今日の「本読み」メモ:『デジタル時代の図書館とアウト・オブ・コマースをめぐる著作権法制』
鈴木康平. 『デジタル時代の図書館とアウト・オブ・コマースをめぐる著作権法制 : 日本法における「絶版等資料」の再検討』. 勁草書房, 2024.
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784326404384
ざっと読んだ抜き書きとメモ。
●20世紀のブラックホール問題
「1950年代以降、オンラインで入手できる資料は激減しており、20世紀のブラックホール問題がある」「20世紀のコレクションの複雑な著作権状況がデジタル化の取り組みを妨げているという文化遺産機関からの報告を多数」
●NDL図書館送信サービスの海外参加館問題
「海外からの参加館は、2023年10月時点でわずか9館となっている。参加館が増えない要因として、①「ユーザーが遊法行為をしないよう監視できる態勢を整えられない」」「②「申請に必要な提出書類の多さと複雑さ」」「③「複写サービスを提供できない」」
「外国の施設を対象とする図書館向け送信サービスは、受信地国の公楽を主に利用者として想定しており、当該施設が所在する国の著作権法が適用されると考えられることから、当該国の著作権法で複製が認められるのであれば、本来は複写サービスを提供することは可能なはずである。したがって、利用契約書で一律に複製を禁止する必要は必ずしもなく、弁護士資格を有する者の署名が求められる書類において、当該国で複製が認められるか否かの判断も合わせて行えばよいのではないか」
「このような著作物の国境を越えた流通に係る問題は、本来は各図書館で判断するような問題ではなく、国家間の協定などにより共通ルールを定めて対応すべき」
●現在の解釈・運用でいいのか問題、の種々
「「入手することが困難」を絶版等資料の核とする従来の理解から、「著作物の流通に権利者のコントロールが及び、かつ、権利者が利益還元を受けることが可能な状況」である、「通常の商業流通経路」での利用可能性を、絶版等資料の解釈の核として理解すべきである」
「商業戦略上の理由で一時的に絶版等資料に該当する場合には、無償での自由利用を認めてしまうと、権利者の不利益となる可能性がある。そこで、一時的放棄に対応するためには、権利者の不利益を考慮した何らかの措置を検討する必要がある。また、何らかの措置を講じることで、現在はストリーミングとプリントアウトに限定されている利用態様をダウンロードまで可能とすることや、関係者協議会の合意で限定されている適用対象となる資料の範囲を広げることに対する関係者の合意も得やすくなり、利用者の利便性を上げることができると考えられる」
「「拡大集中許諾+権利制限」方式の課題として、集中管理団体にライセンスを強制することができるか、という課題がある。そもそも、アウト・オブ・コマース著作物に係る制度が必要とされる背景にある「20世紀のブラックホール問題」において、何らかの措置を講じなければならないと問題視されている著作物は、「デジタル化やオンライン利用をするための権利処理が困難な著作物」である。そうすると、集中管理団体がライセンスを許諾しない、あるいは法外なライセンス料を要するなどして、デジタル化やオンライン利用ができない著作物が存在する場合、20世紀のブラックホール問題は解決できないことになる」
「日本は、音楽分野や映像実演分野を除いて集中管理率が低いと言われている」「少なくとも現在の集中管理の状況では、「拡大集中時諾+権利制限」方式の採用は難しい」
→結果、著者はCDLモデル(Controlled Digital Lending)を推す、とのこと。
●ちなみにうちとこでは…
「日本では、絶版等資料に係る制度の運用主体はNDLに限定されている。
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<e>極私的にもっとも驚いたのはこの部分で、え、マジですか、だったらうちとこがほぼ毎日のように議論・運用している「著作権法第31条1の3」は何なんだろうなんですけど…