今日の「CA読み」メモ・大蔵ざらえ: フードアクセス、受刑者一人あたり10冊、大学図書館は研究者の併走者 他

・E2589 – 高齢者等の見守りも行う国東市「グリーンバッグサービス」
https://current.ndl.go.jp/e2589
「本の宅配以外に何か出来ることは無いだろうかと国東市広報アドバイザーに相談し協議した結果、利用者宅を訪問する際に見守り活動ができるのでは…利用者宅へ訪問した際、生活の状態や様子をチェックする簡単なリストを新たに作成し、何か不安や異変があれば関係各課と連携する」

・E2590 – 宮古島市総合博物館「博物館浴でリラックスしよう!」
https://current.ndl.go.jp/e2590
「個人鑑賞後…博物館浴のリラックス効果がうかがえる」
「展示解説とグループ鑑賞後…「鑑賞対象や時間が固定されていて自由に鑑賞できない」、「各展示室でのパネルの文字数の違いによる読み飽き」、「90分以上の滞在時間からの疲れ」」

・E2600 – デジタルアーカイブ情報交換会in五所川原<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2600
「NDLへのデジタルデータの寄贈要件や寄贈データの作り方などについて相談した結果、NDLへ新聞デジタルデータを寄贈し、国立国会図書館デジタルコレクション(以下「デジコレ」)に収録」

・E2602 – 図書館とFood Justice:北米の都市図書館協議会による報告書
https://current.ndl.go.jp/e2602
「フードアクセスをめぐる問題は、経済的理由から郊外のスーパーで買い物をすることが困難な低所得層に不利で、かつ米国では人種間の格差とも重なる」
「米国の公共図書館の15%はフードデザートに位置しており、コミュニティの食料安全保障におけるニーズは高い」

・E2605 – デジタル社会と子どもの読書に関するシンポジウム<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2605
「紙やデジタルでの読書について大人が持っている先入観にとらわれず、子どもの声を重視した取り組みが重要である」

・E2606 – 国立アートリサーチセンター設立とその情報資源部門の取組
https://current.ndl.go.jp/e2606
「『日本アーティスト事典』(仮称)構想」
「海外でリサーチに携わる人にとって、日本のアートに関するレファレンスツールが十分に提供されているとは言い難い。なかでもアーティストについての情報は重要だが、日本の人名事典は欧米水準のそれと異なり、あくまで人物に関する解説本文が中心で、調査を進める手がかりとなるような参考文献等の情報を欠いていることが多い」「そこでNCARが取り組むことにしたのが日本のアーティストに関する総合事典の作成である」

・E2607 – 受刑者への図書館サービスに関するガイドライン(第4版)
https://current.ndl.go.jp/e2607
「収蔵数の目安として、書籍は受刑者等一人あたり10冊程度」

・E2611 – 2023年東アジア研究に関する国際会議<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2611
 今年3月ボストンでの諸会議の報告ということで、「Tools of the Trade : The Way Forward」「CEAL年次大会」「NCC公開会議」の3本を、ざっとさらう感じで。
 「上海図書館の発表では、ChatGPTや音声合成技術等を駆使して作成されたLiu Wei副館長の動画が上映され、会場には驚きのざわめきが広がった。」

・E2621 – 小規模OA出版社の持続のためのガバナンス:COPIMの取組から
https://current.ndl.go.jp/e2621
「OAを標榜して始められた革新的な取組が、大手の商業出版社に取り込まれ理念が換骨奪胎されていくのを私たちはこれまでいくつも見てきている。本来自由であるはずの出版を多様なまま維持するためには、安定的な収支モデルや技術開発だけでなく、ガバナンスの地道な整備も重要である」

・E2625 – 定有堂書店「読む会」の展開:街の読書運動の可能性<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2625
「学校を出て以降は、自ら学ぼうとしなければ学ぶことはできない。今までの自分から少し背伸びをすることが大人の自己教育であり、「読む会」は共同的な自己教育の場である」

・E2628 – 米国の州立公文書館が電子メール保存に向けて「準備」中
https://current.ndl.go.jp/e2628
「ガバナンスの面からすると、膨大な量の電子メールの保存を実行可能なものとするには、国立公文書記録管理局(NARA)で導入された「キャップストーン」(Capstone)アプローチにならい、メッセージの内容ではなく、役職にもとづき保存対象のアカウントを選定する方針が望ましいと整理されている」
「翻って、日本の行政文書については「電子メールの選別及び手順に関するマニュアル」等で内容にもとづく選別方針が示されており、米国の方向性とは異なる。これは官僚制のあり方や公文書制度の位置づけの違いを反映しているのかもしれない」

・E2635 – 読書のまち・愛荘町でMLAの未来を考える<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2635
「愛荘町でも、2022年度に教育委員会が小学生対象の地域読本を作成し、電子媒体でのみ発行した。しかし、制作を委託した企業との契約上、利用対象が町内の小学生と教員に限定され、愛荘町の地域資料であるにも関わらず町立図書館の利用者が利用できない事例があった。」

・E2638 – データ駆動型人文学の推進に向けたラウンドテーブル<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2638
「学習・教育の場だけでなく、研究の場を研究者と大学図書館とでどのように作っていくかが鍵になる。大学図書館は研究者の支援者ではなく併走者であって欲しい」

・E2640 – 湘南工科大学附属高等学校の新図書館「HABITAT」への想い
https://current.ndl.go.jp/e2640
「2020年からは、生徒の代表である図書館大使を中心とし、「他にはない魅力的な図書館」を創ることを目指し、計4年間にわたる議論を重ねた」

・E2642 – 世界に羽ばたくKブック:韓国政府による作家・出版社への支援
https://current.ndl.go.jp/e2642
「生産拠点を支えることは出版業界全体を持続可能な産業にするという考えのもと、中小出版社、電子出版産業、地域書店への支援を重視する」
「文章で自己表現したいと考えるMZ世代(ミレニアル世代とZ世代の総称)のために、誰でも容易に本を出版できる出版体制を目指す」
「韓国内外の図書交流イベントや出版ビジネス関係者向けの輸出相談会をとおして、海外読者層の獲得を図り、Kブックの輸出を推し進める
潜在的な市場を抱える南米や中東など17か国を戦略地域と定め、各地域に合わせた翻訳・出版支援をする」
「新人作家が安心して作品制作に取り組める公正な創作環境を確保する」「公正な契約を結べるように分野別標準契約書を設定する」

・E2648 – 第19回電子情報保存に関する国際会議(iPRES 2023)<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2648
「アナログ資料と比べた場合のデジタル資料固有の「価値」は何かという論点をめぐって、過去の類似の議論ではデジタル資料の経済的な価値やコストをベースとした検討に傾きがちであったことを指摘し、より広い見地からの考察が必要である」

・E2650 – ユネスコによる教育・研究における生成AI利用ガイダンス
https://current.ndl.go.jp/e2650
「人間の主体性の保護という点で、生成AIを採用する際の考慮事項として、学習者の学びに対する動機づけの保護や、研究者・教育者・学習者による生成AIへのフィードバックの活用」

・E2652 – ロービジョンケアと読書バリアフリー<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2652
「ロービジョンケアに関わる職種は医療に限らない。イベントの参加者からも「関係がないと思っていた職種にも接点があることに気付いた」という声があった」

・E2653 – 高知こどもの図書館のあゆみ
https://current.ndl.go.jp/e2653
「こどもが図書館に通える環境を残したい、と考えた市民の活動によって、高知県が場所を提供しサポートする官民協働の図書館として、当館が設立された。この私設公共図書館の運営費は、当館の趣旨に賛同する会員からの会費や寄付を中心とした自主財源でまかなっており、自立性の高い運営を行っている」
「こどもの本を必要としている誰にでも情報を届けられる場としての「行けなくても訪ねられる図書館」」
「本との出会いを楽しむきっかけとして、見る度に発見や楽しさがあるような、本の紹介コンテンツの発信」

・E2654 – 米国化学会によるエンバーゴなしのグリーンOAをめぐる動向
https://current.ndl.go.jp/e2654
「ほとんどの編集・査読作業は学術関係者が無償で行っていること、また出版にかかる様々なコストは既存の購読料で賄われていることを考えると、この追加料金は出版料の「二重取り」であり、正当性に根拠がないと指摘」

・E2655 – 「「デジタルアーカイブ活動」のためのガイドライン」の思想
https://current.ndl.go.jp/e2655
「それは「デジタルアーカイブ」という言葉で示すものが、単にデータベースそのものやそれを構築している主体のみならず、より多様なものとして捉えなければならないというものである。その考え方を明確に示すべく、ガイドライン全体を貫く考え方を示す用語として、「デジタルアーカイブ活動」を用いることにした。これにより、ガイドライン全体がアーカイブ機関による構築や連携を超えた、「個人の日常の活動」までをその対象とすることを目指した」

・E2659 – 第32回京都図書館大会<報告>
https://current.ndl.go.jp/e2659
 電子書籍、必死でやんないと、無理かと。

今日の「CA読み」メモ: AIリテラシー、OAバトル、オスロのデジタル研究センター 他

●CA2051 – オンライン資料収集制度(eデポ)の10年のあゆみとこれから / 原 聡子
https://current.ndl.go.jp/ca2051

 寄席必須教材。

「当初は納入が低調であったため、2013年から2016年にかけて、学協会や一部の民間企業がウェブサイトに掲載しているオンライン資料の洗出し及び納入の依頼を行い、学協会の機関誌や会報・通信、民間企業の事業報告書や株主通信、技報等を多く収集した」
「メタデータ作成において、毎日のように前例のない事態に直面している」

●CA2052 – AI時代のアルゴリズム・データリテラシー教育の必要性 / 坂本 旬
https://current.ndl.go.jp/ca2052

 AI問題の何が問題かが、よくわかる、とてもよくわかる、解説。

「アルゴリズム・データリテラシーとは、コンピュータの動作の仕方やアルゴリズムがAIに作用する方法を理解することであるとした上で、AIは学習データに依存し、常に正しいとは限らず、バイアスが生じるといった倫理的問題を含んでいることを理解すること」
「「データの処理は、特定の社会的・文化的前提に基づくカテゴリーや規範に依存」しているため、「データフィケーションは政治的な意味合いを持っている」…つまり、企業や政府はデータフィケーションを権力行使のためのツールとして活用することができる」
「情報リテラシーもアルゴリズム・データリテラシーもともにメディア情報リテラシーやデジタル・シティズンシップの一部である」「発信者や受信者の社会的文脈を意識することである。とりわけ社会的文脈において周縁化されがちなマイノリティの立場を理解し、AIのアルゴリズムのバイアスが社会にどのような影響をもたらすのか考えること」

●CA2053 – 初年次生のためのリーディング学習から見えてくる、大学図書館による学習支援の可能性 / 杉谷祐美子
https://current.ndl.go.jp/ca2053

「現在の学生の学習環境に合わせて、特定の科目だけでなく大学4年間にわたってリーディングのアウトプットを蓄積できる効率的・効果的な方法の開発を大学図書館に期待したい。」

●CA2055 – 動向レビュー:即時オープンアクセスを巡る動向:グリーンOAを通じた即時OAと権利保持戦略を中心に / 船守美穂
https://current.ndl.go.jp/ca2055

 OAバトルがよくわかる解説。

「即時OA政策は、欧州の研究助成機関の有志団体であるcOAlition Sが2018年9月に「プランS」という名称でコンセプトを打ち出し…G7の科学技術大臣コミュニケに即時OAの方針を盛り込み、同様に、この方針を推進する」
「日本の政府案では「2025年度より新たに公募する競争的研究費を受給する者(法人を含む。)に対し、論文及び根拠データの学術雑誌への掲載後、即時に機関リポジトリ等へ掲載を義務づける」という強い表現がされており」
プランSでは、中小規模の学術出版についての現状調査も行い、これらが極めて多様であること、多くの場合極めて脆弱な体制のもとに運営されていること、論文の出版基準なども十分ではないことを見いだし…中小規模の学術出版の底上げを図ろうとしている
「学術雑誌の設定するエンバーゴ期間を乗り越える手段として、「権利保持戦略」を編み出した。権利保持戦略とは、論文著者が、自身の論文の利用条件を、出版社への「著作権譲渡より前」に指定(prior license)することにより、自身も含めて、論文を自由に公開、再利用等をできる権利を保持」「研究助成番号**により、研究助成を全部又は一部得ています。このため、論文著者はOAを目的として、本論文投稿により派生する全ての著者最終稿に対し、CC BYライセンスを付与しました」「陰で多くの嫌がらせが、論文を投稿する研究者に対してなされるようになった」
「教員が研究助成の条件と出版社との出版契約の条項との間で板挟みとなり、学術出版における著作権譲渡の考え方に対して問題意識が芽生えた」
「「二次出版権」を法律に規定し、…出版社への著作権譲渡等が行われていたとしても、公的助成を得た研究成果については、論文著者が自身の論文を公的リポジトリ等においてOAで登録できる権利
そもそも、慣用的に行われている出版社への著作権譲渡がおかしい

●CA2056 – 「ユネスコ公共図書館宣言2022」:2022年版に至る歩みとその活用 / 永田治樹
https://current.ndl.go.jp/ca2056

 これは単に「理念の看板」扱いして終わるんじゃなくて、もっと議論されるべき、という意味での大事な踏み台のような記事。

「「IFLA-UNESCO 公共図書館宣言 2022」は(1994年版と比べ)…「持続可能な開発」と「知識社会における図書館」という新たな観点の追加が行われている」「これに加え2022年版で際立つのは…社会的包摂の重要性の強調である」
「わが国においては、宣言が…図書館情報学のテキストブックには引用されてきた。しかし、図書館現場でのアドボカシー活動はさほど定着しているとはいえず、一層の努力と果敢な活動戦略が望まれる」

●CA2057 – 公共図書館と大学の連携事例の一考察 / 渡部幹雄
https://current.ndl.go.jp/ca2057

 タイトルが「公共図書館と大学」であるにせよ、大学図書館の立場は?という気がする。
 事例もあまり言及されてない。理論的考察的な文章が多く大切なことを言っていることには違いないけど。
 ラストの参考文献一覧に番号を付与して、本文中の該当箇所に指示しておくだけでも、まだだいぶちがったと思う。

●CA2059 – オスロ大学図書館のデジタルサービス / マグヌスセン矢部直美
https://current.ndl.go.jp/ca2059

 書いていただきました、ありがとうございます。

「オスロ大学のDigital Scholarship Centre(DSC)」
「拠点としてDSCを冠した一室を人文社会学図書館内に設けたが、活動は同館内だけに留まらない。学内外のデジタル手法を支援し広げる様々な活動ネットワークに繋がっており」「大学全体からそれぞれのスキルを持った研究者や学生も特定の訓練を受けてインストラクターになって参加」
「図書館内外の特別コレクションのデジタル化を支援する」「これは写真や手記資料などのアーカイブ資料や貴重古書、3Dの博物館資料のデジタル化データなどの登録を可能とするデジタル化することが望まれているがその適切なデータ保管場所がない場合に提供されるもので、スキャナーから直接Alvinに接続できるワーキングスペースを同館内に用意し、データの登録や利用指導、援助を行っている」
学術デジタル手法支援に関わることは、従来情報リテラシーに関わってきた図書館の役目とみることは自然