今日の「本読み」メモ:『デジタル時代の図書館とアウト・オブ・コマースをめぐる著作権法制』

鈴木康平. 『デジタル時代の図書館とアウト・オブ・コマースをめぐる著作権法制 : 日本法における「絶版等資料」の再検討』. 勁草書房, 2024.
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784326404384

 ざっと読んだ抜き書きとメモ。

●20世紀のブラックホール問題
「1950年代以降、オンラインで入手できる資料は激減しており、20世紀のブラックホール問題がある」「20世紀のコレクションの複雑な著作権状況がデジタル化の取り組みを妨げているという文化遺産機関からの報告を多数」

●NDL図書館送信サービスの海外参加館問題
「海外からの参加館は、2023年10月時点でわずか9館となっている。参加館が増えない要因として、①「ユーザーが遊法行為をしないよう監視できる態勢を整えられない」」「②「申請に必要な提出書類の多さと複雑さ」」「③「複写サービスを提供できない」」
「外国の施設を対象とする図書館向け送信サービスは、受信地国の公楽を主に利用者として想定しており、当該施設が所在する国の著作権法が適用されると考えられることから、当該国の著作権法で複製が認められるのであれば、本来は複写サービスを提供することは可能なはずである。したがって、利用契約書で一律に複製を禁止する必要は必ずしもなく、弁護士資格を有する者の署名が求められる書類において、当該国で複製が認められるか否かの判断も合わせて行えばよいのではないか」
「このような著作物の国境を越えた流通に係る問題は、本来は各図書館で判断するような問題ではなく、国家間の協定などにより共通ルールを定めて対応すべき」

●現在の解釈・運用でいいのか問題、の種々
「「入手することが困難」を絶版等資料の核とする従来の理解から、「著作物の流通に権利者のコントロールが及び、かつ、権利者が利益還元を受けることが可能な状況」である、「通常の商業流通経路」での利用可能性を、絶版等資料の解釈の核として理解すべきである」

「商業戦略上の理由で一時的に絶版等資料に該当する場合には、無償での自由利用を認めてしまうと、権利者の不利益となる可能性がある。そこで、一時的放棄に対応するためには、権利者の不利益を考慮した何らかの措置を検討する必要がある。また、何らかの措置を講じることで、現在はストリーミングとプリントアウトに限定されている利用態様をダウンロードまで可能とすることや、関係者協議会の合意で限定されている適用対象となる資料の範囲を広げることに対する関係者の合意も得やすくなり、利用者の利便性を上げることができると考えられる」

「「拡大集中許諾+権利制限」方式の課題として、集中管理団体にライセンスを強制することができるか、という課題がある。そもそも、アウト・オブ・コマース著作物に係る制度が必要とされる背景にある「20世紀のブラックホール問題」において、何らかの措置を講じなければならないと問題視されている著作物は、「デジタル化やオンライン利用をするための権利処理が困難な著作物」である。そうすると、集中管理団体がライセンスを許諾しない、あるいは法外なライセンス料を要するなどして、デジタル化やオンライン利用ができない著作物が存在する場合、20世紀のブラックホール問題は解決できないことになる」
「日本は、音楽分野や映像実演分野を除いて集中管理率が低いと言われている」「少なくとも現在の集中管理の状況では、「拡大集中時諾+権利制限」方式の採用は難しい」

 →結果、著者はCDLモデル(Controlled Digital Lending)を推す、とのこと。

●ちなみにうちとこでは…
「日本では、絶版等資料に係る制度の運用主体はNDLに限定されている。
 ↑
<e>極私的にもっとも驚いたのはこの部分で、え、マジですか、だったらうちとこがほぼ毎日のように議論・運用している「著作権法第31条1の3」は何なんだろうなんですけど…

 

「海外の日本研究と日本図書館」に関する2023年12月~2024年4月の動向レビュー — Japan Past & Present、「A Picture Is Worth A Thousand Words」、コペンハーゲン図書館 他 ( #本棚の中のニッポン )

■AAS/CEAL/NCC 2024@シアトル

●CEAL
 https://www.eastasianlib.org/newsite/meetings/

・Navigating the Uncharted Waters: AI and East Asian Studies / Dr. Kwok Leong Tang (Lecturer of East Asian Languages and Civilizations, Harvard University)
https://www.eastasianlib.org/newsite/wp-content/uploads/2024/03/20240315_CEALPresentation_Tang.pdf
・Embracing Authenticity – More Scripts, Less Romanization? / Jessalyn Zoom (Chief, Asian and Middle Eastern Division, Library of Congress)
https://www.eastasianlib.org/newsite/wp-content/uploads/2024/03/NonLatinScriptInput-CEALCTP2024-FINAL.pdf
・AI Tools Applied to Metadata Enhancement and Manipulation / Professor Harada Takashi (Doshisha University, Japan)
http://www.slis.doshisha.ac.jp/~ushi/CEAL/ceal2024.pdf

●CJM
・A Workflow for Creating Digital Collections and Applying AI to Facilitate “Shared Reading” in Humanities Research
Ikki Ohmukai, Ph.D. (Associate Professor, The University of Tokyo) (Pre-recorded)
・Research Activities of the National Institute of Japanese Literature with a Focus on AI Utilization
Nobuhiko Kikuchi, Ph.D. (Associate Professor, National Institute of Japanese Literature)
・New Developments in Digital Services at the National Diet Library: OCR Text and Machine Learning
Toru Aoike (Librarian, Research and Development for Next-Generation Systems Office, National Diet Library)

●NCC
・2024 Open Meeting: Meeting Agenda
https://guides.nccjapan.org/2024openmeeting
NCC Community Survey : ”The Future of NCC” Summary Report Prepared by Matthew Hayes for NCC Open Meeting, March 14, 2024- Seattle
https://guides.nccjapan.org/ld.php?content_id=76074419
 今後のNCCの活動を議論する上でのアンケート、シアトルのCEAL2024で報告されたもの。
・Call for Volunteers to join the Envisioning the Future of NCC Task Force | H-Net
https://networks.h-net.org/group/announcements/20031600/call-volunteers-join-envisioning-future-ncc-task-force
 それを経てのタスクフォース呼びかけ。
 なお、NCC Newsletter (Spring 2024) も参照すること。

 egamiday3+ブログ用のメモ記事をゆる執筆中、またいつか。

■日本研究

Japan Past & Present
https://japanpastandpresent.org/jp
・「ジャパン・パスト&プレゼント開設のご挨拶」
https://japanpastandpresent.org/jp/news/announcing-japan-past-present
「日本の人文学を真にグローバルな研究領域として再構築するためのプラットフォーム」「UCLAと早稲田大学の共同企画である柳井イニシアティブ」「「研究者一覧」にプロフィールを作成し、またJPPの最新情報を受信」

●「日本研究の新たな可能性:環境・文化・社会」
・開催報告:コロンビア大学ー早稲田大学 国際ワークショップ「日本研究の新たな可能性:環境・文化・社会」 – スーパーグローバル大学創成支援「Waseda Ocean 構想」

開催報告:コロンビア大学ー早稲田大学 国際ワークショップ「日本研究の新たな可能性:環境・文化・社会」


 2024年1月12日・13日、早稲田大学国際日本学拠点とコロンビア大学との共催による。
「大学院生世代の領域横断的な論点や分析方法の広がりが顕著であり、文字通りこれからの日本文学・文化研究のあり方を探る機会となった」
・当日録画

・概要集
https://www.waseda.jp/inst/sgu/assets/uploads/2024/02/24370e7af5e5745d5e0cd8b9eecf4d08.pdf

●国際日本研究コンソーシアム
・「国際日本研究」コンソーシアムに海外会員が新たに加わりました|トピックス|国際日本文化研究センター
https://www.nichibun.ac.jp/ja/topics/news/2023/12/15/s001/

●その他
・国際日本文化研究センター『世界の日本研究2023』
https://nichibun.repo.nii.ac.jp/records/2000122
・奈良文化財研究所『海外から見た日本考古学の魅力』(2024)
https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/138613
・Language in Japan
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/lij/1/0/_contents
 日本語学会による『日本語の研究』の英文姉妹誌『Language in Japan』の創刊。
・柴谷 方良氏が第5回日本研究国際賞を受賞 | 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構
https://www.nihu.jp/ja/publication/nihu_magazine/098

■デジタルアーカイブ&デジタルヒューマニティーズ

●ハーバード・イェンチン図書館
・「Digitizing and Making Accessible the Rare Book Collection of Harvard-Yenching Library」Kuniko Yamada McVey(Japanese Studies Spotlight, NCC)
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Japanese-Studies-Spotlight-Digitizing-Rare-Book-Harvard-Yenching-Library
「Those Japanese “Rare Books” classified in Literature and Art (1,007 titles) are expected to have digitization complete by the end of June 2024.」

●オスロ大学
・「Japanese Studies and Digital Humanities」Naomi Yabe Magnussen
https://www.ub.uio.no/bibliotekene/dsc/digiforsk-bloggen/20231102_japanesestudies.html
 2023年9月ルーヴェンのEAJRSでのパネルの報告。

●Earthquake Children Image Archive
http://www.earthquakechildren.com/
・Japanese Studies Spotlight: Earthquake Children Image Archive: A Window into Disaster and Humanity
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Japanese-Studies-Spotlight-Earthquake-Children
「contains over 500 images that visually document children’s experiences of the 1923 Great Kantō Earthquake and daily life in 1920s Tokyo」
「I hope that it will inspire colleagues to also think about the tangible benefits associated with creating digital archives as companions to our research monographs and for use in research-led teaching.」

●その他
・「全文テキストデータを利用した近現代日本文学の研究」
https://current.ndl.go.jp/car/209889
・New Resources in Asian Studies

New Resources in Asian Studies


・From Scroll to Screen | Ohio State University  Libraries
https://library.osu.edu/news/from-scroll-to-screen

■日本資料
●プランゲ文庫
・「世界図書館紀行 プランゲ文庫「再訪」: プランゲ文庫の現在をさぐる」(国立国会図書館月報2023年12月)
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_13114174_po_geppo2312.pdf?contentNo=1
「1950年代まで対象期間を拡げた結果、1955年から1956年の日本の風景を捉えた写真とスライドを含む「ジョージ・P・デメロカス文書」を入手した」(これはプランゲでは初の新規受け入れ資料とのこと)
「ジェンキンスさんの目標は、プランゲ文庫が日本研究専攻以外の学生にも広く知られて利用されること」

「A Picture Is Worth A Thousand Words」
 プランゲ文庫の学生インターン・Karen Adjeiさんが、寄贈コレクションGeorge P. Demeroukas Papersを調査し、「A Picture is Worth a Thousand Words」という展示企画に仕上げた一連の活動について。
・「Japanese Studies Spotlight: A Picture Is Worth A Thousand Words: Connecting Through Canon in Post-Occupation Japan at the Prange Collection」
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Japanese-Studies-Spotlight-A-Picture-Is-Worth-A-Thousand-Words
・「An iSchool Student Reflects on her Field Study (Fall ’23) in the Prange Collection」

An iSchool Student Reflects on her Field Study (Fall ’23) in the Prange Collection


「my field study at the Prange Collection also helped me to crystalize my desired ethos and approach to curation through the lens of librarianship」

●The Tule Lake Japanese Language Library
・Japanese Studies Spotlight: Uncovering Interdisciplinary Histories: The Tule Lake Japanese Language Library & the Checkout Card Accessibility Project
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Japanese-Studies-Spotlight-Uncovering-Interdisciplinary-Histories
「Tule Lake collection a cross-representative repository of the systemic injustice of the wartime Japanese and Japanese American incarceration system.」
「Given the historical importance of these and other material culture traces, UCLA has begun a digitization project for preservation and increased accessibility of the Tule Lake Japanese Language Library.」

●その他
・Mysteries of the Madarajima monjo(斑島文書)
https://komonjo.princeton.edu/madarajima/
・京都大学図書館機構 – 【図書館機構】京都大学貴重資料デジタルアーカイブ: 京都大学とプリンストン大学の共同事業により、斑島文書14点を公開しました

【図書館機構】京都大学貴重資料デジタルアーカイブ: 京都大学とプリンストン大学の共同事業により、斑島文書14点を公開しました


「京都大学とプリンストン大学は、2020年3月、京都大学総合博物館が所蔵する古文書を世界に発信し、全世界において日本の歴史及び文化の知識及び意識を深められることを目的として、京都大学総合博物館が所蔵する古文書のデジタルイメージの公開及び当該古文書の研究を共同で行う事業を開始しています。」

・浮世絵にみる妊産婦と胎児の身体イメージ
「Maternal Health and Images of the Body in Japanese Ukiyo-e (浮世絵にみる妊産婦と胎児の身体イメージ)」展のオンライン・ミュージアムを公開しました|トピックス|国際日本文化研究センター
https://www.nichibun.ac.jp/ja/topics/announcements/2024/01/31/s001/
・「Maternal Health and Images of the Body in Japanese Ukiyo-e (浮世絵にみる妊産婦と胎児の身体イメージ)」展オンライン・ミュージアム
https://www.nichibun.ac.jp/online/ucsf_maternal_health/

■図書館等

●e-resource
・Ni, Dongyun; Ito, Michiko; Kim, Ellie; and Yang, Anlin (2024) “Lists of Selected Full-text Databases by Subscription in East Asian Studies,” Journal of East Asian Libraries: Vol. 2024: No. 178, Article 8.
https://scholarsarchive.byu.edu/jeal/vol2024/iss178/8
 2022-23年時で北米東アジア図書館で契約されているe-resource(全文)をリストアップしたもの。やはりどうしても日本が少ない。

●NDL送信サービス
・海外の図書館等向けデジタル化資料送信サービスで印刷(プリントアウト)ができるようになりました|国立国会図書館―National Diet Library
https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2024/240401_02.html

●コペンハーゲン図書館
消えた日本語の本と、それを追いかけた長い長い旅|さわぐり  
https://note.com/sawaguri_cph/n/n1ccfe24f1098
 コペンハーゲン中央図書館の日本語児童書の一連について。

●コロンビア大学日本法律図書館
・Nakashima, Yukino (2024) “From Vision to Legacy: Walter Gellhorn and the Establishment of The Toshiba Library for Japanese Legal Research,” Journal of East Asian Libraries: Vol. 2024: No. 178, Article 4.
https://scholarsarchive.byu.edu/jeal/vol2024/iss178/4
 コロンビア大学のJapanese Law Collectionについて、成立から近年の動向までをまとめたもの。

●その他
・国際交流基金 – JF海外拠点事業紹介  
https://www.jpf.go.jp/j/about/world/project/index.html
 国際交流基金の海外拠点(25か国・26拠点)による国際交流事業の最新情報を紹介するページ

■コミュニティ
・Featured member: Sharon Domier – CEAL: Council on East Asian Libraries  

Featured member: Sharon Domier


・Featured member: Ann Marie Davis – CEAL: Council on East Asian Libraries

Featured member: Ann Marie Davis


・News – NCC News – LibGuides at North American Coordinating Council on Japanese Library Resources
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Specialist-Spotlight-Junjiro-Nakatomi

■文学
●ああいう、交遊、EU文学 narrating eu:rope
https://eubungaku.jp/
「ああいう、交遊、EU文学」は駐日欧州連合(EU)代表部の主催で発足したプロジェクトで、EU加盟国の文芸シーンとその多様性を日本へ発信することを目指しています」

●村上春樹
・開催報告:国際シンポジウム「世界とつながる日本文学 ~after murakami~」 – 早稲田大学 文学学術院 国際日本学  https://www.waseda.jp/flas/gjs/news/4342
「読者にとって差異と相同性を同時に感じさせながら、一方で現実にはどこにもない文学の〈場所〉性が持つ意味などについて」

■エンタメ
・海外図書館に日本漫画をPR 文化庁が国別リスト作成 | 共同通信  
https://nordot.app/1108675856601252033
・『SHOGUN』で「正しい日本」を描けたのは、ベルギー人歴史家のおかげ | クーリエ・ジャポン  

『SHOGUN』で「正しい日本」を描けたのは、ベルギー人歴史家のおかげ | 気付かれなくても徹底した細部へのこだわり

■社会
・埼玉・川口市がクルド人めぐり国に異例の訴え なぜ?現場で何が? | NHK
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20240202a.html
・映画『ワタシタチハニンゲンダ』公式サイト  

トップページ


「外国人学校に対する官製ヘイト、 技能実習生、難民、入管の実態など 外国人差別の本質にせまる」
・「母国に帰れない」中国人研究者の複雑な心境 反スパイ法で「説明なく」拘束、日中の往来を阻害 |セレクト記事|京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1241474

■手前味噌篇
・「202309eu ベルギー日記その1 : EAJRS編」(egamiday3+)

202309eu ベルギー日記その1 : EAJRS編


 昨年9月EAJRSのメモ。近年の地域研究の変化について、地理的”地域”から観念としての”DEI”へ、オリエンタリズムののこる地域研究よりも、多様性や学際性を大事にする研究姿勢への移行、等。
・Specialist Spotlight: Toshinori Egami
https://guides.nccjapan.org/homepage/news/news/Specialist-Spotlight-Toshinori-Egami

202309eu ベルギー日記その2 : 旅情編

 ルーヴェンに行きつけのビアカフェと行きつけのベトナム料理屋と行きつけのスーパーができました。行きつけだった雑貨屋に今回は行けなかったのが残念。
 あと行きつけのチョコレート屋さん。チョコレートは正義(微妙な発言)。
 休暇旅では無いので、旅情のほとんどが飲食か移動かになる、というのはいつもどおりです。

●準備
・とある事情から参加可否の決まるの遅かったので、まともなルートの航空券取れるだろうかとビクビクしてた。しかも、コロナめ…のせいで、関空発着の便めっちゃ減ってるやん、と。結果、「成田で1泊」とか「パリで1泊」とか平気で言われる羽目になってしまい、私の頭の中の西村京太郎を総動員したところ、「京都-羽田を鉄路」「パリ-ブリュッセルを鉄路」「成田-京都を鉄路」という思わぬ鉄道旅情ルートが導き出される結果に。

●往路
・のぞみで京都→羽田。座ってていいだけならのぞみもはるかもあんま変わんないんじゃないかなと思いかけたものの、品川から空港に直結してないとあまり意味が無かった。
・4年ぶりに出国したら、出国スタンプが廃止されてることに驚愕した。言えばもらえるらしいんだけど、どうだろう、きっと近いうちにそれも無くなるのかしら。
・セキュリティ後に「おーいお茶濃いめ」という名のライフラインが売ってあるの、羽田最高だと思った。
・なんと、行きの機内wifiが故障中で使えないと、搭乗寸前で言われた。うっかりwifiある前提で、動画やkindle本のダウンロード等、何も準備してなかったことに気づいた。しかも深夜便設定で読書灯もはばかられるので、しょうがなくフランス語のドキュメンタリー番組を導眠剤に無理くり眠ってた。
・あと「TENET」を観てた、これはなかなか噛みごたえがあるな。
・ルートマップを見たら、ロシア上空を通らない2023年だった。うん、やっぱ不自然ルートなんだこれ。フライト時間も若干延びてる気がする。
・パリCDG着。パリ・・・ていうかヨーロッパ・・・何年ぶりだろう・・・(注:まだ空港施設)
・パリCDG空港からブリュッセル南駅までが、”航空券”でカバーされたルートなんだけど、実際に鉄道に乗り込むためのキップについては「パリ空港駅にある航空会社オフィスに来い」と指示されている。で、そのオフィスがどこにあるのかさっぱりわからなくて、駅構内を左右上下にさまよう、ベテランそうな改札スタッフに尋ねるも「そんなものは鉄道駅には無い」と言われ、そして何のことは無いその改札から10数メートルのところにあるやないか、と。ああ・・・海外にきたわ・・・。
・パリ空港駅発→ブリュッセル南駅行きのSNCF。90分程度なので、これこそ「はるか」並みである、欧州内は無理に飛行機トランジットじゃなくて良い。
・そして、チケットに「2」「エコノミー」と書いてあったので2等車のデッキにぼんやり座ってたら、検札の人に言われて「1等の2号車」であることが判明。約20年ぶりのwrong sheat再び。
・なお感染症拡大防止の観点から、しっかりとマスク着用している。機内はもちろん、空港から鉄道内あたりまではまだ”国際旅行者”然としているので、堂々と着用。または、人気のないところにぽつねんと居るようにしてる。
・4年ぶりのヨーロッパ大陸の車窓を観てると、やっぱ国土の広大さがぜんぜんちがうなと思い知らされる。そんなことばかり考えている。あと1等の快適さは段違い。
・なんかネット記事で「近年のブリュッセル南駅が急速に治安悪化」みたいな煽りがあって、そそくさとブリュッセル中央駅に移動しようとするも、この1駅移動のチケット購入があまりにもわからなくて最難関だったというトラップ。
・さらに、駅のコインロッカーシステムが輪をかけて、下手な素人が作った公務員試験のように複雑怪奇で、見事にトラップにかかり荷物がロックインされる。ちょうど、まったく同じ手順でさっき荷物ロックインされてギャーギャー騒いでたばかりのマダムグループに、この番号に電話したらええねんと教えられ、たどたどしい英語でスタッフに訴えてなんとか開けてもらったけど、ちょっと待って、この電話で大した本人認証もなく鍵開けられるんだったら荷物盗られ放題なのでは。
・というわけで、もう何度目かのブリュッセル着。後述。
・ルーヴェン着。9年ぶり4回目。

●宿所と暮らし
・宿は、駅前至便、古建築、キッチン付き、を確保。


・古都の古建築が本領を発揮している。まず、部屋は4階だが階段しかない。これ荷物とかみんなどうしてるんだろう、次来た時くらいはもう無理な気がする。
・チェックインは近所のカフェのレジ(なおそこが朝食場所)。1階はちがうビアカフェと同居。
・そして、とにかく暑い。ベルギーには珍しい9月の暑さ、南向きの4階ていうか屋上直下で日当たりが最高、夜でも熱がこもりまくり、そもそも夏に気温が上がらないはずの土地柄で、しかも古建築だから当然のごとくエアコン等ない。だから「家のつくりやうは夏を旨とすべし」と兼好も口酸っぱく言ってるというのに。唯一の救いが、最上階のため窓をひと晩中開放してられる、危なかった、これで2階3階とかだったら詰んでた。
・キッチンはもちろん、ランドリーが室内にあるのは、夏場としては非常にはかどって助かります。何回もまわしてた、とにかく暑いし。

●食
・食事のための買い物が重要なので、徒歩圏内のスーパー・コンビニの類をひととおり練り歩いてみるものの、閉店時間が良くて20時でまったくコンビニエンスでは無かった。
・あと、いろいろ見てまわるものの結局は、”サラダ”という名のマヨネーズ和え惣菜と、米料理と、この2大誘惑にはどうしても日本人は勝てないのだった。


・↑駅前の、一番よく行ったスーパー。
・今旅の獲得品は、インスタントのエスプレッソパウダー、スペキュロス味のスプレッド、モロッコ風シナモンミントティーバッグ。

・宿の朝食が、レベル高くてビビった(海外久しぶり補正はあたかもしれない)。
 まず、パンが美味い。焼きたてでほかほかでパリパリのでっかいのを、自分で切って取れる。そのパンが美味い。「パンの美味いは七難隠す」とはよく言ったものだ、自分がいま言ったんだけど。
 ほかには、スペキュロス味のスプレッドというベルギーのソウルフード。バジルのオリーブオイルは、追い野菜がはかどる。

・連れ立って行ったランチで、「サーモンのラザニア」を注文すると、「・・・え、そんなのメニューにあった?」と軽くざわっとする。
 「zalm」と書いてあったのがサーモンなんだけど、短い時間と少ないヒントで後悔しない注文ができるように、海外旅行時は、旅先の言語で肝となる食材がどう表現されるか、ある程度予習してます。牛(rund)豚(varken)鶏(kip)に加えて、魚はvisやZeevruchten、チーズはkaas、赤/白がrode/witteで、ガス入りがbruisend。しかもベルギーはオランダ語とフランス語の両方に目配せしとかなきゃなのでちょっとつらかった。で、こういうのに重宝するのが「指さし会話帳」なので、マーケットプレイスで多少高くてもこまめに買い集めてるという。
 なお味は、サーモンとチーズとトマトのラザニアという味。立地は、道に張り出したオープンテラス。会計は、個別に電子マネーで、あ、もはやそんなんあたりまえにできるのね。

・トラディショナルなディナー、@Troubadour



 前菜という位置づけだと思うんですが、お惣菜各種。タラのフライ。ビーフのコロッケ。豆腐みたいなモッツァレラチーズ。きのこソテーライス。やばい、どれも美味い、ひっかかるところが何もないからスルスル食べてしまう。
 チキンのワーテルゾーイ、これがフランドル地方の郷土料理とのこと。シチューや煮込み料理よりさらさらしてる(ワーテル=水)んだけど、野菜や香草類の刻んだのの風味がしっかりスープ化して濃いめのコクが出てるので、非常に吉。もともと川魚からつくってたらしく、いまも魚でつくるパターンもあるらしいけど、チキンであっても全然こっちのワーテルゾーイをいただきたいです。

・地元の先生にすすめられたランチどころ、アジア料理Ah Quy。
 アジアっぽい組み合わせランチのパターン、米と豚のおかげで、身体と精神が整う感じ。立地は、ミニ広場の青空テーブル席。
 なお、まさかの2日行った。でもぜんぜん2日来たかった。欧米の美味いカジュアルなアジア料理が一番美味い。

・もうひとつのトラディショナルと言えるディナー、@Mykene。ムール貝の専門店。
 立地は、開放的なガーデン、そういえば夏だけど虫とかぜんぜんいなくて快適だったなあ。



 これもおすすめされて連れ立って行ったら、広い店内にお仲間がまさかの3組ご来店で、さすがの名店だった。地ビールと3種のムール貝(プレーン、白ワイン、シェフのきまぐれ)。シンプルなやつも、ガーリックやスパイシーっぽいやつも、とにかく「うどん希望」と言いたくなるくらい、日本人だったら絶対好きなやつをご堪能してた。

ワインクーラー

ビール

・別のディナー、何故だかのスペイン料理。

 7994,7996
 タパスとパエリア、そりゃ美味かろう。
 立地は、他に人がいない半貸切状態。

・なお、自宅飯の例。

 こういうのは、旅の野菜不足を多少なりとも解消できるので吉。

・チョコレート、チョコレート、チョコレート!
 行きつけのノイハウスで、まずは(まずは、だろう)自分用を購入、これはお土産用アソートではなく自分用に生で詰め合わせたいんだけど、店頭にろくな解説も無く数十種類並ぶのを、瞬時に見定めたり、ちょいちょい店員さんに聞いたり、色艶で直感的に判断したりして、えいやっで指さしていく。「ジンジャー」とか聞くと、おっ、と反応して多めに買ったりしてる。結果、初回補正が無くってもやっぱり美味い。
・なお、数を配る目的で買ったチョコレートのセットは、中を開けてみると個包装ではなく熱さでてろてろに融け出していて、あきらめた。9月の旅行でチョコは鬼門だということ、申し送る。

●ビール
 さすがベルギーだけあって、ビールは独立項が設けられるに至る。


 ↑初日、宿所真下のカフェバー。至便ではある。

@7863
 ↑ふわっと行った店で、選びあぐねて、ヴェデットのIPAとヒューガルデンのロゼ。


 ↑スペイン料理の店にて、Orvalをいただく。
 ベルギーはグラスもビールのうち。(本郷もかねやすまでは江戸のうちのノリで。)

 あと、写真はないけど、10年前に訪れたアールヌーボーなビアカフェにも再訪した。そのころはまだビールもさほどには飲み込んでなかった人だったので、あのとき「美味っ」と驚愕したタップのGrimbergenも初回補正が入ってたんじゃないかな、と思いながらそろそろと再訪・再飲してみたら、初回補正並みの美味さだった。しかも、アールヌーボーさに囲まれてる環境がいいから、ずっと座ってたくなるよね。10年前にここで偶然会ったアメリカの日本研究の先生は、今回はいなかった(そりゃそうだろう)、あの人もGrimbergenが好きだって言ってたなあ。

 そして、何を差し置いてもですが、egamidayさんはここルーヴェンに行きつけのビアカフェができてしまいました。品揃えといい、居心地といい、100点だった。5泊中4回行ってた。
 名をMetafoor(メタファー)と言う、さすがの大学街ぽいネーミング。


 ↑初日。XXbitter、Taras Boulba、Wolf7(ローカル)、ゴーゼっぽいランビック等をいただく(だいぶのんだな)。
 なお、フードに関しては近所のテイクアウト屋あたりから持ち込み自由とのことで、メンバーがマスターに尋ねたら「持ち込み自由に決まってんだろ」となぜか怒られたらしい、そのくらい(?)居心地がいい。
 木造の感じと、奥が細かく入り組んでて人の出入りが鬱陶しくなくパーソナルスペースが作れやすい構造の感じ。
 なんせ、品揃え。
 あと、安定の寝落ち。
 次以降のヨーロッパ周遊は拠点ここにしませんか?


 ノンアルコールのエルディンガーのヴァイスビア。これ、暑い日中の休憩に最高なやつ。
 カフェなので、カフェ的なドリンクもちゃんといい(はず)。

●街歩き・ブリュッセル編
・電車の乗り換え待ち時間を利用して、昼食(フリッタ)がてら街に出る。という話。


・ちょうどいいけど、高低差な街、という話。
 まずもって、ブリュッセル中央駅がすごく微妙な傾斜的な場所に位置していて、到着してすぐ街全体の位置関係を把握しようとするのに、ちょっと混乱する。とりあえず道なりにふわっと歩こうとするのも、下りだったり上りだったりするので、なんか調子狂う。高低差リテラシー低い。
 しかも暑いので、正直かなりしんどい。バスに乗ろうとするけど、高低差と、道路工事の多さと、駅前特有の乗り場と路線の複雑さで、さっぱりわからず断念。結局歩くので、やっぱりしんどい、暑い。


・↑ギャルリ・サンデュベール、古えのアーケード街

・ベルギーと言えば、フランドル絵画は好きです。ブリューゲルが特に好きです。なんでかはしらんけど、庶民の日常的な感じというか、斜に構えたりおまぬけだったりあらぶきだったりするところとか、色とか輪郭のわかりやすさがストレスフルでないところとかかな。
 なんか”妖怪文化”をやたら日本特有っぽく云々されることあるけど、そんなことなくない?って思えるのが結構あると思う。



・↑ブリュッセルというとやたらグランプラスが取り沙汰されるけど、いいんだけど、そうでなくても、街を歩いていると忘れた頃に目に飛び込んでくるアールヌーボー感が良い。このへんのたてもの探訪を、いつかちゃんとゆっくりやらなあかん。

●街歩き・ルーヴェン編
 ルーヴェンこそ歩く暇などほぼなかったのですが。


@7872、7895
 謎朝市。


 オールドプレイス、現役で繁華なのはめでたい。


 シティホール、誰が呼んだか「石のレース」。




 エクスカーションで訪れた、聖ペテロ教会。


 知識の泉像。わかったわかった、愛してあげるから、という感じ。

●その他いろいろ
・とりあえず、天気予報見て厚着モードにしてきた自分を呪った。ふつーに夏だった。
・期間中、ほとんどツイートしてなかった。2-3日分まとめてあらすじメモするレベル。バタバタはしてましたよ。
・なぜかビアカフェで、謎のカードゲームイベントが発生。持ち札推理編はそこそこ得意だった。株取引編はちょっとよくわからん。

・為替レートのことは考えるな・・・。
・外貨預金している銀行のカードを持っていって、現地でユーロ現金をATMで引き出す(会費などどうしても現金多額めのやりとりが発生するため)、という目論見で乗り込んだところ、後日、なぜか円口座のほうから円換算して引かれてて、おいちょっと待て、と思った。だったらそんな預金口座いらんのだが。なお、デビット払いのほうはユーロ口座からユーロで引かれてる。

時差ボケについては、今回驚くほど軽く、過去に経験したことがないほどに軽症で済んだ。現地では夕方5時頃に猛烈に眠くなることを除けば、だいたい9時10時に寝入って3時過ぎに目が覚めるので、それって日本とたいして変わらないサイクルじゃないですかね。鬼門の帰国後(通常東向きがきつい)も、帰国日、翌日、翌々日と、筋肉痛よろしく時間差で来るか来るかと戦々恐々としていたところが、いつまでも時差ボケ発生せず皆無に近かった。
 その理由を自分なりにいろいろ考察してみたんだけど、「機内でいっさい飲酒しなかった」の他に心当たりがないという。それはそれで、なんかやだな。
・といいつつ、現地夕方5時頃に猛烈に眠くなることには変わりなくて、教会や市内観光スポットを練り歩くエクスカーションの際は、もうほぼ眠りながら歩いてました、眠り行者。
・そしてどっちにしろ、4日目くらいには人から指摘されるくらいの疲労顔にはなる。

●復路
・早朝、エアポート行き列車をルーヴェン駅で待ってる。奇しくも数日前、「空港に何時間前に行くか」が参加者内で話題となり、egamidayさんはお察しの通り早着派、列車遅延を考えれば欧州内便でも2時間は確保しておきたく、というわけで8時出発便のために5時半に駅におります。
・最終日にしてやっと、時刻表の読解力が上がる、ツーリストになぜか番線を聞いてくる学生をいなす、等の海外旅行カンを取り戻しつつある。もうちょっと帰りたくないので、列車の写真を撮って、「おい、日本さ行ぐんだで!」などとツイートしている。


・そして列車に乗り込んで発車を待っていると、学生らしき娘さんが「”エアポート”行きですよね?」とスマホを見せながら聞いてくるので、「うん、そうそう・・・」と言いかけたところが、スマホ画面に出ている旅程が「ルーヴェン発→アントワープ駅経由→スキポール空港行き」だったもんだから、えええ、となった。彼女の発語が「”エアポート”行き」なのか「”アントワープ”行き」なのかは、あたしのヘッポコリスニングではわかんないけど、でも、確かにこの列車はアントワープ方面行きだったので、セーフ。それにしても、そうか、直でスキポール行きというルートもあるにはあるし、手続きや乗り継ぎの時間を考えたらたいして変わんなかったり早かったりもするだろうし(註:ブリュッセル→スキポール間は離陸-着陸が25分も無かった)で、往路のパリ経由といい、ヨーロッパのこの距離感&ボーダーレス感がひさびさに心地よいのでした。そりゃあたしだって、そのルートで行けるもんなら行きたいあるよ・・・。

・というわけで、スキポール空港での成田行き便発までちょっと時間があったので、「スキポール・トランジット恒例企画 ライデン・リアルタイムアタック大会」を決行。ライデンと言えば我が心の根城、ていうか欧州旅行ではリアルに根城化してるので、そのライデンまで鉄道で行って帰ってくる弾丸往復でした。




 片道20分弱の、滞在20分弱。かわらず愛らしい街だけど、駅前がちょっと変わろうとしてた。いつも行く駅前のスーパー(JUMBO、ジャンボと思ってたらユンボと訓むらしい)でチョコ買っておしまい。



・4年ぶりのスキポールは変わりなかった。ノイハウスの専門店はなくなってた。
・成田着。暑すぎて、お土産のチョコレートが変質する事案が発生した。
 もう9月にチョコは買わない、決して。

●付けたり:歴博編
 成田着から京都へ一目散に帰ろうと思ってたら、その途上にある、あ、そういえばあたしここまだ行ったことないねん、という寄り道。


 とはいえ、旅の疲れをいち早く癒やしたいような時に、片手間に立ち寄って見られるレベルのボリュームではなかったので、いつかリベンジに来る、主に第4展示室。

 というわけで、おつかれちゃん。

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