今日の「CA読み」メモ: AIリテラシー、OAバトル、オスロのデジタル研究センター 他

●CA2051 – オンライン資料収集制度(eデポ)の10年のあゆみとこれから / 原 聡子
https://current.ndl.go.jp/ca2051

 寄席必須教材。

「当初は納入が低調であったため、2013年から2016年にかけて、学協会や一部の民間企業がウェブサイトに掲載しているオンライン資料の洗出し及び納入の依頼を行い、学協会の機関誌や会報・通信、民間企業の事業報告書や株主通信、技報等を多く収集した」
「メタデータ作成において、毎日のように前例のない事態に直面している」

●CA2052 – AI時代のアルゴリズム・データリテラシー教育の必要性 / 坂本 旬
https://current.ndl.go.jp/ca2052

 AI問題の何が問題かが、よくわかる、とてもよくわかる、解説。

「アルゴリズム・データリテラシーとは、コンピュータの動作の仕方やアルゴリズムがAIに作用する方法を理解することであるとした上で、AIは学習データに依存し、常に正しいとは限らず、バイアスが生じるといった倫理的問題を含んでいることを理解すること」
「「データの処理は、特定の社会的・文化的前提に基づくカテゴリーや規範に依存」しているため、「データフィケーションは政治的な意味合いを持っている」…つまり、企業や政府はデータフィケーションを権力行使のためのツールとして活用することができる」
「情報リテラシーもアルゴリズム・データリテラシーもともにメディア情報リテラシーやデジタル・シティズンシップの一部である」「発信者や受信者の社会的文脈を意識することである。とりわけ社会的文脈において周縁化されがちなマイノリティの立場を理解し、AIのアルゴリズムのバイアスが社会にどのような影響をもたらすのか考えること」

●CA2053 – 初年次生のためのリーディング学習から見えてくる、大学図書館による学習支援の可能性 / 杉谷祐美子
https://current.ndl.go.jp/ca2053

「現在の学生の学習環境に合わせて、特定の科目だけでなく大学4年間にわたってリーディングのアウトプットを蓄積できる効率的・効果的な方法の開発を大学図書館に期待したい。」

●CA2055 – 動向レビュー:即時オープンアクセスを巡る動向:グリーンOAを通じた即時OAと権利保持戦略を中心に / 船守美穂
https://current.ndl.go.jp/ca2055

 OAバトルがよくわかる解説。

「即時OA政策は、欧州の研究助成機関の有志団体であるcOAlition Sが2018年9月に「プランS」という名称でコンセプトを打ち出し…G7の科学技術大臣コミュニケに即時OAの方針を盛り込み、同様に、この方針を推進する」
「日本の政府案では「2025年度より新たに公募する競争的研究費を受給する者(法人を含む。)に対し、論文及び根拠データの学術雑誌への掲載後、即時に機関リポジトリ等へ掲載を義務づける」という強い表現がされており」
プランSでは、中小規模の学術出版についての現状調査も行い、これらが極めて多様であること、多くの場合極めて脆弱な体制のもとに運営されていること、論文の出版基準なども十分ではないことを見いだし…中小規模の学術出版の底上げを図ろうとしている
「学術雑誌の設定するエンバーゴ期間を乗り越える手段として、「権利保持戦略」を編み出した。権利保持戦略とは、論文著者が、自身の論文の利用条件を、出版社への「著作権譲渡より前」に指定(prior license)することにより、自身も含めて、論文を自由に公開、再利用等をできる権利を保持」「研究助成番号**により、研究助成を全部又は一部得ています。このため、論文著者はOAを目的として、本論文投稿により派生する全ての著者最終稿に対し、CC BYライセンスを付与しました」「陰で多くの嫌がらせが、論文を投稿する研究者に対してなされるようになった」
「教員が研究助成の条件と出版社との出版契約の条項との間で板挟みとなり、学術出版における著作権譲渡の考え方に対して問題意識が芽生えた」
「「二次出版権」を法律に規定し、…出版社への著作権譲渡等が行われていたとしても、公的助成を得た研究成果については、論文著者が自身の論文を公的リポジトリ等においてOAで登録できる権利
そもそも、慣用的に行われている出版社への著作権譲渡がおかしい

●CA2056 – 「ユネスコ公共図書館宣言2022」:2022年版に至る歩みとその活用 / 永田治樹
https://current.ndl.go.jp/ca2056

 これは単に「理念の看板」扱いして終わるんじゃなくて、もっと議論されるべき、という意味での大事な踏み台のような記事。

「「IFLA-UNESCO 公共図書館宣言 2022」は(1994年版と比べ)…「持続可能な開発」と「知識社会における図書館」という新たな観点の追加が行われている」「これに加え2022年版で際立つのは…社会的包摂の重要性の強調である」
「わが国においては、宣言が…図書館情報学のテキストブックには引用されてきた。しかし、図書館現場でのアドボカシー活動はさほど定着しているとはいえず、一層の努力と果敢な活動戦略が望まれる」

●CA2057 – 公共図書館と大学の連携事例の一考察 / 渡部幹雄
https://current.ndl.go.jp/ca2057

 タイトルが「公共図書館と大学」であるにせよ、大学図書館の立場は?という気がする。
 事例もあまり言及されてない。理論的考察的な文章が多く大切なことを言っていることには違いないけど。
 ラストの参考文献一覧に番号を付与して、本文中の該当箇所に指示しておくだけでも、まだだいぶちがったと思う。

●CA2059 – オスロ大学図書館のデジタルサービス / マグヌスセン矢部直美
https://current.ndl.go.jp/ca2059

 書いていただきました、ありがとうございます。

「オスロ大学のDigital Scholarship Centre(DSC)」
「拠点としてDSCを冠した一室を人文社会学図書館内に設けたが、活動は同館内だけに留まらない。学内外のデジタル手法を支援し広げる様々な活動ネットワークに繋がっており」「大学全体からそれぞれのスキルを持った研究者や学生も特定の訓練を受けてインストラクターになって参加」
「図書館内外の特別コレクションのデジタル化を支援する」「これは写真や手記資料などのアーカイブ資料や貴重古書、3Dの博物館資料のデジタル化データなどの登録を可能とするデジタル化することが望まれているがその適切なデータ保管場所がない場合に提供されるもので、スキャナーから直接Alvinに接続できるワーキングスペースを同館内に用意し、データの登録や利用指導、援助を行っている」
学術デジタル手法支援に関わることは、従来情報リテラシーに関わってきた図書館の役目とみることは自然