今日の「CA読み」メモ: 横浜国立大学、デジとしょ信州、デジタルシチズンシップ 他

○CA2060 – 図書館における「音」をどう包含するか / 中井孝幸
https://current.ndl.go.jp/ca2060

 図書館と音、と言われると論点がいろいろ出てきそうですが、論点を明確に定義した上で丁寧に説明されているのでわかりやすかった。
「「音のゾーニング」を断面方向で計画し、階段の位置をずらすことで、下階の音が直接上階へ伝わらない」

○CA2061 – 公共図書館におけるサイバーセキュリティ対策の実践方法について / 米田渉
https://current.ndl.go.jp/ca2061

 こちらはだいぶ概略的。

○CA2062 – 3つの情報リテラシー概念に関する検討:各分野における背景と問題意識に着目して / 飯尾 健
https://current.ndl.go.jp/ca2062

「情報リテラシーの概念的検討に際しては、それぞれの情報リテラシー概念間の差異よりも、どのような背景や問題意識から検討された結果、このような内容が導出されたかを考えることが要点」

○CA2063 – 横浜国立大学附属図書館ビジョンを策定して―大学図書館機能の再定義作業― / 大原一興
https://current.ndl.go.jp/ca2063

 全文が参照されるべきパターンのやつ。

○CA2064 – 動向レビュー:国内の大学における電子ジャーナルの転換契約をめぐる動向 / 小陳左和子, 山崎裕子
https://current.ndl.go.jp/ca2064

「多額の料金を出版社に支払い続ける状況は、第二のビッグディール問題を生み出している」
「国またはコンソーシアム全体ではなく、それぞれの事情・判断により大学単位で契約を行っている日本においては、大学間格差の拡大や、全体的な非効率性」

○CA2065 – 動向レビュー:欧米における図書館出版のいま / 設樂成実
https://current.ndl.go.jp/ca2065

 欧米の状況を踏まえて日本の図書館がどうなのか、どうあるべきかを論じているので、説得力がある。タイトルに「大学図書館」「学術出版」などが入っていたほうがひきつけよかったかも。

○CA2066 – 市町村と県による協働電子図書館「デジとしょ信州」のこれまでとこれから / 森いづみ, 鈴木康之, 奈良澤一恵, 棟田聖子, 平中和司, 文平玲子
https://current.ndl.go.jp/ca2066

 これも全文が参照されるべきパターンのやつ。
 複数のチームの担当者からそれぞれコメントを集めることで、多角的な視点からこの事業を紹介することに成功しており、全体像が把握しやすくなっていて、非常に良かった。
 ベストプラクティスとしての長野は引き続き注目。

○CA2067 – デジタル・シティズンシップを担う公共図書館 / 豊福晋平
https://current.ndl.go.jp/ca2067

 世界的な文脈での定義と必要性、をふまえて、国内の公共図書館における課題、という整理のされ方なので、とてもわかりやすく、全員必読でお願いします。

「施設面以上に、デジタル・シティズンシップ教育を公共図書館が担う上でのハードルとなるのは、おそらくコンセプトや運用上の課題であろう」

「我が国の公共図書館に望むこと」
「学校教育以外の接点の必要性」「図書館自体のデジタル化対応」
「学校教育ではデジタル活用に関する忌避度が依然高く、抑制・他律の指導がなされることで、デジタル・アクセス保証とは逆の「デジタル剥奪」が起こる懸念もある」
 →これについては、公共図書館がそれに輪をかけてデジタル忌避傾向に陥っていないことを祈る。

○CA2068 – 新しい「国立国会図書館サーチ」への統合に至る道のり / 川島隆徳
https://current.ndl.go.jp/ca2068

「2012年には業務システムのパッケージ導入に伴って、一時OPACもその製品(ExLibris社のAleph)の機能で提供することになった(NDL-OPAC)。しかし、国立図書館としての業務・サービスとパッケージ製品の乖離が大きく、今後のサービスの展開の障壁ともなりうることから、改めて基幹業務システムのフルスクラッチ開発を行った」

 技術的にはそうだったとして、じゃあそれは、NDLの事業方針自体とどうかかわってきた結果であるのか、どう位置づけられるのか、今後位置づけられていくのか?が説明されたい。
 註釈が少ないのでロストになる人は多そう。

○CA2069 – 動向レビュー:ニューロダイバーシティと図書館サービス―自閉スペクトラム症者の包摂と展望― / 下山佳那子
https://current.ndl.go.jp/ca2069

 日本における現状として、「神経発達症のための図書館サービスというと、知的発達症やSLD、中でもディスレクシア(読み書き困難)への対応の検討が中心であり、それら以外の神経発達症については、管見の限り、あまり論じられてこなかった。また、ASDへの対応と銘打たれていたとしても、DAISYやLLブック等の読みやすい資料の用意が中心」
「ニューロマイノリティへの配慮は図書館だけでなく、ミュージアムや映画館等の様々な場で検討されているため、施設や分野の垣根を超えた、知見の共有も役立つ」

○CA2070 – 動向レビュー:ラーニングコモンズの評価方法を考える / 岩﨑千晶
https://current.ndl.go.jp/ca2070

 大学内の各機能各立場と多様に接続するようなラーニングコモンズを、それ単体で評価することの意味がどの辺にあるか、という疑問がのこる。(いや、逆に”だからこそ”なのかも)

○CA2071 – 動向レビュー:学校・学校図書館における読書活動―2011年から2024年まで― / 足立幸子
https://current.ndl.go.jp/ca2071

 デジタル読書は”今後の”課題なんだろうか、という疑問ものこる。長野報告のグラフと合わせ読んで特に。

続・ネットが無かった30年前の学生はどうやって勉強してたのか、という想い出がたり 情報環境編

 前半はこちら;
 https://egamiday.sakura.ne.jp/egamiday3plus/20240820/318/
 その続きのよもやま話です。
 

●ワープロをくくって運ぶ

 当時は、学生の身分でもがんばってバイト代を貯めればワープロを買えたくらいだったので、自分もがんばって買いました。ワープロ専用機というやつですね、でっかくて重くて画面が小さくて、データはフロッピーディスクに保存する、という。
 まず、でっかくて重いので、図書館や教室には持ち込めないです、モバイルではない。基本的に、紙でコピーとったりノートに書いて持ち帰ってきたものを、家で入力するためのツールです。前述のように、論文情報を収集して、その書誌データをワープロのデータベース機能の中に入力するんですが、そのリストを、大学へは持ってけないけど図書館やどこかやで参照はしたいから、自宅でリストをインクリボンで紙に印刷して、その紙束をカバンに入れて持ち歩いてました。註釈が永遠に要りそうですが、ワープロ専用機のデータを保存したフロッピーディスクを、大学のパソコンに入れて読めるような互換性はないし、そもそも大学に学部生が自由に使えるパソコン自体がまだ稀少だし、肝心の講義室や図書館では使えないわけなので、データ入力したあとでもメインのメディアはまだ全然紙のままでしたよね。
 あと夏休みに1ヶ月くらい帰省するのに、そのでっかくて重いワープロを持って帰りたくて、ロープでくくって肩紐をつけて、18キップで鈍行列車に持ち込んで12時間かけて運ぶ、という苦行もしてました。じゃあなんで宅配にしないのかと言えば、そんなところにお金かけれるなら18キップで帰省しないです。
 そのワープロも、でもやっぱり当時はまだ過渡期の終盤くらいの感じで、学部によっては卒論はワープロ禁止、先生によってレポートはワープロ禁止、みたいな話もまだちょいちょい聞いてました。さすがに自分が卒論を出す頃にはあまり聞かなかったかもしれませんし、ていうか、これはなんとなくの印象ですが、文学系の先生たちって文系の他の分野の先生よりもワープロやパソコンを導入するのに抵抗ない、むしろ早いほうだったんじゃないかという気がします。自分の文章を自由に活字化して自由に印刷できる、って文学系には大好物のツールだろうと思うので。
 とはいえ、全学生や全先生がワープロを持ってるわけでもないので、授業で配られるレジュメ(先生作のも学生作のも)はまだまだ手書きだし、もっと言うと文学系のレジュメだと本文テキストや参考文献を紙でコピーして該当箇所をハサミと糊で切り貼りして作るので、そこにワープロの文字までわざわざ印字してから切り貼りするのはめんどくさく、結局はだいたいのレジュメが手書きになりますよね。そんなんよう作ってたな、マジでいま便利すぎる。

 なお(ワープロ専用機ではない)パソコンのほうについては、小・中でMSXを使った時期があって以降、久しくご無沙汰でしたが、ちょうど1993年くらいに学内にパソコンを置いてある教室ができて、文学部の学生であっても限定的にIDを発行してやる、そこの教室で使わせてやる、週1の情報の授業で使い方を教えてやる、みたいな、いまから考えるとけっこう出し惜しみしてるなという感じの環境があって、そこで、読みづらいちまちました画面とリアル脱出ゲームのようにわかりにくいユーザインタフェースで使える電子メールというのがあって、週1で遠隔の理系の友人とメール送りあいとかしてました。なんかもう思い出すだけで肩が凝るようなパソコン体験で、結果として得られるのは牛の毛ほどのリテラシーですけど。
 それから2年後くらい(院生)に、所属研究室のWindows95パソコン(共用)に入ってる一太郎で、修論書きました、その頃になるとフロッピーディスクを持ち歩けるようになるという(注:自宅のワープロとの互換性はもちろんない、あれどうしてたんだろう??)。さらにその2年後くらいに、図書館の閲覧スペースに自由にインターネットが使えるパソコンが数台置かれ、なんか年中コミケやってる(註:好きなことを執筆してパブリッシュできる環境、の意)ようなところなんだな、という認識のもと、あ、たぶん自分はいち早く”あっち側”に行かなければならない、という本能的な直感を得て、その翌年くらいにとっとと就職して得たサラリーでWindows機を購入し、自宅から接続したインターネットでホームページを発信するに至る、というのもこれも完全に別の話ですね。

●歩くKansai Walker・人間食べログ

 なんだっけ、そんなふうにパソコンもインターネットもまだまだ夜明け前で、携帯電話も平野ノラと大差ないくらいだったので、大学での勉強だけでなく、日常生活もデジタルとはほど遠い感じだった、という導入です。

 そういう感じだから、カバンには常に本が何冊か入ってる、これはいまも入ってますが、新聞・雑誌の類こそ当時は必ず入ってたという感じですね。新聞なんか、当時は貧乏下宿生であっても当たり前のようにお金払って取ってたし、いまスマホ見るような隙間のタイミングで当時見てたのが新聞・雑誌だったなと思うと、まあそりゃ売れなくなりますよね。
 空き時間に触れるメディアとして、さほど音楽を聴く習慣のなかった自分でさえも、レンタル屋さんでCD借りてカセットにダビングして流してるということはなぜかやってて、そういう時に行くのがツタヤだったんですけど、そういう習慣もなくなっちゃったしみんなもレンタルビデオは配信で見るようになったから、そりゃツタヤさんも図書館商売に手を出すしかしょうがなくなるよな、という感じです。
 あと音楽だけでなく、常に耳寂しい「ながら族」だったので、たしか安い携帯ラジオとイヤホンをカバンに常備してたような気がします。中高からラジオはよく聞いてたし、大学の頃もちょうどαステーションの開局が91年で家では流しっぱなしだったはずなんですけど、これもいつの間にか聞くことがなくなったのとインターネットの登場とに因果関係があるかどうか、ちょっとよくわかりません。

 あとはカバンに京都市内の地図を常備してた記憶があります、お寺とかよく行ってたし、それこそよその大学や図書館行くのに必要なので。それとよく使う駅の時刻表とか、市バスの路線地図。
 それからアドレス帳の類も必ず入ってる、これが無いと友人と連絡取れないからですけど、でもその番号も自宅/下宿の電話番号だし、当時はまだ留守番電話機能がある友人とない友人といたりしたから、連絡が取れたり取れなかったりするし、大学で会った時に「何曜日の何時ころ家に居る?」って確認したり、親しい友人なら取ってる講義やバイトやサークルの曜日時間は覚えてて、居そうな時間に電話するとかですよね。
 そんなんだから、どこかへ行く待ち合わせにしても、数日前に会った時に予定をしめしあわせておく、もし待ち時間にあらわれなかったらこうする、何分までは待つとか、先に行くとかまで決めておく。事前に決めずに人に会おうとしたら、とりあえず下宿に行ってみて、居たら会えるし居なかったら会えない、まあそんなもんですよね。
 どこかへ行くっていうのも、どこに何があって、何駅から何バスで、何時から何時までやってていくらかかる、みたいなことは全部事前に本や雑誌(ガイドブックやぴあやなんとかウォーカー的なの)で調べておかないといけないか、公衆電話から電話番号案内で番号聞いて、電話かけてそれを聞く、とかいう感じだったと思うんですけど、そういう時、コミュニティというか連れ立ってるグループの中にひとりかふたり、そういう情報にやたら詳しい人とかがいるわけですよね。どこそこでどういうことができて、どういうイベントがあって、どうやって行ったらいい、みたいな人がいると、人気出るというか頼られますよね、歩くKansai Walkerやあって、いやウォーカー言うてるやん、的な。
 あるいは人間食べログみたいな人もいて、サークル終わりや勉強会終わりにどっか行こうってなると、近所の喫茶店・定食屋・居酒屋について、あそこは何時からあいてる、何曜日定休、この時間なら空いてて、何人用の席があるから、いまいる人数が入れるはず、って言いながら、カバンから手帳取り出して公衆電話から店に電話して、あ、じゃあ10分後くらいに行きます、っていう。
 スマホが無い分、そういうことができる人とできない人では行動の仕方がちがったんだろうなと思います。

 情報収集する方はもちろんですが、発信する方はもっとそのできるできないの差はえげつなかったかもしれません。
 とはいえ、当時学生が何かを発信するというと、サークルや勉強会の広報や情報発信くらいでしょうか。もちろんネットもSNSも無いから、基本はビラを大量に印刷して、大学内の壁という壁に貼りまくり、教室という教室の机に置きまくる。壁、っていうか掲示板があるにはあるはずなんだけど足りるわけがないから壁に貼るんですけど、その壁にも他のサークルがすでに貼ってあるのを、その上に重ねて貼る、そうすると後日通りかかるとよそのサークルがその上に貼ってあるから、またその上に貼る。そういうのを、今度は清掃員の人が大量にはがして捨てていくので、空いたところにまた貼っていく。それの延々繰り返し、SDGsも何もあったもんじゃないですけど。
 あとは自主シンポや演劇の類はだいたい立て看で広報されてましたし、生協書籍部とか近所の定食屋・喫茶店にビラを貼ってもらったり置いてもらったり、食堂に三角柱(厚紙を4つ折りにして三角柱をつくって、側面におしらせを書く)を置かせてもらったり、とにかくネット以外のありとあらゆるアナログメディアを駆使してという感じですが、検索してヒットするというわけではないので、伝えたい相手がふだん見る場所通る場所はどこだろうというのを探しては、そこに情報を投げて行く、という感じです、そういう意味での発信リテラシーは当時も必要だったんだなと思います。

 あと、校舎内にフリーの黒板があって、いろんなサークルや勉強会が、次の例会は何月何日何時からどこどこ教室です、みたいのを自由に書きこんで、通りがかりにそれを見て確認するし、なんなら、へー、そんな勉強会あるんだ、催しあるんだ、って興味持って顔を出しに行く、みたいなこともよくありました。
 そういうところに、いまでは考えられないですけど、代表者や世話人の自宅の電話番号とか書いてあるんですよね、でも別にそんなのふつーだったと思います。壁に貼ってあるビラにしたって、連絡先たる一学生の下宿の電話番号(注:たぶん自宅生はさすがに忌避してたと思われる)が書いてあって、なんなら勧誘目的のビラだと、ビラの下の端っこに細かく縦に切れ込みを入れて、切れ端のひとつひとつに名前と電話番号が書いてあって、要は興味ある人はそれちぎって持って帰れるというやつですね。そんなのは学内の至る所に貼ってあり、バイトのお知らせとかもそういう感じで貼ってあって、あたしがお世話になった編集プロダクションのバイトもそうやって見つけました。いまだとQRコードとかになるんでしょうね。

●結論:インターネット万歳!

 総じて、情報を探す/入手するのが、困難だったり時間かかったり不安定だったり、あるいは接する情報が限定されてたり。とは言え、こういう話になると、現代と違ってネット情報が氾濫しておらずフェイクもなく厳選されていたのでは、ということになりがちかもしれませんが、厳選されているということとそれが正しいかどうかというのは別の問題であって、接する情報が限定されていると正しいかどうかの検証すらできないので、そりゃまあ、入手できるなら多くて多様であるにこしたことはないです。

 ただ違いがあったとするなら、なんとなくですけど、当時は、情報がまちがってたら、まちがってたね、で終わってた気がします。わからなかったら、わからなかったね、連絡取れなかったら、取れなかったね、会えなかったら、会えなかったね、で。もちろんそれは日常生活や学生の勉強レベルの話ですけど。卒論や修論くらいだと、どこそこのあの本やあの資料は確認できてない、ってなった時に、あの本は手に入りにくいからね、あの資料持ってるあそこは閲覧厳しいからね、という時代から、デジタルアーカイブでもNDLデジタルコレクションでも見れるのになんで確認してないんだ、っていう時代に、いやもちろん見れるほうが圧倒的にいいんだけど、一方で情報が入手できないことやそれに付随するトラブルに、そこまでシリアスでもカリカリもしてなかったような気はします。それはたぶん、「これで探せたことになるのか」「これで見つからなかったと言えるのか」がわからないというか、わかりようがなかったので、適当にあきらめてたっていうことなのかなと。
 家電なんか、だいぶ適当に買ってましたよね、店に行ってそこに置いてあるものをそのまま買って帰ってくるくらいだったのが、いまだと山ほどある機能をネットで見比べて、100円なり1000円なり安いものを必死に探して、ってどうしてもなっちゃう。
 探しやすさ、見つかりやすさ、アクセスしやすさはいまのほうがもちろんいいんだけど、反面、見つけられなかったとき、まちがってることに気づけなかったとき、気づけなかった人の責任になる、しかも大量のゴミ情報をふまえたうえで、っていうんだったら、そのあたりの世知辛さはかつては無かったのかもしれない。
 参照:「現代人って、諦めるのが難しい。」( https://note.kishidanami.com/n/n97e94cc7ea07 より)

 とは言え。
 ネットが無かった頃のマシだった点を無理くり探し出したとして、↑たぶんこれだけです
 あとはもう、ね。
 いまの、情報が多くて多様で、メディアも複数あって、ツールは探しやすく見つかりやすいほうが、圧倒的に良く、それを知ったからには30年前の状態のほうが良かっただの戻って良いだの、口が裂けても言えないです。
 何か調べようというときに、図書館が開くまで待つとか、電話かけて聞くとか、カード目録や国史大辞典を全部見るとか、もう絶対無理です。全部見るとセレンディピティが起きる、っつったって、そんなのは不良がたまに見せる優しさが素敵に見える、程度の与太話に過ぎないわけです。Googleマップ無しでは、海外出張どころか国内旅行すらいまさら無理だと思います、太川陽介じゃないんだから。
 カバンに入れる本だって、学生の頃はお金がないから文庫になるのを待ってたものを、いまではスマホのKindleで読めるようになるまで待ってます、文字サイズ大きくしないと、老眼がきついので。そういえばあのころ、年かさの先輩のアドバイスに「研究を仕事にするつもりなら、論文のコピーはB4に拡大しておいたほうがいい、高齢になって読むのがつらくなるから」というのがありましたが、まさかその数年後にはPDFで自由に拡大して読めるようになるとは思いませんよね。

 というわけで、デジタル最高!インターネット万歳!、というお話にとりあえず今日のところはしておきます。

今日の「CA読み」メモ・夏の誓文払い: 地域映像、舞台演劇のアーカイブ、江北図書館、文化財データリポジトリ・文化財オンラインライブラリー 他

・E2661 – 豊かなコミュニティのための公共図書館サービス(米国)
https://current.ndl.go.jp/e2661
「報告書では特に、40.8%の図書館が非公式ながらも行っている「食料不安の改善」に向けたサービス(E2602参照)について言及している。フードバンク等の地域団体と提携し、図書館を拠点に無料の食事キットを配布する取組等を紹介している」

・E2663 – 第88回IFLA年次大会目録分科会<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2663
「現存の生成AIを目録作成に転用するのではなく、目録作成に特化させたAIツールを開発するのが望ましい」

・E2665 – 「市民活動資料」所蔵3館による合同シンポジウム<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2665
「市民アーカイブ多摩は、市民が運営するアーカイブとして、資料を作る人・整理する人・使う人が集い、提案し、話し合いながら作っていく公共空間」

・E2667 – SPARC Japanセミナー2023<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2667
「SPARC Japanセミナー2023「即時OAに備えて:論文・データを「つかってもらう」ためのライセンス再入門」「当日の講演資料や動画はSPARC Japanのウェブサイトにて公開されているので、詳しくはそちらを参照されたい。」

・E2668 – ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DCMI2023)
https://current.ndl.go.jp/e2668
「メタデータをシンプルに保つことの重要性…メタデータの項目を増やして過剰に詳細化するのではなく、リンクトデータによって、利用者が必要な時に必要なデータを参照できるかたち

・E2669 – デジタル時代のオランダ国立図書館の挑戦<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2669
「図書館が社会的な価値を提供し続けていくには、一機関としての成功だけを考えるのではなく、連携して社会的な課題に取り組むことで、一機関では達成できない成果を実現」

・E2671 – 安全で包摂的な図書館サービス運営の実践ガイド(英国)
https://current.ndl.go.jp/e2671
「例えばコレクション管理の場合、公共図書館は利用者のニーズに対して価値判断をせず、多様な情報や意見、アイデアへの自由なアクセスを提供することが最も重要となる。そのため、時には過激とされるような主張が書かれた資料や時代遅れとされるような資料を提供することもある。それらの資料の扱いや、知的自由の保障という図書館の理念と資料を提供することによる地域社会への影響について、場合によっては地域の人々と共に協議し、決定しておくことが求められる。そしてその決定は文書化する必要がある」

・E2673 – ドーナツ・プロジェクト2023シンポジウム<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2673
「2023年12月13日、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館主催により、シンポジウム「ドーナツ・プロジェクト2023―舞台芸術に携わる人のためのアーカイブガイドブックつくりました―」」
「米国演劇のアーカイブを支援する団体American Theatre Archive Project(ATAP)発行による演劇アーカイブのマニュアル“Preserving Theatrical Legacy”を2022年度に和訳し、本事業のウェブサイトで公開した。しかし、興行形態や創作過程が米国とは全く違う日本の舞台芸術業界のアーカイブ活動では、そのまま参照することは難しい。そのため2023年度には、日本の舞台芸術アーカイブに特化した手引書を作成した」
「これまで舞台芸術界では、一つの作品や公演に関する資料が多岐に渡るため、それらを残すことに注力してこなかった」
舞台芸術に携わる人々が作品やその創作過程などを「残す」意識を持つように変化していく必要があること、そのためには本事業で作成したガイドブックや権利処理などの知識を提供する場が必要であること」

・E2676 – 「鳥取県立鳥取西高等学校デジタルコレクション」の公開
https://current.ndl.go.jp/e2676

・E2682 – いしかわデジタルアーカイブ講座&ディスカッション<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2682
「にいがたMALUI連携・地域データベース」「新潟大学が地域の個人や組織と連携して発掘した映像メディアをアーカイブした「地域映像アーカイブ」」
デジタル化によりこのような映像資料などが実は膨大に存在することが顕在化し、地域資料の活用の在り方が変わっていくのではないか」

・E2684 – 脚本アーカイブズシンポジウム2024<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2684
「司会の吉見氏はアーカイブを地域に根付かせる重要性を「祭り」に重ね、文化の継承こそアーカイブの重要な仕組みではないかと結び」

・E2685 – Z世代・ミレニアル世代の図書館利用と読書事情(米国)
https://current.ndl.go.jp/e2685
「米国デジタル公共図書館(DPLA;E2188参照)が運営する図書館向けの電子書籍販売サイト“Palace Marketplace”(E2432参照)で、Amazon PublishingやAudibleのコンテンツへのアクセス権を購入できる」

・E2690 – 「JATDT舞台美術作品データベース」の公開とその意義
https://current.ndl.go.jp/e2690
「終戦直後の舞台美術家は、沢山の資料・書籍を残してきた。しかし、約30年前、当時大学生であった筆者は、大学の図書館以外でこれらの情報を探し出すことが出来なかった。現在は教職に就いているが、学生から、「舞台美術に関する情報がない」「どう勉強したら美術家になれるのかがわからない」「調べてもほとんど出てこない」と常々言われてきた。インターネットは進化したが、アナログ要素の多い舞台美術は、この30年間あまり進歩してこなかったように感じる」

・E2692 – 図書館を未来につなぐ江北図書館の活動<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2692
 全編勉強になる話

・E2693 – 京都の文化と生物多様性:標本のデジタル化の意義<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2693

・E2695 – 「これからの地域資料データの継承・共有を考える」<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2695

・E2698 – 加西市立図書館における「加西STEAM」への取組
https://current.ndl.go.jp/e2698
「STEAMのA(芸術・リベラルアーツ)を重視することを心がけてきた。それは、図書館のイベントだけでは本格的な技術や知識を習得することは難しいため、できるだけ感性に訴えかけられる内容にし、一度の機会でも印象に残るようにする」
家庭でも学校でも満たすことのできない好奇心を満たせる場所が必要なのではないか。そうした要求に応え、「ここにくれば面白いことができる」という場所でいられるように」

・E2699 – データ再利用性と論文アクセス性の向上に向けた奈文研の取組
https://current.ndl.go.jp/e2699
奈良文化財研究所・高田祐一
「奈良文化財研究所(奈文研)では、2024年1月に「文化財データリポジトリ」を、また同年3月に「文化財オンラインライブラリー」を全国遺跡報告総覧(以下「遺跡総覧」)のウェブサイト内で公開した」
「調査や論文を単位とするデータセット(調査時の計測データ、写真や論文に掲載する図面、3次元データ等)を登録する」「3次元データをそのまま扱うことで、情報の欠落なく貴重な調査成果を新たな研究観点で再利用できる」「各データは、個別に利用ライセンスが設定され、ダウンロードできる」
「文化財オンラインライブラリーでは、論文を掲載できる。文化財データリポジトリに登録したデータセットを読み込むかたちで、論文にデータを利用できる」「PDF形式ではなくWebページ化することで、検索エンジンから劇的にアクセスされやすくなる」「ウェブページにて公開することで組版作業は不要になる。また登録作業がウェブ画面で行われるため、組版等のDTPスキルがない人でも登録が可能になる」「データごとにID管理するため、データ自体への引用を可視化できる」

・E2700 – 英国図書館へのサイバー攻撃に関する報告書
https://current.ndl.go.jp/e2700
「早期に従来の状態に戻すこととセキュリティ向上のための変更との間に生じる齟齬のリスク、技術部門のスタッフの人員不足等のリスク」

・E2701 – 第19回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2701
「レファレンスサービスでは、答えを探すことを中心に考えてしまいがちであり、それはAIを利用する際にも同様である。しかし、「学ぶ」というのは「答えのないこと」を追究することであり、レファレンススキルについても、そうした「分析」にまで踏み込んだスキルが求められるのかもしれない」

1 2 3 4 5 6 17