「図書館情報資源論」を考えるシリーズ(1): いまの”生シラバス”

●前置き

 司書科目としての図書館情報資源論(概論・特論)について、しばらくちまちまと考えたりまとめたりする、シリーズ的なもの、の最初の記事です。

 というのも、某学(某社)で兼業非常勤的に「図書館情報資源概論」「図書館情報資源特論」の高座にあがらせていただくようになってもう10年以上経つのですが、当然毎回内容のあちこちを更新しつつあたってはいるものの、何年かに1回くらいは、そもそもこの科目は何のためにあるのか、何を学ぼうとしているのか、他の科目との兼ね合いによって、いや、というよりは図書館業界全体、この社会全体における知識・情報のあり方の中にあって、どういう位置づけにあるんだろう、どういうはたらきをするんだろう、というようなことをあらためて考え直してみて、そこをアップデートしていかないと、パワポの字面表面だけちょこちょこっといじって投影してみせるようなことを”アップデート”とは言わんだろう、と。
 もちろん、それはとっくに文部科学省由来で定義されているのでは、なのかもですが、それこそ10年どころかそろそろ20年目の影がしのびよりそうな頃合いで、いつまでもおとなしく文言通りに受けとってはいられないので、極私的にでもジタバタ考えてみる、という一隅の試みです。
 かといって、教科書を編もうなどという内容的な総ざらえというわけではなく、枠組みやラインナップのについてというくらいです。また、それを大上段に構えてウンウンうなって考えてみてもいたずらに時間がかかるだけだし、それよりは随論随筆的に、こまぎれに言葉にしてみて可視化していったほうが、まだマシなんじゃないか、という思いもあって、折にふれちまちまとシリーズにしてみるというメモ的なものです。なので、その時々で思いつきを書き記し、これといってゴールが決まってるわけでもなく、あてどない感じで。

 なお、こういうblog記事はそういえば過去にもたまに書いたりしてたので、以下、そのリスト。
・人はなぜ「図書館情報資源概論」を学ぶのか: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/458716536.html
・「図書と雑誌」とは何か #図書館情報資源概論: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/475056966.html
・「災害と図書館情報資源」のまとめ(途中)メモ #図書館情報資源概論: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/478208719.html

●現在の”生シラバス”的なもの

 というわけで、まずは現在地確認、という。
 いま自分が、どういう内容・構成の講義を実際にやってるのかという、建前じゃない”生”のシラバスのような感じで。(注:「建前」ってなんだ?)

 直近・2024年度上半期でおこなった「図書館情報資源概論」「特論」の内容を、再整理するかたちで挙げると、こうなります。

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(事務的なこと)
・オリエンテーション
 …受講要領等
 …図書館情報資源概論/特論という科目について

(総論的な講義)
・図書館情報資源とは何か
 …図書館情報資源の多様性
 …図書館情報資源の実例

(情報資源の類型・特質)
・図書・雑誌
・古典籍資料(和)
 …基礎知識
 …取り扱い・資料保存
・マイクロフィルム
 …基礎知識
 …取り扱い・資料保存
・灰色文献
・地域資料・地域情報
 …郷土資料
 …行政資料
 …コミュニティ資料
 …住民参加
・学術資料・学術情報
 …学術研究の概要
 …論文・図書
 …電子資料
・インターネット情報
 …特質・技術等
 …参加型集合知
 …高度情報化社会
・デジタルアーカイブ
 …特質・技術等
 …ポータル・利活用

(情報資源の管理・取り扱い)
・出版・流通
 …産業・流通事情
 …委託・再販
・蔵書構築
 …収書の自由
 …収書方針・選書基準
 …実務
・蔵書管理
 …実務・技術等
 …書架・書庫
 …資料保存

(情報資源にまつわる理念と実際、その環境)
・図書館による資料提供の意義
・図書館協力と資源共有
 …相互利用・資源共有
 …NII・NDL
 …MLA連携
・著作権とオープン
 …著作権法
 …PDM・CC
 …オープンアクセス、オープンデータ、オープンサイエンス

(応用的な講義)
・災害と図書館情報資源
・冷泉家蔵書
・学校資料
・国立国会図書館のデジタル事業
・ユーザとアウトリーチ
・本棚の中のニッポン

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 文部科学省由来の定義が年月経ってるとはいえ、骨格がさほどかわるわけではないと思うので、その定義をふまえて自分なりに建てている2本柱が、「情報資源の類型・特質」と「情報資源の管理・取り扱い」です。ただこのメイン柱だけを断片的に認識したところで、図書館・知識情報・社会全体のあり方とどう接続するのかがわかってないと、その柱を活用できないと思うので、自分なりに「情報資源にまつわる理念と実際、その環境」という3本目の柱の必要性を感じ、限られた時間数の中にねじ込んでます。
 なお、このリストは内容的な分類上でまとめなおしたもので、実際の講義はこの順番でやるわけでも、この構成のままでやるわけでもなく、そこそこミックスしてます。たとえば著作権の話はデジタルアーカイブとセットで考えたほうが、著作権に前向きに取り組むことができる(注:それがどういうことかはよくわかりませんが)と思うのでそうしてますし、オープン云々の話は学術情報や地域情報やインターネット情報なんかに随所に散らばしてる感じ。

 応用的な講義も、いくつかは「概論」で取り上げる余裕がほしいのですが、おおむね「特論」の限られた受講者だけに伝えられるかどうか、という感じです。それでもせめて「災害と図書館情報資源」だけは概論でも伝えたく、なんとか半期15回の中で懸命に時間をつくって取り上げてきてたのですが、ドゥなウィークという謎の時間削減により、昨年は落ちてしまいました。今年はなんとか復活させたい。

 今宵はここまでにしとうございます。

202409eu ブルガリア日記その2 : EAJRS編

 2024年9月にEAJRS2024年次大会@ソフィア・ブルガリア、参加メモです。

 EAJRSとは。
 European Association of Japanese Resource Specialistsの略で、日本名は「日本資料専門家欧州協会」。ヨーロッパ各地の日本関係図書館の司書および日本研究者が集まるグループで、こうやって年1回どこぞに集まっては、日本に関する資料や研究や図書館やについて発表し合ったりする、というものです。今回は28本の発表、現地参加は75人、オンライン参加は35人という規模。

 2024年の開催地は、ブルガリアの首都・ソフィアにあるソフィア大学でした。
 ここでの開催は過去2019年に一度あり、5年ぶり2度目です。ちなみにegamidayさんは前回は参加せずです。
 会場は↓こんな感じ。



●各発表編

 今回はブース(後述)設置場所が大会会場とまあまあ離れていたため、各発表を拝聴する機会があまりなく、また会場の都合からディスプレイが遠くて見えないところが多く、ということで、メモはほとんどありません。残念。
 そのかわり、デジタルエイジには見逃し配信があります、というわけで詳細は下記をご参照ください。

https://www.eajrs.net/2024-sofia

 各発表者のアブストラクトから、当日資料およびYoutube動画がリンクされています。
 いい時代になったものです、感謝。

 極私的に気にしてたのは、以下のあたりです。
「図書館におけるアルファベット至上主義の現状と展望」

「New sources of cataloguing data: the cases of British Library Language of Cataloguing Taskforce and Nihon Shoshi Sakusei Benkyôkai」

「日本の地域民具資料の課題と情報公開・共有の取り組み」

●ミニパネル企画

 ここ数年司会を務めているミニパネル企画。
 今回のテーマは「図書館員スキル再考。オープンサイエンスへ向けて」として、日欧様々な立場の方にお話いただき、フロアにもご意見求めるなどしていろいろやってみましたが、いつも通り時間がさっぱり足りずということになってしまいました。
 EAJRSにおいてはこういう企画が他に類ないので、好評はいただけるのですが、そろそろ内容の具体性というか、論点をしぼるというか、フロアからの意見収集の仕組みをつくるくらいのことは、考えないとなという反省は一応あるのです。
 ていうか、登壇者側にまわれる日がいつかくるのだろうか……。

 当日の動画は下記から。

●ブース出展&プレゼンテーション

 毎年、所属機関の広報とフィードバックの拠点として、ブース出展をおこなっています。今年はそれにくわえて、各機関・団体15分程度のプレゼンテーションができるセッションというのが設けられていて、そちらも実施してきました。

・今年はブースのエリアが、大会会場からもコーヒースペースからも遠く離れていたため、大会参加者で立ち寄ってもらえる人があまり多くなく、残念。
・そのかわりといってはあれですが、大会と関係ないふつうの学生さんや研究者やいろんな人が通る”公道”的な場所であったため、ふらっと立ち寄って来られたり、なんかえらく興味を持たれたり、といういい感じの人情触れあいブースっぽい感じになることが、たまにあったりして。
・簡易的な資料展示のかわりにならないかと目論んで、「化物尽絵巻」(https://da.nichibun.ac.jp/item/003762507)をうちとこの巨大ロールプリンタで不織布に印刷して、横につなげてなんちゃって巻物にしたやつ、これを持っていってテーブル上でひろげてたのですが、かなりの好評を得たのです。妖怪に興味があるという人はもちろん、なんだこの奇妙な絵はと、なんだこのコミカルなモンスターはと、物尽系なので次から次へといろんな絵面が登場する、これは純粋にコンテンツに助けられたパターン。あと、不織布で遠慮無く触ってもらえるやつなので、自分で手に取って操作できることの楽しさ。これを、たとえば”公道”的なブースエリアをたまたま通りかかったブルガリアのご婦人から「どうやったらこれを買えるのか」と請われたり、他館さんから「そのロールプリンタでうちの絵巻を印刷してほしい」と請われたりと、こんなところにニーズがあったりするのだなあ、という感じ。日本からの機関参加勢に絵巻が囲まれる、という一幕もあったりした。
・プレゼンテーションの時間では、当機関に与えられた時間のうち、前半を同行者がパワポで用意したプレゼン、そのあとegamidayさんが補足をする、という予定でした。が、そもそも”補足”って何をしたらいいんだろう??と思いながら、他機関・他団体さんのプレゼンをずっと眺めていたのですが、なんとなく用意済みの情報ばかりが提示されてるような気がして、なるほどいまこの場に(ここにいるオーディエンスに)足りないのは、新鮮でリアルタイムな情報交換ではないだろうか、と思い至り、とはいえさすがに対話的なプレゼンは用意してないし会場の構造上無理だろうなので、対話の代替として、”いまさっきまでブースの現場でどんな話をしていたのか”を紹介する、「こんな人から反応がありました」「このフライヤーや展示物が人気です」「この質問が意外に多いです」みたいな情報を提示することで、擬似的な対話になるし興味もひけるのでは、と思ってやってみたのでしたが、実際の効果までは不明。
・毎年思うことながら、数年にわたって参加し何度かブースに来場しているはずの常連な参加者でも、こちらの説明に「聞いたことなかった」と新鮮な反応を示す方もいて、同様(とこちらが勝手に思ってるような)内容であっても繰り返し広報する用意をしておくのは大事だなと。

●ローマ字ミーティング

 日本語書誌および多言語書誌のローマ字に関する、イギリスと日本とでの有志ミーティング、というものもありました。ローマナイズというのは古くから取り沙汰されてきた課題であり、なおかつ今でもなかなか解決しないという難題なのですが、自分の中でもこの回だけで整理しきれるような話では全然ないので、また別の機会に考えてまとめます。

●図書館見学

 図書館見学は3班にわかれており、国立図書館とかミュージアムの班も興味深くはあったのですが、やはりここは堅実にという感じで「ソフィア大学図書館巡りツアー」を選択したところ、参加人員5人という絶妙なグループ構成を得ました。

 ツアーガイドをしてくれた学生さんが、英語堪能で、発声が非常によく、説明が明解、という有能極まりない方だったので博士課程くらいの院生さんかなと思ってたら、あとで学部3年生と聞いて驚愕したものでした。ちなみにおすすめのブルガリア田舎は、バンスコとコヴァチェヴィツァとのこと。


 ↑日文研への里心が出てしまいそうになる円形図書館。


 ↑日本関係資料として提示された多様な参考図書。ロシア語を通して日本語を学んだ時代、等。


 ↑ケンペル日本誌などが提示される部屋。


 ↑ぐるぐるとまわるうちに、高いところに案内してもらう。
 山に囲まれた土地柄なんだなということが、あらためてわかる感じになってる。


 ↑最新かつ働きやすそうさ満点のコンサベーションラボに案内していただく。
 いろんな写真とか実物とか拝見するんだけど、この紙食い虫はなに? 食いカスとかあんま見たことない形? みたいになってる。

●その他

・なんせいろんな人に会えてうれしかった、という話。
 オンラインでは何度もあってるのに、対面では初めての人。
 対面ではコロナ禍ぶりの人。
 毎年ヨーロッパでだけ会う日本の人。
 日本人よりよっぽどよく会うアメリカやヨーロッパの人。
 なんだかんだで10年ぶりくらい会ってすっごい話がもりあがった人。
 ヨーロッパのニューフェイスな人。
 今年は会えなかった人。
 などなどです。
・昨年(2023年)の日欧DHクロストーク(https://sites.google.com/view/ejdhxtalk20231107)を視聴してくださった方からのフィードバックも得たりしました。聞くと、このイベントをきっかけに登壇者とつながり、問題意識を共有して、今大会での発表に至ったとおっしゃるので、やってよかったのだなあとしみじみする。
・その日欧DHクロストークにしろ、EAJRS大会にしろ、参加者の分野・職種・立場が多様に混在していて、細分化されてないこと。それぞれの関係がフラットであること。トピックの多くが、資料やツールや手法の話で、自己完結してないところ。そういうところに、他の学会や業務研修とはひと味ちがう効用があるんだ、というのを再認識したのでした。

 思い起こせば、egamidayさん最初の参加が2024年。
 もう20年になるのですね。
 お世話になってばかりなので、いつかは恩返しがしたい。

 2025年9月はハイデルベルクの予定のようです。

202409eu ブルガリア日記その1 : 旅情編

 2024年9月にEAJRS2024年次大会@ソフィア・ブルガリアに参加してきたのの、見聞きしたこととか考えたこととか楽しかったことなどの、メモです。
 なおEAJRSとは、European Association of Japanese Resource Specialistsの略で、日本名は「日本資料専門家欧州協会」、ヨーロッパ各地の日本関係図書館の司書および日本研究者が集まるグループです。会議本編についてはポストを分けます。

 休暇による旅では無いため、旅情のほとんどが飲食か移動とかこまごました話になるパターンのやつです。

●往路

・今回のフライトはトルコ航空でした。検索してて、やたらトルコ航空推されるなあと思って、よく考えたら、ブルガリアとトルコは隣国だった。
 ただ、日本夜間発とかイスタンブール早朝着とかイスタンブールド深夜発とかで、心身を削られる思いではあった。
・関空、チェックインカウンターにて。トルコ航空のチェックインが長蛇の列でなかなかの難物だった。オンラインチェックインの列の方が圧倒的に空いてるんだけど、ほぼ誰も並んでないのが不自然で、そもそも自分だって当然のように自宅でオンラインチェックインを試みたんだけども、エラーが出て「カウンターに来い」と言われてたので、この列のアンバランスさが同じ理由によるのだとしたら、どう解決するのだろう。
・関空、出国後エリアにて。こちらもがらっと変わっていて、どう動くかにあたふたしてしまったのですが、変わってるというより、工事中のせいなんだろうか、店舗がえらく少なくてほしいものが買えそうにない、買い出しができないで、こんなに貧弱でしたっけ?という感じ。今後に期待。
・機内にて。
・wifiあり、マイル会員は云々という制度ががんばって読んでもよくわからないしアカウントにエラーが出て使えないので、結局有料で使用。なお、制限無しにすべき、じゃないと瞬殺です、という申し送り。
・食事等、可もなく不可もなしという感じ。
・なんだかんだで、眠れたのか眠れなかったのかよくわからない程度の睡眠状況であるのは、まあだいたいいつも通り。
・イスタンブール空港着。たいして眠れてもないのに現地朝5時、日本時間で11時という、つらさしかない中で空港内移動をするんですが、世界の交差路的位置にある空港だけあって、広いわ遠いわ、深夜なのに人が山ほどいるわ、免税店が大量に並ぶわ電飾がえげつないわで、これが現代社会のバザールか、VRタイムズスクエアか、はたまた高級イオンモールか、人類の物欲という業をかたちにした地獄を徘徊させられてるような居心地でしたよという、朝5時に。ただ、そのバザールを一歩離れれば、大規模国際空港なんてものはアムステルダムもシアトルもイスタンブールもたいして変わり映えしないんですが。
・そしてさすがに、某機構、某館、某研と、このあたりから少しづついろんな人びと(註:日本からのEAJRS参加者)に会い始める感じ。
・1時間程度で、朝方にソフィア空港着。酷暑日本から来た身には、こざっぱりとした涼しさが怠い身体に染みる。空港施設を一歩出ただけの眺めでも、山に囲まれた高地都市間が出てて、なんか良い。

・空港から市内へは地下鉄で1本という手軽さだったので油断してたのですが、駅改札前まで来て、自動券売機がまさかの現地通貨(レフ/レヴァ)のコインしか受け付けない。切符売りの有人窓口も、クレジットカード不可で現金しか受け付けない、って言うじゃないですか、え、国際便の止まる首都空港の駅ですよね、マジか、という事態に、市内の銀行でキャッシングすりゃいいやとたかをくくってたegamidayさんのみならず、ふわっと集まってた各機関日本人もあたふたとして、急遽両替所を求めて空港に戻るという。
・しかもその空港両替所にて、日本円は換金対象ではないという、世界経済における日本の価値という現実の一端を思い知らされる事態に出くわす。手持ちの予備ユーロ札で事なきを得る。YENはもはや世界共通語ではないのだった。
・窓口に戻るも、こんだけ苦労して日本円で100円ちょっとの切符買うだけなのもあれだなあ、と思い、窓口付近のベタベタ貼られた貼り紙をよくよく確認してみると、予習してたワンデイパスがいくらいくらとちゃんと書いててくれるのを発券。窓口の仏頂面マダムに確かめて、まんまとゲットに成功。
・なお念のため、後日わかったことですが、改札のタップする機械がVISAのクレジットカード対応済みで、カードでそのまま乗降できる仕組みだった、という。これは市中のトラムなりバスなりの各種公共交通もだいたい同様で、最初はわかりにくかったもののわかってしまえば圧倒的にカンタンなのでした。コロナで旅行離れしてるうちに、確実に時代は変わっとるな。
・セルディカ駅着。ソフィアの最中心駅かつ宿所最寄り駅、にして、古代遺跡。エスカレーター故障のためやむなく宿所から遠い側の出口から出るも、やたら段差や階段が多いバリア・ノン・フリーな土地柄で、地上に出て見るも歩道のタイルや舗装も壊れがちのガタガタで、重デカいlagguage引きずってなかなか行きたい方角にたどり着けない。無理くり階段とエレベーターを使い、やっと宿近の出口まで出るというダンジョン感。
・宿所の建物がまた古式ゆかしく、いつ止まってもおかしくないエレベーター(手動の木製扉)は、ちょっと前の安宿旅行じゃだいたいこれだったなあ、としみじみ。部屋のドアの古鍵なんかは、同一方向に1回、2回、3回まわしたうえに、もう半分を強く押しつけるようにまわして、やっと開く、という公務員試験ぶり、ていうかこれもちょっと前はこれだったなあ、というなつかしみを抱きながら、やっとのことでインにイン。
・なお、宿はオーナーさんのご好意で午前中にアーリーチェックインできたのです。

・今回の宿所がこちら。
 大きな冷蔵庫がうれしい。洗濯機はカンで操作してて最後まで謎。駅地下の車道に面した立地なんだけど、騒音等はほぼ気にならず。ていうか、さすがに広すぎて、結局ベッドは最後まで使わずソファで寝てた。
 そしてこれでも昨今の日本や世界に比べたらだいぶお安くて助かった。

・その後、滞在および明日からに備えて、荷解き、資材の調達などなど。
・なお初日は、宵の口から2-3時間気を失ったように爆睡という、これはヨーロッパ時差ボケあるある。

●街歩き編

・晴れてる朝は、高地だけあって涼しくて、超さわやか。
 さらに、晴れてると気づくんですが、四方を山に囲まれてるて、特にボヤナの方からは高い山に見守られてる感がある。あれがヴィトシャ山なんでしょう。
 ちなみに首都ソフィアの標高は550mくらいらしく、たぶん長野あたり。
・ただし、なるほど高地というか、山の天気は変わりやすいということなのか、急に濃く曇ったり、にわか雨がさっと降ったり、ふわっとやんで日が差したり、また天気雨がさっと降ったりというのを繰り返したりする。
・あと足元が、あちこちにやたら段差や階段が多く、わりとバリア・ノン・フリーな土地柄だな、という印象。歩道のタイルや舗装も壊れたものがそのままで、ガタガタでならされてなかったりする。そこへきて、こまめに雨が降りがちなので、結果、道の割れたタイルをふみしめて泥水を撥ね上げズボンの裾を汚す、みたいになる。あと、歩道でボンヤリ信号待ちしてると、車が水たまりの泥水を撥ねてひっかけられそうになる、ああ、これって昭和の日本でよくあったやつじゃん、ひさしぶりだわ、みたいな変な感慨がわいたり、逆に日本社会の時の移ろいをあらためて知ったりしてる。車も多いし、道を渡れたり渡れなかったりするので、歩行者フレンドリーなのは中心の密集地くらいかなという感じ。
・規模的には、ちょっと歩けば街のだいたいのところには行けるくらい。
・そもそもブルガリアの歴史&ソフィアの歴史が、トラキア、古代ローマ、東ローマ帝国、オスマントルコ、ロシア・ソ連と、時代的・地域的・宗教的に重なり合い混じり合いという感じで、街全体がパッチワークで計り知れないという感じ。地下鉄駅に古代遺跡と中世の教会があり、その向こうにイスラム寺院、こっちは旧共産党本部、旧・王宮は現・民俗博物館、ああ、はい、もうそういうもんなんだなとして見ながら歩いてる。


・ヴィトシャ通り。こざっぱりした歩行者天国系のメインな繁華街。

・一方で宿近くの違う通りを歩くと、地元猥雑庶民派な感じで、高値センスでやってます的な店やチェーン系の店はほぼなかったりする。



・聖ネデリャ教会、ブルガリア正教の教会とのこと。内部はこれでもかと埋め尽くされた信仰環境で、歴史的由来はもちろんだけど、それ以上に市民のための現役の教会として存在感がしっかりしてるという印象の場所。町のどまんなか中のどまんなかだし、木々のあしらいもあってか、見た目も大きさも嫌みのない男前という感じがする。箱入り娘の番頭さんのようにソフィアの背骨的なメインストリート中央に陣取ってて、トラムが器用に避けて通る。


・聖ペトカ地下教会。オスマン朝下にあってのキリスト教会で、この建築が地下鉄のメイン駅に、古代遺跡とともに隣接しているという存在感。残念ながら拝観のご縁が今回はなかった。



・同じく地下鉄メイン駅(セルディカ駅)のセルディカ遺跡、古代ローマ帝国期。ここは市民の住居です、ここが公衆浴場だった場所です、みたいに、なかなかこんな一等地にこんな贅沢に保存してくれてるの、素直にすげえなと思う。見習え、門司。


・これはオスマントルコ時代のイスラム寺院(バーニャ・バシ・ジャーミア)。



・アレクサンダー・ネフスキー教会。ブルガリア最大、いやなんならバルカン半島で最大最麗というふれこみの、ネオビザンチン様式。内部は荘厳かつ絢爛、相当な財力がつぎこまれているのが一目でわかるのですが、建立の契機がロシア・トルコ戦争(ブルガリア独立)の際のロシア兵士慰霊のためとのことで、そのパワーの源は信仰なのか、国民主義か、ロシア化へ向かう力なのか、そしてその教会がバルカン最大ということについて、などをまあまあ考えながら拝見してた。3つある祭壇の、中央がロシアで、ブルガリアは右手、らしいです。


・聖ゲオルギ教会という、近代高級ホテルの裏庭にひっそりと囲われたような、レンガ造りの古建築。おそるおそる入ると、狭いロビー的なところで、何集団かはわかんないけど、おばちゃんたちがテーブルにランチをおっぴろげながら駄弁り尽くしてるので、え、生活空間なのかな?、と思ったけど、さらに一歩奥に入ると、ドーム天井に古式ゆかしきキリスト画が幾層かになってのこってて え、マジ古代遺構、マジ古代芸術じゃないですか、こんな首都のど真ん中の現代空間、しかも駄弁りランチ開催地という生活空間に。なお創設は4世紀、内装が古くは10世紀。脱帽。


・謎の公共温泉。たぶん市民がお湯を汲んで持って帰ったりする。そもそもブルガリアは温泉処らしく、ソフィアの町が作られたのも温泉きっかけらしい。


・そのそばにあるソフィア歴史博物館は、もともと公衆浴場だったとのこと。


・またあるときは、あえて観光要素も中心街でもない地元の生活道路を歩いてみたりする。知らん街の、知らん人が生活している、知らん通り。まだらな雑草や蔓がよそ者を穏やかに拒絶してそうな路地であったり、サビや未修繕のファサードがほとんどの中にぽっかりとオシャレ個人商店が店構えしてて、ちっこい花飾りだとか、”カジュアル伝統デザイン手作り陶器”みたいの(但し札の記述がキリルなので詳細不明)だとかを売ってる風なんだけど、閉店日だか休み時間だかもわからない感じで閉まってたり、地元で人気の美味しいパン屋さんっぽいのとか何の食材をどう売ってるかもよくわからないがたぶんここに来る人はわかってるから問題ないんだろうようなところだったり、そしてただたんにコンクリートの構造物が続き車がビュンビュン走り抜けてく車道だったり、いまなぜここを歩きどこへ向かうのかもふわふわしててわからないような、そういう散歩をしてる。ストレンジャーごっこ。



・あと、社会主義の頃のであろう大型集合住宅とか、わからないけど何か大きな施設とか、それが壊れたまま落書きされたまま放置とか、その間を縫って走るVISAタッチのトラムとか、20世紀と21世紀が刺繍のように絡みあってる感じがする。

●図書館・博物館編



・空き時間に、市内の市立図書館(https://www.libsofia.bg/)へ。とはいっても、本はほぼキリル文字だし、掲示もキリルだし、人がいないからあんま目立っても困るので、閲覧室をぐるっとまわっただけですが、とりあえず蔵書はほぼキリルで、日本マンガとかあんまなかった。なお、韓国コーナーはどうやらあるらしい。

・これも空き時間を利用して、国立民俗学博物館(https://nembg.com/)へ。生活史と文化風俗、織物の実演、木彫り、刺繍、陶器といった感じで、心に滋養が染みわたる感じがする。旅先で民俗系は大事だし、染みるし、”はかどる”(理解が)のでいいなあと。
・ただ、それもさることながら、企画展示のほうが現代情報系たる「Fake/Real」展https://nembg.com/wp-content/uploads/2024/07/broshura_web-3.pdf)で、その内容が存外によくできていて、これ日本でもやろうぜと思い、結果ついつい図録買い込んでしまった。しかも公的機関のためか現金のみで、手持ちの現地通貨をほぼここで使い込んだ感。
・ヴィトシャ通りでは露店ブックフェアみたいなのもちょうどやってたらしく、来てみたはいいんだけど、読めない文字の本が大量に並んでるので無学な自分にはアプローチの取りようがなかった。CoolなJapanのアニメ・漫画類も、こういうところでは力を発揮しがちと思いきや、ごくたまにしかないので、あ、そうなんだ、と思った、このへんはもっと学生さんにお話を聞いてみたらよかった。あったのが、これ↓くらい。


・ブルガリアの国立図書館。プログラム編成上、今回は見学ならず。

●買い物編

・註。通貨は、レフ(複数形レヴァ)。1レフは固定で約1.96ユーロ、日本円で80円程度と考えれば目安となるでしょう。
・もののガイドブック数冊、新しくともコロナ禍前あたりの記述では、クレジットカードは限られた場所でしか使えないよ、的な説明だったんだけど、少なくともソフィアの街なかではほぼほぼカードだった。会計時にはほぼ必ず「Cash or Card?」と聞かれる。そのうえで、でもやっぱりわりとちょいちょい現金が飛んでいくので、困りがちなシーンもちょいちょいあるという感じ。
・「モール・オブ・ソフィア」という、イオンモールそのものな施設。スタバやH&Mや家電量販店などがある。なお、こういう”わりと最近できましたよ”的なイオンモールが郊外にもあり、たぶんもっといろんなところにありそうで、そういう経済的年表の位置にあるんだな、ていう感じ。街中にチェーン店は少なそうなんだけど、イオン化傾向は強い。
・予想よりもうひと声寒いくらいだったので、H&Mで服を調達。もう10年以上着てるビニールの黒パーカーの2代目がそろそろほしいと長年思っていたのですが、ちょうどそっくりのがピッタリあったので、お買い上げ。寝間着と外着の兼用できそうな毛布地のパーカーも安売りしてたので、ついでにお買い上げ。…ただしよく考えたら、H&Mの服なんてユーロその他周辺国の通貨での価格が値札にしっかり印字してあるから、物価安め感があるソフィアでわざわざ買うの、割高なだけなんじゃなかったか。
・なおその他スーパーでもなんでも、ブルガリア国内品であろうものもユーロ圏から来てるであろう製品も半々くらいであるんだけど、やっぱり外から来てるのはどうも割高感があるな、という印象。スーパーによっては、国内の製品には値札にわかりやすく国旗配色のマークが付いてたりして、その結果かどうか、同じような品が並んでてもそのお値段にわりとデコボコが多かったりする印象。なので、みなさんいろいろ考えて買ってるんじゃないかな。
・BILLA。市内のどこにでもあるスーパー、京都でいうフレスコっぽい。モール・オブ・ソフィアの中にでっかい店舗があって、ここで買っとかないと買い出しそびれるかもと、水とか酒とか買い込んだんだけど、あとで見たら宿所の隣りブロックにもあった、それくらいたくさんある、やっぱフレスコ。
・ただ、そのBILLAをのぞけば、わかりやすくチェーンっぽい店舗をそんなには見かけない感じで、個別の店舗がメインな土地柄なのかな?という感じ。

・セントラル・ハリ、という「市場」。


 昔からある庶民派市場で、観光的にも人気で、屋内屋台みたいのもたくさんあって、ネイティブでカジュアルな食事が楽しめる、みたいなことがどのガイドブックにも誇らしげに書いてあるので、楽しみに行ってみたら、なんのことはない、つい最近大幅に改装され、外資系(ドイツ)の大型チェーンスーパーが全体を取り仕切っており、テカテカした中くらいイオンみたいになってた。地元の地名がついてるからネイティブな食堂かと思って行ったら、まいどおおきに系列だった、みたいな感じ。飲食も、いまどきのシステマチックなフードコートに、多少地元風の食べ物もあるよくらい。そういうスーパーならそういうスーパーでもいいし地元生活的にははかどりそうだし実際親子連れが楽しげに混み合っててよさげだけど、庶民派観光市場がひとつ消滅したことについては残念、ていうかあれ今後のガイドブックからは落ちるんだろな…。

・そりゃもちろん日本のようなコンビニなんか無い、自販機も無いのは重々わかってるつもりなんだけど、たとえば、お酒をしたたかにいただいた帰路、この血中のアセトアルデヒドを鎮めるために、アイスが食べたいコーラが飲みたいなんてことを切実熱望したところで、こんな時間に一切の買い物はこの街ではできません、てなると、日本恋しさが増したりするなあと。しょうがないから、宿に戻ると買い置きの缶ビールが迎えてくれたりする。
・で、さてスーパーでアイスを買おうとするんだけど、パッケージも値札もキリル文字のため商品名と値段との対比が分からず、値札のアラビア数字によれば、あるものは100円そこそこ、あるものは400~500円、ってだいぶ違うくないかと思うんだけど、パッケージ写真を見てもどれもさほど違いがありそうにもないので、ええいままよと博打でただ食べたそうなのをいくつか選んで買ったところ、レシートを見たら軒並み高額のほうの商品だった。なんというか、無駄に目が良い。
・どのスーパーでもそうだったのですが、よそではどこでもあるようなカップ麺、ほかアジア系の食品ってあんま見かけないような気がする。
・総じて、ものはあれこれ売ってて買えるように見えるけど、商売っ気がさほど感じられないというか、買いたいときに買いたいものが買える手の届くところにある、という感じではあまりない。

・観光臭を避け生活臭を感じるため、土産ものはたいてい地元スーパーで物色するようにしてるのですが、今回の調達品はスーパーで売ってる普通のロクム、チョコ、なぜかパックのニョッキ。

・他方、民俗博物館でにわか勉強した結果、あのカラフルなデザインの刺繍とか陶器とかの民芸小物を自分用に調達できたらいいな、と思ってて、そういうのがちゃんと売ってるスペースがソフィア空港のセキュリティ通過後にある、というネット情報を鵜呑みにして行ったら、ここも大改装された後だったのか、どの空港にもありそうな免税品とおもちゃみたいな記念品しかなく、あとはチョコとロクムくらいだった。
 ああいう民芸小物ってどこで買えたんだろうと、後悔混じりで思い返してみると………ふわっとした生活路地を散歩してた時に見かけた、閉店してた個人商店あたり、なんだろうか。
・結論。はじめての土地で上手に楽しむのは、ほんとに難しいもんですね。

●市内交通編


・市内を右往左往するのに、ワンデイパスやクレジットカードのタップが便利なことで調子に乗り、ちょいちょいバスその他を多用してて、それで気づいたのですが、まずGoogleマップ乗り換え検索のデータがしっかりしてるということと、疲労困憊するほど次のバスを待つとか便数がないとかがほとんどなくて、そこそこストレス無く乗り換えができるくらいに便数本数があるし、路線も網羅してるし、しかも乗り換え自体にもさほど迷わなかったので、ほぼキリルしかない表示環境の中でこんなにスムーズなの、この街の公共交通ってわりとよくできた設計ですよね、と思った。
・ただし、乗り場へのアクセスが車道横切らなきゃいけなかったり歩道が入り組んでたりバリア・ノン・フリーだったり、ていう感じ。
・なんにせよ、クレジットカードのタップで乗れるのが便利すぎて、逆に怖い。公共インフラが特定経済圏に取り込まれている。かといって、定額コインだけ受け付けの券売機に戻れそうにない(ていうか、買ったことない)。

●食事編

・バニツッア、というブルガリア特有のパン、これはパイ生地にチーズを練り込んだのをベースに、ものによっていろんな具をはさんだりする、(カロリー等に目をつぶれば)絶対美味いやつちゃうん、と思ってその発音とキリル文字のイメージだけはしっかり耳と目に焼き付けておいたのですが、確かに、市内のどこにでもあるといえばある。

・ブルガリアのファーストバイトが、とある行きがけのショッピングモール内にあったパン屋さんのバニツッア。とにかくチーズ美味いのと、油美味いのと、小麦美味いのと、それが焼きたてでホカホカの温度なのとで、ひと口食べ始めた途端、胃がパンパンになろうとも食べ止まらない勢いになってしまう、「美味いパンは凶器」のパターンのやつだった。もちろん、指も口のまわりもベトベトになった。あれはヤバい、本能に直接働きかけてくるパン。


・とあるランチ、豚肉とほうれん草のライス。

・2日目夜・EAJRSディナーによるブルガリア伝統料理。

 会場(Chevermeto)は、バイパス沿いの会館のような建物の大きめレストランで、おそらくこういう団体を常に受け入れるようなところ。同フロアに我々と、もう1団体(国内?)で、計100人くらいを収容してはる。壁にはブルガリアや世界やのセレブがご来店になりましたという写真がたくさん貼ってある。
 まず、いきなりラキア(ブルガリアの蒸留酒で、葡萄ほか由来)が配られるんだけど、40とか60とかいう「え、華氏ですか?」的な度数のやつなので、一応食前酒という位置づけらしいんだけど即で寝落ちても困るので、これは回避する。


 ショプースカというブルガリアでは一般的らしいサラダ、トマトやキュウリを中心とした生野菜サラダに削りチーズがたっぷりかかってる、ブルガリアのサラダ。まずもって野菜そのものが美味いうえに、かかってるチーズがフレッシュなのと塩味が効いてる(日本人歓喜)ので美味いし、そこにオリーブオイルの旨味で、美味さの二乗作用、という感じ。


 あとは、肉が出る。おそらくは、とにかく肉を食べる。ここでは、焼いた肉を食べる。焼いた豚肉、焼いた鶏肉、ソーセージ様のもの、ハンバーグ様のもの。そして、できれば焼いた豚のリブくらいには醤油が欲しい。


 デザート(Mlechnik)は、形容するなら冷製・生・フレンチトースト。どっぷり甘くてバニラが濃厚。


 なおこの店では2種類のイベントごとが設けられてて、1つは歌のコーナー。ステージに演者の人が登場して、日本の我々のために「さくら」を1曲披露してくださったのと、あとはもう1団体が熱狂する知らない文化圏の歌謡曲、これが何曲も何曲も続くので、最終的に我々は三々五々の退店になった。
 もう1つはネイティブなダンスのコーナー。複数の演者の人たちがかわるがわるフロアに出てきて、ドラムでリズムを刻みながらバネ人形のように跳ね踊り続ける。なんらかの民族芸能だろうとおもわれる。そのうち今度は、手をつなぎ環になって踊ろう的なことを、リズムに乗ってやりだす、かと思いきやフロアの我々を2人、3人と誘い出しては人間数珠つなぎ的に加えていき、長蛇の列となり、まさに蛇のようにぐるぐるととぐろを巻くようにつながっていく。ものの本によれば「ホロ」というらしい、みんなで手を取り合って、輪になろうがなるまいが関係なく踊ろう、と。まあ、こういうのは踊らにゃ損損なので、ふわふわ踊ってましたよ。

・3日目夜、こちらは声かけで集まったメンバーでの夕食会。これもブルガリア料理を出す店だけども、もう少しカジュアルで、人気なのか2店目があるよというようなタイプ。IZBATA(https://tavern2.izbata.bg/en)という、島根感あふれる名前。

 写真とキリル文字と英訳とを、みんなで懸命に照合させながら注文してる。
 いろんな人の話をそれぞれ聞いていると、まずブルガリアでは魚料理は避けるのが賢明とのことで、確かに黒海沿岸地域にいまいるというならまだしも、そこから遠いというだけでそもそも魚を美味しくいただくという習慣そのものから遠いだろうということはなんとなくわかる、だったら酪農牧畜食材を楽しんだほうがよかろうと。それから、さすが世界三大料理の文化圏にあっただけあってトルコ料理の影響は強い、というのはよくわかるんですが、加えてギリシャ料理の影響も強いという。なるほど道理で、なんかやたら地中海っぽい装いをしたものを多く見かけるなと思ったら、すぐ南隣りがギリシャでしたね。ケバブだとかムサカだとか、街並みと同様、食卓もパッチワークっぽい
 結果として、いろんなものをいただきましたが、主にはヨーグルトかチーズかクリームチーズで調えられたものをいただく、野菜はナスやキュウリが使われがち、そしてメインはやはり肉、という感じ。



 たとえば肉野菜の土鍋トマト煮込み(カヴァルマ?)とか、夏野菜を卵で炒めたり(ミシュマシュ?)とか、どうしたって先週自分で作ったお弁当の惣菜にほぼほぼ近い。メインも要するに、鶏肉なり豚肉なりを塩胡椒で焼くかスパイスを効かせて焼くか、なので、あれこれ謂れはたぶんあるんだろうけども、ほっこりした地元家庭料理の雰囲気がする。
 冷製の盛り合わせは、キュウリとヨーグルトとかクリームチーズと何かとかで、終盤になると混濁しがち。
 あと、やたら人気のポテトのソテー、バターとガーリックとディル、が美味い。
 トマトもシンプルに美味い。
 やっぱ素材がいいんだなあ。 

・ランチでいただいた、スープ屋さんのフィッシュスープ。ブルガリアはシーフードが鬼門という話は聞く者の、さすがに出汁系が切れたまま長く続くとつらいので、こういうなんてことないところで地味に補給。

・宿での半自炊食は、スーパーの黒いパン、チーズとハム、マヨネーズ系サラダ、ミニトマト。朝の酔い覚ましには持参のチゲスープ。

・そして今回の滞在で最大のヒット賞が、イオン化したセントラル・ハリ市場のパン売りケースにあった、デニッシュ生地のシナモンロールをへにゃりと斜めにつぶしたような特徴的な形のパン。

これが甘みといいシナモンみといいバターみといい絶妙で、最終日に買って日本まで持って帰ってきたくらいの気に入りさ加減で、これなんて言うの?と懸命に「ブルガリア シナモンロール」的なキーワードで検索するんだけど、まったくもって見つからず。最終的に、くしゃくしゃになったスーパーのレシートをひとつひとつ並べ、どれがそれともわからないんだけど1行1行キリル文字をスキャンして行き、最終的にたどり着いたこのパンの名称が。

Franzbrötchen – Wikipedia
https://de.wikipedia.org/wiki/Franzbr%C3%B6tchen
https://x.com/GermanyTravelJP/status/951636848601788416

 ……え、ドイツ・ハンブルクのシナモンロール??
 ……ああ~、これ、セントラル・ハリに入ったドイツ系資本のスーパー(Kaufland)で買ったから、それでかあ。
 という話。次はドイツで会おう。
 (ていうか、ハンブルクちょいちょい行ってるはずなのに、不覚)


・その他、地元パンその1。甘みを求めて、若めパン屋でドーナツ生地を硬めに揚げたちっちゃなクッキー様のやつ。

・地元パンその2、巻いた薄い生地の中に、ポルチーニマッシュルームの具が詰まったの。

・地元パンその3、同じく巻いた薄い生地の中に、シンプルにチーズとベーコン。

・ご当地定番スイーツのロクム。ロクムはデンプンと砂糖でつくられた、めっちゃ甘い求肥のようなもので、そもそもはトルコのお菓子なんだけども、ブルガリアでも「うちとこのお菓子」的な存在になってて、空港の土産屋でもそのへんのスーパーでも常にあるという感じ。ブルガリアのお土産としてはバラの香り味のロクムというのが有名、というか強烈で、ロクムってあのバラの?と思ってしまいそうになるけど、実際にこちらで売ってるのを見ると、フルーツとかナッツとかレーズンとかいろんなタイプのやつがあって、いろいろと楽しめる。ただやっぱり自分にはバラの香りエキスはちょっと、という感じで、さらにちがう花の香りエキスのもあったりするんだけど、それを試してもやっぱりnot for meだった。結果、ナッツとレーズンが最高。

・で、肝心のというか”ヨーグルト”については、そこまで印象的に口にした想い出がなく終わってます、という感じ。スーパーで売ってるふつうのをいただいてみて、ふむ、というくらい。そもそもヨーグルト・リテラシーが低いので、スーパーで売ってるラインナップがどういうものかどころか多いのか少ないのかもピンときてないので、ブルガリア・ヨーグルト案件については保留としている。

●ビール

・ブルガリアはワイン処として有名のような話をよく聞いていたのですが、実はブルワリーによるビール造りもちゃんと盛んで、極私的定説「ワイン美味処とビール美味処棲み分け説」が覆されそうになってるのでした。それはさておき。

・Baron、クラフトビール兼ハンバーガーやさん。



宿所の近所、1ブロック半くらいなので便利遣い、というより、この店があるのを見つけてたからそこの宿に決めたという諸説あり。

1杯目のペールエールはJagerhofというブルガリアのビールやさんのやつで、ちょっと甘めで軽く感じるけどちゃんと旨いの。


2杯目はGlarusというこれもブルガリアのブルワリーらしく、ブラウンエール、穀物感の香りと甘み。


3杯目はNZIPA、ブルガリアのCometaというブルワリーのOkiOkiという、全てのNEIPAみがとんがって走り去ってしまわずに寄り添ってくれた感で、1杯目に吉。みたいにTwitterには書いてあるのですが、長旅後の入国初日の3杯目なので眉唾感想として。

なおタイミングを逃して、本丸で評判の高いハンバーガーをいただく機会を得ず。本丸が評判高いならサイドでも良いのでは、と、チップスを頼んでみたら市販のやつだった…ちょっと湿気てた…。ブルガリアのトラディショナルなやつと書いてあったサラミ(Lukanka)も、冷たいのをスライスして山盛りにしてデンっと出てきたので、むしゃむしゃ食べてた。

・その同じ店に、2度目は会議メンバーと2軒目として訪れたのですが、今度はフライデーナイトのためかたまたま音楽イベントだったためか、路上にテーブルが出されてて好き勝手やっていい感じになってたので、これ幸いと、好きに呑んだりしゃべったりUNOやったりしてる。



 この日は、NEIPAとNEPAとあり、NEIPAがNEIPAみしっかりでしかも見たことない濃い赤ブラウンだった、こんな色になるNEIPAもあるんだという驚き。そのNEIPAのあとで飲んじゃったNEPAは研ぎ汁、順序組み合わせは大事。

・エールハウスセンター(https://www.alehouse.bg/)というビール処。


 ここは地階に客席、1階に醸造タンクがあり、タンクから下の各テーブル席最寄りの柱に管が降りてきていて、そのままサーバとしてセルフサービスで客がビールを注ぎ、メーターが付いてるからその数値で精算されるという、ガソリンスタンド形式のやつ。これがEAJRSメンバーに前回(2019)から大人気だったらしく、みなではしゃぎながら呑んでる。

 肝心のビールは、ドイツビールでいうとヘレスっぽいのかな、苦味も若めで、さっぱりしてて、軽めなので、夏場に吉の遠慮なくごくごく飲めるやつ。300mlでだいたい400円くらいっぽい、まあ妥当。つまみ込みで好き勝手飲んで一人1600円程度、なかなかのインフラだなあと。ただし、もちろんそこから出てくるビールは1種類でしかないので、いくら美味くても1晩半もすれば飽きが来ます。

・スーパーで買える缶ビールにも、地元のやつとそうでないのといろいろありますが、一番「おっ」と思ったのがペットボトル入りのビールでした。ここはそれOKな土地柄なんだなと。味についてはさておき。

●その他
・リトアニア(2018年)はキリル文字オンリーで困る場面が多かったのですが、ソフィアは公共の場所ではアルファベットまたは英語表記が行き届いてるっぽく、また若い世代の人はほぼほぼ英語がふつうに話せる。ただ、スーパーや食品そのものの表記のようなものになると、大規模店でも厳しい。やっぱり、ローマナイズ大事でしょ、という気持ちになる。

・時差ボケについては、全体的に睡眠時間短めなものの、大幅に苦労するということなく過ごした感じで、早めに目が覚めてデスクワークしてる、くらい。機内では往復とも可もなく不可もないくらいの短めな睡眠。帰国後(西→東)も、戦々恐々としてたものの、特に苦しむことなく。

・まだ海外旅行リハビリが不充分なのか、セキュリティにあり得ないミス。大学内のATMにてクレジットカードでキャッシングした時に、カードを置き忘れるという痛恨。その後のスーパーでの会計時にやっと気付き、焦って駆け戻るとおっちゃんが出てきて「名前は?」と問われるというイベントが発生する。
・マスクをしてる人はほぼほぼいないんだけど、いないのにかまけて自分もなんとなくおろそかになってたら、地下鉄に乗り込んだときに初老のご婦人がしっかりマスクを付けておられたのを見て、ああ、自分、日和ってたなあ、と我が身を恥じた。
・スケジュールのタイミング的に、最終日が「宿をチェックアウト → 会議参加 → 数時間市内滞在 → 深夜便で出発」という感じだったので、採取日早朝の荷造り作業たるや、これは機内で使うから預け荷物には梱包しないけど、会場では邪魔だから、朝一でコインロッカーに入れる。これは会場で使うから梱包しないけど、空港では預け荷物に詰め直すし、昼には再度コインロッカーに入れる。これは最初から預け荷物として梱包。しかもどうやら朝から雨らしいから、あれとこれとを……などなど。荷造り作業の途中で軽食を挟むくらいに奮闘してた。
・そのコインロッカーは市内中心駅にあり、さほど大きくはないにせよ最新設備ですこぶる使いやすい案内と設計、時間帯によっては裏手に人がいるっぽい。割高だったけど重宝しました、よかったね。

・帰路については、疲労と睡眠不足とディレイに次ぐディレイで、特にこれといったことはなく。関空で荷物が出てくるのが異様に遅かったの、改装中のせいなのかいろいろ貧弱化してるのか、よくわかんない。

・おつかれちゃん

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