「図書館情報資源論」を考えるシリーズ(1): いまの”生シラバス”

●前置き

 司書科目としての図書館情報資源論(概論・特論)について、しばらくちまちまと考えたりまとめたりする、シリーズ的なもの、の最初の記事です。

 というのも、某学(某社)で兼業非常勤的に「図書館情報資源概論」「図書館情報資源特論」の高座にあがらせていただくようになってもう10年以上経つのですが、当然毎回内容のあちこちを更新しつつあたってはいるものの、何年かに1回くらいは、そもそもこの科目は何のためにあるのか、何を学ぼうとしているのか、他の科目との兼ね合いによって、いや、というよりは図書館業界全体、この社会全体における知識・情報のあり方の中にあって、どういう位置づけにあるんだろう、どういうはたらきをするんだろう、というようなことをあらためて考え直してみて、そこをアップデートしていかないと、パワポの字面表面だけちょこちょこっといじって投影してみせるようなことを”アップデート”とは言わんだろう、と。
 もちろん、それはとっくに文部科学省由来で定義されているのでは、なのかもですが、それこそ10年どころかそろそろ20年目の影がしのびよりそうな頃合いで、いつまでもおとなしく文言通りに受けとってはいられないので、極私的にでもジタバタ考えてみる、という一隅の試みです。
 かといって、教科書を編もうなどという内容的な総ざらえというわけではなく、枠組みやラインナップのについてというくらいです。また、それを大上段に構えてウンウンうなって考えてみてもいたずらに時間がかかるだけだし、それよりは随論随筆的に、こまぎれに言葉にしてみて可視化していったほうが、まだマシなんじゃないか、という思いもあって、折にふれちまちまとシリーズにしてみるというメモ的なものです。なので、その時々で思いつきを書き記し、これといってゴールが決まってるわけでもなく、あてどない感じで。

 なお、こういうblog記事はそういえば過去にもたまに書いたりしてたので、以下、そのリスト。
・人はなぜ「図書館情報資源概論」を学ぶのか: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/458716536.html
・「図書と雑誌」とは何か #図書館情報資源概論: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/475056966.html
・「災害と図書館情報資源」のまとめ(途中)メモ #図書館情報資源概論: egamiday 3
http://egamiday3.seesaa.net/article/478208719.html

●現在の”生シラバス”的なもの

 というわけで、まずは現在地確認、という。
 いま自分が、どういう内容・構成の講義を実際にやってるのかという、建前じゃない”生”のシラバスのような感じで。(注:「建前」ってなんだ?)

 直近・2024年度上半期でおこなった「図書館情報資源概論」「特論」の内容を、再整理するかたちで挙げると、こうなります。

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(事務的なこと)
・オリエンテーション
 …受講要領等
 …図書館情報資源概論/特論という科目について

(総論的な講義)
・図書館情報資源とは何か
 …図書館情報資源の多様性
 …図書館情報資源の実例

(情報資源の類型・特質)
・図書・雑誌
・古典籍資料(和)
 …基礎知識
 …取り扱い・資料保存
・マイクロフィルム
 …基礎知識
 …取り扱い・資料保存
・灰色文献
・地域資料・地域情報
 …郷土資料
 …行政資料
 …コミュニティ資料
 …住民参加
・学術資料・学術情報
 …学術研究の概要
 …論文・図書
 …電子資料
・インターネット情報
 …特質・技術等
 …参加型集合知
 …高度情報化社会
・デジタルアーカイブ
 …特質・技術等
 …ポータル・利活用

(情報資源の管理・取り扱い)
・出版・流通
 …産業・流通事情
 …委託・再販
・蔵書構築
 …収書の自由
 …収書方針・選書基準
 …実務
・蔵書管理
 …実務・技術等
 …書架・書庫
 …資料保存

(情報資源にまつわる理念と実際、その環境)
・図書館による資料提供の意義
・図書館協力と資源共有
 …相互利用・資源共有
 …NII・NDL
 …MLA連携
・著作権とオープン
 …著作権法
 …PDM・CC
 …オープンアクセス、オープンデータ、オープンサイエンス

(応用的な講義)
・災害と図書館情報資源
・冷泉家蔵書
・学校資料
・国立国会図書館のデジタル事業
・ユーザとアウトリーチ
・本棚の中のニッポン

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 文部科学省由来の定義が年月経ってるとはいえ、骨格がさほどかわるわけではないと思うので、その定義をふまえて自分なりに建てている2本柱が、「情報資源の類型・特質」と「情報資源の管理・取り扱い」です。ただこのメイン柱だけを断片的に認識したところで、図書館・知識情報・社会全体のあり方とどう接続するのかがわかってないと、その柱を活用できないと思うので、自分なりに「情報資源にまつわる理念と実際、その環境」という3本目の柱の必要性を感じ、限られた時間数の中にねじ込んでます。
 なお、このリストは内容的な分類上でまとめなおしたもので、実際の講義はこの順番でやるわけでも、この構成のままでやるわけでもなく、そこそこミックスしてます。たとえば著作権の話はデジタルアーカイブとセットで考えたほうが、著作権に前向きに取り組むことができる(注:それがどういうことかはよくわかりませんが)と思うのでそうしてますし、オープン云々の話は学術情報や地域情報やインターネット情報なんかに随所に散らばしてる感じ。

 応用的な講義も、いくつかは「概論」で取り上げる余裕がほしいのですが、おおむね「特論」の限られた受講者だけに伝えられるかどうか、という感じです。それでもせめて「災害と図書館情報資源」だけは概論でも伝えたく、なんとか半期15回の中で懸命に時間をつくって取り上げてきてたのですが、ドゥなウィークという謎の時間削減により、昨年は落ちてしまいました。今年はなんとか復活させたい。

 今宵はここまでにしとうございます。