202409eu ブルガリア日記その2 : EAJRS編
2024年9月にEAJRS2024年次大会@ソフィア・ブルガリア、参加メモです。
EAJRSとは。
European Association of Japanese Resource Specialistsの略で、日本名は「日本資料専門家欧州協会」。ヨーロッパ各地の日本関係図書館の司書および日本研究者が集まるグループで、こうやって年1回どこぞに集まっては、日本に関する資料や研究や図書館やについて発表し合ったりする、というものです。今回は28本の発表、現地参加は75人、オンライン参加は35人という規模。
2024年の開催地は、ブルガリアの首都・ソフィアにあるソフィア大学でした。
ここでの開催は過去2019年に一度あり、5年ぶり2度目です。ちなみにegamidayさんは前回は参加せずです。
会場は↓こんな感じ。
●各発表編
今回はブース(後述)設置場所が大会会場とまあまあ離れていたため、各発表を拝聴する機会があまりなく、また会場の都合からディスプレイが遠くて見えないところが多く、ということで、メモはほとんどありません。残念。
そのかわり、デジタルエイジには見逃し配信があります、というわけで詳細は下記をご参照ください。
https://www.eajrs.net/2024-sofia
各発表者のアブストラクトから、当日資料およびYoutube動画がリンクされています。
いい時代になったものです、感謝。
極私的に気にしてたのは、以下のあたりです。
「図書館におけるアルファベット至上主義の現状と展望」
「New sources of cataloguing data: the cases of British Library Language of Cataloguing Taskforce and Nihon Shoshi Sakusei Benkyôkai」
「日本の地域民具資料の課題と情報公開・共有の取り組み」
●ミニパネル企画
ここ数年司会を務めているミニパネル企画。
今回のテーマは「図書館員スキル再考。オープンサイエンスへ向けて」として、日欧様々な立場の方にお話いただき、フロアにもご意見求めるなどしていろいろやってみましたが、いつも通り時間がさっぱり足りずということになってしまいました。
EAJRSにおいてはこういう企画が他に類ないので、好評はいただけるのですが、そろそろ内容の具体性というか、論点をしぼるというか、フロアからの意見収集の仕組みをつくるくらいのことは、考えないとなという反省は一応あるのです。
ていうか、登壇者側にまわれる日がいつかくるのだろうか……。
当日の動画は下記から。
●ブース出展&プレゼンテーション
毎年、所属機関の広報とフィードバックの拠点として、ブース出展をおこなっています。今年はそれにくわえて、各機関・団体15分程度のプレゼンテーションができるセッションというのが設けられていて、そちらも実施してきました。
・今年はブースのエリアが、大会会場からもコーヒースペースからも遠く離れていたため、大会参加者で立ち寄ってもらえる人があまり多くなく、残念。
・そのかわりといってはあれですが、大会と関係ないふつうの学生さんや研究者やいろんな人が通る”公道”的な場所であったため、ふらっと立ち寄って来られたり、なんかえらく興味を持たれたり、といういい感じの人情触れあいブースっぽい感じになることが、たまにあったりして。
・簡易的な資料展示のかわりにならないかと目論んで、「化物尽絵巻」(https://da.nichibun.ac.jp/item/003762507)をうちとこの巨大ロールプリンタで不織布に印刷して、横につなげてなんちゃって巻物にしたやつ、これを持っていってテーブル上でひろげてたのですが、かなりの好評を得たのです。妖怪に興味があるという人はもちろん、なんだこの奇妙な絵はと、なんだこのコミカルなモンスターはと、物尽系なので次から次へといろんな絵面が登場する、これは純粋にコンテンツに助けられたパターン。あと、不織布で遠慮無く触ってもらえるやつなので、自分で手に取って操作できることの楽しさ。これを、たとえば”公道”的なブースエリアをたまたま通りかかったブルガリアのご婦人から「どうやったらこれを買えるのか」と請われたり、他館さんから「そのロールプリンタでうちの絵巻を印刷してほしい」と請われたりと、こんなところにニーズがあったりするのだなあ、という感じ。日本からの機関参加勢に絵巻が囲まれる、という一幕もあったりした。
・プレゼンテーションの時間では、当機関に与えられた時間のうち、前半を同行者がパワポで用意したプレゼン、そのあとegamidayさんが補足をする、という予定でした。が、そもそも”補足”って何をしたらいいんだろう??と思いながら、他機関・他団体さんのプレゼンをずっと眺めていたのですが、なんとなく用意済みの情報ばかりが提示されてるような気がして、なるほどいまこの場に(ここにいるオーディエンスに)足りないのは、新鮮でリアルタイムな情報交換ではないだろうか、と思い至り、とはいえさすがに対話的なプレゼンは用意してないし会場の構造上無理だろうなので、対話の代替として、”いまさっきまでブースの現場でどんな話をしていたのか”を紹介する、「こんな人から反応がありました」「このフライヤーや展示物が人気です」「この質問が意外に多いです」みたいな情報を提示することで、擬似的な対話になるし興味もひけるのでは、と思ってやってみたのでしたが、実際の効果までは不明。
・毎年思うことながら、数年にわたって参加し何度かブースに来場しているはずの常連な参加者でも、こちらの説明に「聞いたことなかった」と新鮮な反応を示す方もいて、同様(とこちらが勝手に思ってるような)内容であっても繰り返し広報する用意をしておくのは大事だなと。
●ローマ字ミーティング
日本語書誌および多言語書誌のローマ字に関する、イギリスと日本とでの有志ミーティング、というものもありました。ローマナイズというのは古くから取り沙汰されてきた課題であり、なおかつ今でもなかなか解決しないという難題なのですが、自分の中でもこの回だけで整理しきれるような話では全然ないので、また別の機会に考えてまとめます。
●図書館見学
図書館見学は3班にわかれており、国立図書館とかミュージアムの班も興味深くはあったのですが、やはりここは堅実にという感じで「ソフィア大学図書館巡りツアー」を選択したところ、参加人員5人という絶妙なグループ構成を得ました。
ツアーガイドをしてくれた学生さんが、英語堪能で、発声が非常によく、説明が明解、という有能極まりない方だったので博士課程くらいの院生さんかなと思ってたら、あとで学部3年生と聞いて驚愕したものでした。ちなみにおすすめのブルガリア田舎は、バンスコとコヴァチェヴィツァとのこと。
↑日文研への里心が出てしまいそうになる円形図書館。
↑日本関係資料として提示された多様な参考図書。ロシア語を通して日本語を学んだ時代、等。
↑ケンペル日本誌などが提示される部屋。
↑ぐるぐるとまわるうちに、高いところに案内してもらう。
山に囲まれた土地柄なんだなということが、あらためてわかる感じになってる。
↑最新かつ働きやすそうさ満点のコンサベーションラボに案内していただく。
いろんな写真とか実物とか拝見するんだけど、この紙食い虫はなに? 食いカスとかあんま見たことない形? みたいになってる。
●その他
・なんせいろんな人に会えてうれしかった、という話。
オンラインでは何度もあってるのに、対面では初めての人。
対面ではコロナ禍ぶりの人。
毎年ヨーロッパでだけ会う日本の人。
日本人よりよっぽどよく会うアメリカやヨーロッパの人。
なんだかんだで10年ぶりくらい会ってすっごい話がもりあがった人。
ヨーロッパのニューフェイスな人。
今年は会えなかった人。
などなどです。
・昨年(2023年)の日欧DHクロストーク(https://sites.google.com/view/ejdhxtalk20231107)を視聴してくださった方からのフィードバックも得たりしました。聞くと、このイベントをきっかけに登壇者とつながり、問題意識を共有して、今大会での発表に至ったとおっしゃるので、やってよかったのだなあとしみじみする。
・その日欧DHクロストークにしろ、EAJRS大会にしろ、参加者の分野・職種・立場が多様に混在していて、細分化されてないこと。それぞれの関係がフラットであること。トピックの多くが、資料やツールや手法の話で、自己完結してないところ。そういうところに、他の学会や業務研修とはひと味ちがう効用があるんだ、というのを再認識したのでした。
思い起こせば、egamidayさん最初の参加が2024年。
もう20年になるのですね。
お世話になってばかりなので、いつかは恩返しがしたい。
2025年9月はハイデルベルクの予定のようです。