和田敦彦『「大東亜」の読書編成 : 思想戦と日本語書物の流通』(#egamidayの貸棚書店)

 和田敦彦. 『「大東亜」の読書編成 : 思想戦と日本語書物の流通』. ひつじ書房, 2022.
 https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1129-8.htm

 “読書”の顔をしてやってくる者が、実際は何者なのか。

 本というメディアの魅力は、国境や時代をこえてひろがり、その言葉が読者に届く、というところにあります。ただ、その作用はプラスなだけということもないわけです。
 太平洋戦争・「大東亜」の頃に、日本国民への文化統制と、国外への喧伝・文化工作がどのようにおこなわれていったのか。それを、”読書””蔵書”そして”文学”から読み解こうとするのが本書です。著者は、同じく蔵書の構成や流通から北米における日本のひろがりを『書物の日米関係』で描いた、早稲田大学の和田敦彦さんで、今回はその焦点を大東亜の頃の日本と東南アジアに移しています。
 たとえば当時創刊された「東亜文化圏」という雑誌が、東南アジアへ文化工作を実践しようとしとしたその企図、経緯、そして結論のようなもの。あるいはベトナムとインドネシアにのこされた日本語の蔵書と、その構成の差から垣間見える目論見の違い。そして講談は何を喧伝するのか、南京大虐殺事件を描いた小説はなぜ届かなかったのか、等。9章の様々なトピックがかわるがわる提示されて、全体で壮大な大河のようになってるので、テンポ良く読めるうえに読み応えがある、という感じです。

参照:
《書評》和田敦彦著『「大東亜」の読書編成:思想戦と日本語書物の流通』 https://www.jstage.jst.go.jp/article/toshokankai/74/5/74_285/_article/-char/ja/

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