「海外の日本研究と日本図書館」に関する2024年5月~12月の動向レビュー — デジタルアーカイブ編+日本資料編 ( #本棚の中のニッポン )

■デジタルアーカイブ

●NIJL-NCC/CDDP Digitization Grant Program

 国文研とNCCによる共同プロジェクトで、北米の機関が所蔵する日本資料(近世以前)のデジタル化を支援するためのパイロット助成金プログラム。3年間のプログラムの第1弾(2024-2025)。デジタル化後は国書データベースに収載される 。

・「Comprehensive Digitization and Discoverability Program: 2024-2025 NIJL-NCC CDDP Digitization Grant Program」(NCC)
https://guides.nccjapan.org/cddp/nijl-ncc/digitalgrant
・北米日本研究資料調整協議会(NCC)と国文学研究資料館(国文研)、北米の研究機関が所蔵する日本語の古典籍資料のデジタル化に向けた助成プロジェクトを開始 https://current.ndl.go.jp/car/221590

 第1弾(2024-2025)の採択は以下の3件。

・2024-2025 NIJL-NCC/CDDP Digitization Grant Program Recipients
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/2024-2025-NIJL-NCC/CDDP-Digitization-Grant-Program-Recipients
・北米日本研究資料調整協議会(NCC)と国文学研究資料館(国文研)の共同プログラム“NIJL-NCC/CDDP Digitization Grant Program”、2024-2025年の採択機関を発表 | カレントアウェアネス・ポータル

Oberlin College
Project title: “Digitizing Japanese Woodblock-printed Illustrated Books at Oberlin College Libraries” (90 titles in 210 volumes in 6,601 leaves)

University of British Columbia Library
Project title: “UBC Library Japanese Rare Books Digitization Project” (30 titles in 202 volumes in 9,341 leaves)

C. V. Starr East Asian Library, University of California, Berkeley:
Project title: “Japanese Manuscripts Collection at the C. V. Starr East Asian Library, UC Berkeley: A selection of the most academically important titles” (111 titles in 433 volumes in 22,421 leaves)
Estimated cost: $29,996

■日本資料

・「移民の歴史、資料をアーカイブ化でデジタル公開 和歌山県立文書館 [和歌山県]」(朝日新聞) https://www.asahi.com/articles/ASS2V71QQS2TPXLB001.html
・「和歌山県立近代美術館と全米日系人博物館は姉妹ミュージアム提携を締結しました」

和歌山県立近代美術館と全米日系人博物館は姉妹ミュージアム提携を締結しました

・「Exploring Heian Cultural Revival in Edo through the Jūban Mushi-awase Emaki at the Honolulu Museum of Art」
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Exploring-Heian-Cultural-Revival-in-Edo
・「十番虫合絵巻」
https://juban-mushi-awase.dhii.jp/index.html
「ホノルル美術館所蔵リチャード・レインコレクションの逸品『十番虫合絵巻』の原本の画像・校訂本文・現代語訳・英訳、作品と参加した人々についての解説」

・「Japanese Studies Spotlight: The Japanese Paper Film Project: Preserving the History of 1930s Kami Firumu」
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Japanese-Studies-Spotlight-The-Japanese-Paper-Film-Project-Preserving-the-History
「He then showed me a very old, small cardboard box and inside was a truly unusual object–a wound up film strip that was not celluloid film. Instead, it was a film printed on paper. Called kami firumu 紙フィルム (lit. “paper film”), it had framelines and perforations like a celluloid film but the paper was opaque rather than transparent.」

・「Japanese Studies Spotlight: Exploring Early US-Japan Encounters at the Library of Congress」
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Japanese-Studies-Spotlight-Exploring-Early-US-Japan-Encounters-at-the-Library-of-
「in March 2024 the Library of Congress launched a new digital collection, Pacific Encounters in Nineteenth-Century Japan(https://www.loc.gov/collections/pacific-encounters-in-nineteenth-century-japan/about-this-collection/). The Pacific Encounters collection features rare materials that document early Japanese interactions with the United States and European countries like Britain, France, the Netherlands, and Russia.」

・「Japanese Studies Spotlight: Exploring Buddhist Manuscript Culture through the Special Collections at Carleton College」
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Japanese-Studies-Spotlight-Exploring-Buddhist-Manuscript-Culture
「The myth that a teaching library facilitates teaching (using English materials), but not research (using non-English materials, including the Special Collections) creates an obstacle to learning. Breaking down this myth by engaging with our collections in classes opened up many exciting possibilities. Perhaps the most important of all is to transport students to the Special Collections room. This may sound simple, but the effect is profound. 」

SARLIB・図書館メール送信サービス、参加のための極私的要件まとめ

 もう始まることはないんじゃないかとすら思ってた図書館業界のサグラダ・ファミリアこと、SARLIBの図書館等公衆送信補償金制度、つまりは図書館から文献複写をメールで送るかわりに補償金を払うよ、という制度が、ようやっとのことで参加館登録の受付が始まった(2025/1/22)とのことで、これを記念して、参加登録してこのサービスを始めるには何が必要で何をしなきゃならんのかというのが、あちこちのわかりにくい文書にわかりにくく散らばっててわからないもんだから、ちまちまと関連文献から要件を拾い集めて自分勝手にまとめたメモを、せっかくだからネットの海に放ちてみるというものです。あくまで極私的に、うちとこにとって必要そうな肝になりそうなところのみをまとめたものなので、役に立つ、立たない、公式を要再確認、あたりはご自身でお願いいたします。

●図書館等公衆送信サービス 実施要件のまとめ(202409-)
https://docs.google.com/spreadsheets/d/107qNAPgsCTBXrsn4xkO0Jh8x6aEpZFSAXidhGqx91cg/edit?usp=sharing

 なお、以下、文献リストとして。

・SARLIB 図書館等公衆送信補償金管理協会
https://www.sarlib.or.jp/

・文部科学省>社会教育>図書館の振興
https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/index.htm
令和5年度 子供の読書活動の推進等に関する調査研究(図書館資料のメール送信等サービスのための実証的調査研究)(令和6年3月)

・日本図書館協会 >> 図書館等公衆送信サービス >> 〈2024.6.20公表〉の項
https://www.jla.or.jp/Default.aspx?TabId=1045

・図書館等公衆送信サービスに関する関係者協議会. 「図書館等における複製及び公衆送信ガイドライン」. 2023.8.30修正
https://www.sarlib.or.jp/wp-content/uploads/2023/08/31guidelines230830.pdf

・一般社団法人図書館等公衆送信補償金管理協会. 「図書館等公衆送信補償金規程」. 2023.3認可
https://www.sarlib.or.jp/wp-content/uploads/2023/05/sarlib-hoshokinkitei.pdf

・特定図書館等分科会. 「図書館等公衆送信サービスに係る特定図書館等及び利用者に求められる要件等について」. 2023.5.17修正
https://www.sarlib.or.jp/wp-content/uploads/2023/05/20230525_02-4_kyogikai03_tokutei.pdf

・「図書館等公衆送信サービスに関する関係者協議会 事務処理等スキーム分科会合意事項」2023.5.18修正
https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A/20230525_02-5_kyogikai03_jimusyori.pdf

・図書館等公衆送信サービスに関する関係者協議会(?)「図書館等公衆送信サービス実施要領」2024.3.15
https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A/toshokankoshusoshin_jisshiyoryo_240315.pdf

「図書館情報資源論」を考えるシリーズ(1): いまの”生シラバス”

●前置き

 司書科目としての図書館情報資源論(概論・特論)について、しばらくちまちまと考えたりまとめたりする、シリーズ的なもの、の最初の記事です。

 というのも、某学(某社)で兼業非常勤的に「図書館情報資源概論」「図書館情報資源特論」の高座にあがらせていただくようになってもう10年以上経つのですが、当然毎回内容のあちこちを更新しつつあたってはいるものの、何年かに1回くらいは、そもそもこの科目は何のためにあるのか、何を学ぼうとしているのか、他の科目との兼ね合いによって、いや、というよりは図書館業界全体、この社会全体における知識・情報のあり方の中にあって、どういう位置づけにあるんだろう、どういうはたらきをするんだろう、というようなことをあらためて考え直してみて、そこをアップデートしていかないと、パワポの字面表面だけちょこちょこっといじって投影してみせるようなことを”アップデート”とは言わんだろう、と。
 もちろん、それはとっくに文部科学省由来で定義されているのでは、なのかもですが、それこそ10年どころかそろそろ20年目の影がしのびよりそうな頃合いで、いつまでもおとなしく文言通りに受けとってはいられないので、極私的にでもジタバタ考えてみる、という一隅の試みです。
 かといって、教科書を編もうなどという内容的な総ざらえというわけではなく、枠組みやラインナップのについてというくらいです。また、それを大上段に構えてウンウンうなって考えてみてもいたずらに時間がかかるだけだし、それよりは随論随筆的に、こまぎれに言葉にしてみて可視化していったほうが、まだマシなんじゃないか、という思いもあって、折にふれちまちまとシリーズにしてみるというメモ的なものです。なので、その時々で思いつきを書き記し、これといってゴールが決まってるわけでもなく、あてどない感じで。

 なお、こういうblog記事はそういえば過去にもたまに書いたりしてたので、以下、そのリスト。
・人はなぜ「図書館情報資源概論」を学ぶのか: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/458716536.html
・「図書と雑誌」とは何か #図書館情報資源概論: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/475056966.html
・「災害と図書館情報資源」のまとめ(途中)メモ #図書館情報資源概論: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/478208719.html

●現在の”生シラバス”的なもの

 というわけで、まずは現在地確認、という。
 いま自分が、どういう内容・構成の講義を実際にやってるのかという、建前じゃない”生”のシラバスのような感じで。(注:「建前」ってなんだ?)

 直近・2024年度上半期でおこなった「図書館情報資源概論」「特論」の内容を、再整理するかたちで挙げると、こうなります。

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(事務的なこと)
・オリエンテーション
 …受講要領等
 …図書館情報資源概論/特論という科目について

(総論的な講義)
・図書館情報資源とは何か
 …図書館情報資源の多様性
 …図書館情報資源の実例

(情報資源の類型・特質)
・図書・雑誌
・古典籍資料(和)
 …基礎知識
 …取り扱い・資料保存
・マイクロフィルム
 …基礎知識
 …取り扱い・資料保存
・灰色文献
・地域資料・地域情報
 …郷土資料
 …行政資料
 …コミュニティ資料
 …住民参加
・学術資料・学術情報
 …学術研究の概要
 …論文・図書
 …電子資料
・インターネット情報
 …特質・技術等
 …参加型集合知
 …高度情報化社会
・デジタルアーカイブ
 …特質・技術等
 …ポータル・利活用

(情報資源の管理・取り扱い)
・出版・流通
 …産業・流通事情
 …委託・再販
・蔵書構築
 …収書の自由
 …収書方針・選書基準
 …実務
・蔵書管理
 …実務・技術等
 …書架・書庫
 …資料保存

(情報資源にまつわる理念と実際、その環境)
・図書館による資料提供の意義
・図書館協力と資源共有
 …相互利用・資源共有
 …NII・NDL
 …MLA連携
・著作権とオープン
 …著作権法
 …PDM・CC
 …オープンアクセス、オープンデータ、オープンサイエンス

(応用的な講義)
・災害と図書館情報資源
・冷泉家蔵書
・学校資料
・国立国会図書館のデジタル事業
・ユーザとアウトリーチ
・本棚の中のニッポン

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 文部科学省由来の定義が年月経ってるとはいえ、骨格がさほどかわるわけではないと思うので、その定義をふまえて自分なりに建てている2本柱が、「情報資源の類型・特質」と「情報資源の管理・取り扱い」です。ただこのメイン柱だけを断片的に認識したところで、図書館・知識情報・社会全体のあり方とどう接続するのかがわかってないと、その柱を活用できないと思うので、自分なりに「情報資源にまつわる理念と実際、その環境」という3本目の柱の必要性を感じ、限られた時間数の中にねじ込んでます。
 なお、このリストは内容的な分類上でまとめなおしたもので、実際の講義はこの順番でやるわけでも、この構成のままでやるわけでもなく、そこそこミックスしてます。たとえば著作権の話はデジタルアーカイブとセットで考えたほうが、著作権に前向きに取り組むことができる(注:それがどういうことかはよくわかりませんが)と思うのでそうしてますし、オープン云々の話は学術情報や地域情報やインターネット情報なんかに随所に散らばしてる感じ。

 応用的な講義も、いくつかは「概論」で取り上げる余裕がほしいのですが、おおむね「特論」の限られた受講者だけに伝えられるかどうか、という感じです。それでもせめて「災害と図書館情報資源」だけは概論でも伝えたく、なんとか半期15回の中で懸命に時間をつくって取り上げてきてたのですが、ドゥなウィークという謎の時間削減により、昨年は落ちてしまいました。今年はなんとか復活させたい。

 今宵はここまでにしとうございます。

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