年(!)続いてきた「egamiday3」のそのまた続きであり、それはおそらく「egamiday」「egamiday2」「egamiday2+」「HVUday」あたりからの流れのようなものです。
 特にやることは変わらないと思いますが、なんとなくシステム的・デザイン的に、次の15年(!?)を見据えた持続可能なものにできればいいかなと思って、という感じです。

 でもやっぱ、特に変わんないです。

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