今年読めばスゴかった”はず”の”積ん読”本 3選・2024
年末になると「今年読んだ本」系の記事があちこちから視界に入ってくるようになり、そのたびに、ああ今年もまたぜんぜん読めなかった、あれも読みたかったこれも読むべきだったと、そもそも生来から本を読むのが遅い(参:脳内で音読する界隈の住人)せいもあって、陰鬱な気持ちとtoReadリストの負債が澱のように積もる日々なわけですが、さりとて、これこそが完全な読書術であると開き直ることもできないし、なぜ働いていると読めないかというよりなぜ9連休に働いているか問題すら解消されそうにない、そんな誓文払いの年の瀬に、ふと、「紹介するほど本が読めなかったなら、読まなかった本を紹介すればいいじゃない」というアントワネット的パラダイムシフト(おもいつき)を得まして、こんなにも絶対に読みたいし読むべき3冊を厳選して紹介したろうという、読んでいない本について堂々と語る2024年のまとめ記事その1、です。
そんなの書いてる暇があったら読めよ、とは自分でも思いますが、あれです、アウトプットあってのインプットじゃないですか、という謎の言い訳含みで。
注:「完全な読書術」「働いていると読めない」「堂々と語る」←どれも未読/積ん読中
●その1
ジャン=イヴ・モリエ著,松永りえ訳. 『ブックセラーの歴史 : 知識と発見を伝える出版・書店・流通の2000年』. 原書房, 2022.
http://www.harashobo.co.jp/book/b599197.html
いや、こんなん絶対読みたいし早よ読めって感じで、図書館・メディア史系、かつ、文化・文明史系、どちらのカテゴリもあたし的には大好物なのでじっくり読みたいところなのですが、未読・積ん読中です。本を内容ではなく環境や人々の営みからとらえるのも(のほうが)好きだし、時代史より通史が好きなものですから、近世・近代に加えて現代までさらってくれてるみたいだし、あとフランス中心に書いてるということらしいけども、あの頃(どの頃?)の書籍流通はヨーロッパ内で横断的なはずなので、経済や流通の視点で追うのは地理的にも時代的にも(だからどの時代?)おもろいだろうし、などと徹頭徹尾、憶測でだけ語ってますが、読後の満足感はかなり高いはず、はずです。鹿島茂氏も「経済が絡むだけ、本の歴史よりも生臭く、面白い。」とおっしゃってます、帯で。
しかも装丁がまた良いんですよ、表紙の絵の、露店で本を選んでる人々の姿なんか愛しくてたまんないし、白地に黒と赤の文字のコントラストが、シンプルなのに目をひくから、机の横に置いてあるとそれだけでも口角がゆるむ感じになっちゃうのです。
で、それだけ言っててなぜまだ読んでないかというと、あたしが本を読めるのは圧倒的に通勤中なのですが、カバン内に常備しておくにはちょっとゴツめかなっていう。ハードカバーでちょっと重さもあるので、朝の出掛けにはどうしてもペーパーバック装を先にピックアップしてしまう、本件の積ん読理由はたぶんそこです、そうじゃなかったらもっと早めに読んでたのでは。買うのが遅かったのも、Kindleで出てくれないかなとしばらく待って見たところその気配もなくで。(振り返れば、今年読んだ本の多くはペーパーバックかKindleだった…)
ですが、まあなんせメディア史はいくらでも読みたいので、2025年のファーストバイトはこれにする予定です。
●その2
正田智樹. 『フードスケープ : 図解食がつくる建築と風景』. 学芸出版社, 2023.
地理的風土や建築系も好きなカテゴリで、結局我々は土地と物理的な環境から逃れられないし完全にあらがうこともできなくて、それを乗りこなそうとしたりやり過ごそうとしたりする人々の営みがまたキュンとしたりするので、建築だけでなくまちづくり・都市工学の話が好きだったり、旅行や路地歩きにいそしんだりするわけなんですが、本書は、日本や世界のいろんな土地のいろんな風土の中にあっての、いろんな建築・構造物や仕組み・システムやデザインを、豊富な写真と解説図版とで紹介するという、ほらもう好きなパターンのやつじゃん、ていう。しかも、それを本屋を素材にしたのが『本のある空間採集』なんだと思うんですが、本書はフード、食という、これまた大好物なカテゴリでやってくださってるので、絶対好きなやつじゃないですか、ていう。
で、写真がきれいだし、図解の図版もたくさん載ってるし、一方で文章は少なめのビジュアル要素の多い本で、小分けの章ごとにいろんな土地の話があるパターンのやつなので、没入して読み込むというよりは、自宅でお酒でも呑みながらちびちび眺めるように読みたいよな、と思って、机の横にずっと待機させて置いてあるのですが、うん、結局、お酒呑んだらコテンと眠っちゃうので、なかなかページを開くに至らない、ていうダメな理由で未読です。
でもこれは、いつでも好きなときに眺めてニヨニヨしたらいいタイプの本だと思うので、引き続きそうします。
●その3
奈倉有里. 『ことばの白地図を歩く : 翻訳と魔法のあいだ』. 創元社, 2023.
https://sogensha2022.kir.jp/productlist/detail?id=4665
ほかにも好きなカテゴリに「時間もの」があって、そのパズル的な要素も好きですがそれだけでなく、幼少の砌からタイムボカンシリーズの類が好きだったのは、そこで起こる「異文化同士の遭遇」のおもしろさ、だったんだよな、といまにして思います。時間的にも空間的にも文化的にも、知見や情報に差があるもの同士が出会ったときの、ていう。なのでそれが、言語や文学に関わってくると、ことば・文学カテゴリ好きでもある自分にしては旨さの二乗になってくるわけで、今年読めたほうのベストテン第1位『日本の小説の翻訳にまつわる特異な問題』、帯の「谷崎、川端、三島の、何が英語にならないのか」なんて最高じゃないですか。
じゃあなんで、これ未読なんだろう、小ぶりでカバンに入れっぱなしでもいいくらいなのに、ていう感じなのですが、たぶん先に翻訳ものの本ひとつ読んでるので、同じカテゴリのはしばらく時間置いてから、というのと、ティーンものっぽくてサクッと読めそうなので、暑くてしんどい時期要員、かな。
●番外編
佐藤翔. 『図書館を学問する : なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか』. 青弓社, 2024.
https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787200884/
年の瀬の駆け込みランクイン。
業界注目の佐藤さんの本が年末に出るというので、情報が出るや否や早速に予約し、つい先日我が家の宅配ボックスに届いた、待望の一冊。喜び勇んでページを開くと。
………字が小さくて、つらい。orz
老眼・近眼両用眼鏡を装着してはいるものの、もはや最近は、文字の小ささが理由で読むのをあきらめる、という本が年々増えてきており、リアル本はリアル書店でいったん紙面を確認してから買う、という行動様式が定着しつつあるわけですが、本書、表紙の絵が非常にいいので物理的には持っておいて、読む用にはKindleにします(リフロー型でありますように…)。
なお、今年読めた方の良かった本は、ざっくり以下の通りです。
『日本の小説の翻訳にまつわる特異な問題 : 文化の架橋者たちがみた「あいだ」』
『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』
『祇園祭細見』(改訂版)
『文学のエコロジー』
『本屋巡りの旅はじめてみました』(増補改訂版)
『モンテレッジォ : 小さな村の旅する本屋の物語』
来年も負債はどんどん増えていくでしょうが、あれです、本は読めないものだから心配してないです。(←これはざっと読んだ)